先日ユメのテラー化を治療した際、奇妙な出来事を
観測したので記録に残していこうと思う。
小鳥遊ホシノとその付き人である黒服が共同開発
した薬を服用したユメは恐怖に汚染されていた
神秘が戻りようやく色彩の呪縛から解放された。
その事には安堵したものの現場に立ち会ったホシノ
曰く『ユメのヘイローは黄色』との事。だが私の
眼には桃色にしか見えていないのだ。これは一体
どういう事なのか? それについてはユメ自身が
『貴方の望んだ姿を見せている』と言っていた。
つまり私に見えているユメの姿は私が望んだ姿を
反映させたもの、らしい。どういう原理でそんな
不可解な事を成し遂げたのかは分からないが
『愛の力』という事で納得した。……正確には
納得せざるを得なかった。それ以外で理由になる
要素が何一つないのだから。当然愛で覚醒出来る
のならば歴代のゲマトリア達が覚醒を果たせずに
いたというケースも考えられる。それにあながち
愛が条件というのは間違ってはいないと考える事
も可能なのだ。そう、ヒナの存在だ。彼女もまた
マダムへの愛に応えるように覚醒を果たしている。
彼女は間違いなくマダムと相思相愛であるが故に
土壇場で奇跡を起こした。今となっては必然で
あるとも考えられるが……
そこで仮説を考えてみた。もし親愛度という目に
見えない数値があると仮定してそれが一定値を
超えた後に特定の条件を満たすと覚醒する。
ヒナはマダムの行いが正しいと証明する為に。
ユメは何故覚醒したのかは分からないが……何か
きっかけのようなものがあったのだろう。何故
私がこのような仮説を考察したのかには一つの理由
がある。小鳥遊ホシノという存在だ。彼女は黒服
というロリコンから愛を受けて学生生活を過ごして
きた。そして婚約している。もし親愛度だけが条件
だとするならば彼女も覚醒していないとおかしい。
なのでホシノが覚醒する条件も考察……しても良い
のだが今はユメの事を話すべきだと思うのでそれは
黒服に丸投げする。大方ホシノと出会う前の過去
等と向き合えば覚醒するだろう。
……色々ややこしくなってきたのでここまでの話を
まとめよう。ユメは愛の力で覚醒し私だけの神に
なり私の崇高を満たす無垢な笑顔を見せてくれた。
控えめに言って最高という事だ。
さて、次の問題だが覚醒の維持時間についてだ。
まだヒナしか前例がない為彼女が力を発揮した際の
活動時間を参照する。過去に3回程観測をした結果
覚醒した状態でいられるのは3〜4分だけである。
その後は全身に力が入らないのかその場に倒れ込み
その度にマダムが襲っていた。弱ったヒナは可愛く
襲い甲斐があると謎の自論を言っていたが……
それを踏まえてユメの覚醒の維持時間なのだが……
朝に覚醒を果たしてから今も継続している。つまり
10数時間もの間覚醒を維持しているのだ。これに
ついては本人曰く「姿だけを変えているので力を
出している訳ではないんです」との事。それでも
何故自由に、しかも特定の人物だけにのみ姿を
変えて見せる事が出来るのかは不明だ。恐らく
私だけの神になっているのと色彩の眷属であった
影響なのかもしれない。この辺りは日常生活の中
で観測していこうと……この言い方はやめよう。
何処の夫が妻に対して観測なんて単語を使う?
言い方は後で考えるとして覚醒についてはまだ
未知数な部分が多くそう簡単に解明出来るもの
ではないので気長に研究を続ける他ない。
そして今わたしの視界にはユメが
『YES♡』と書かれた枕を抱えて私を待っている
ので記録する事を終了しようと思う。これから
何を行うのかは察して欲しい。
「以上が昨日の夜に会議の資料として作成した
調査レポートの内容だ。何か質問はあるか?」
「質問ですか。では『YES♡』枕の後にナニを
したのかを具体的に問うても……」
「黒服は何か質問はあるか?」
「そうですね……貴方の唱えた説が正しいと仮定
すればホシノが覚醒していない理由にも繋がり
ますので……その手段を模索しようと考えて
いますが特に質問がある訳ではないです」
「分かった。では私からは以上となる」
「お待ちなさい。ナニについてまだ聞いてません。
具体的に何が良かったのかを話しなさい!」
「誰が言うか馬鹿かマダム」
「いいんですか? 私にそのような態度をとって。
今からトリニティとミレニアムを私の手駒にして
ゲヘナに転入させてもいいんですよ?」
「やめておけ。戦争を起こすつもりか?」
「……まだ会議の途中なのですが。何故貴方達は
毎回言い争うのです? もっと冷静に話し合いを
行うべきで……」
『先生、通知がきたよ♪』
「おっと失礼。誰かから連絡が来たようです」
「なんだ今の通知音。ホシノに何をさせてるんだ」
「これは勝手に設定されていたんです。私が頼んだ
訳ではありません」
「では何故変えない」
「通知が鳴る度にホシノの声が聞こえるなら変える
理由がありませんよね」
「流石黒服。倫理観が終わってるロリ婚ですが愛は
本物のようですね」
「元々ゲマトリアに倫理観はないが」
「そうですねマエストロ。貴方は誰にでも欲情する
常識もない下半身と脳が繋がっている変態ですし」
「なんだと?」
「おやおや。この二人から連絡が来るとは……
ってまた言い争いですか? 醜いのでやめなさい」
「そうだな」
「そうですね」
「そんな簡単に怒りが収まるなら何故争いを始める
のですか」
「ノリだな」
「ノリですね」
「仲良くなりすぎでは?」
「それよりも誰からの連絡なんです? はよいえ」
「……連絡してきた相手についてですが一人は、
いえ二人とも私達の同志です。そしてどちらも
『助けて』と連絡してきました」
「ほう」
「はぁ」
「あの、もしかしてですが……」
「そういえばゲマトリアって四人でしたし」
「本来のシャーレの先生の事も忘れていたな。
私の生徒に手を出したクソ野郎だ」
「イオリとチナツにセクハラした大罪人です」
「ではシャーレの先生は助けなくても」
「それとこれとは話が違いますよ」
「一応あんな人間でも誰かの支えにはなるからな」
「………」
黒服は時々こんな事を考える。何だこいつらと。
明日からまた新章に入ります。
序盤の方をリメイクしようかなと考えているんですが結構な量があるのと面倒なのと評価されたい訳ではないのでいいやって投げました。テラーちゃんみたいに前だけを向いて行こうって言い訳をしつつ続きを書いています。
それと今後の展開において重要なアンケートを置いておきますので良ければ投票していただけると助かります