工場を調べて分かった事。それはプリンに関する
資料しかないという事実だった。材料の配分、
味の種類、糖度のバランス等々……ごく普通の
一般家庭にあるような料理本と額縁に入った変な
肖像画が複数枚も飾られていた。子供が書いた
ような字で『プリン大臣:同志ゴルコンダ』と
『肯定大臣:デカルコマニー』という賞状も何故か
大々的に飾られている。
「狂気ですね」
「プリン大臣って何……?」
「肯定大臣も理解出来ません」
やはりSAN値チェックをしておくべきだったと謎の
後悔をしつつ何か違和感を覚えた。そう、純粋無垢
な歩く地雷のアリスが何処にも居ない。……少し
嫌な予感がする……
「あ、アリスは地下に行きましたよ」
「何故止めなかったのですか」
「下に居るのはサンドバッグなので」
「という事はゴルコンダが? しかし彼と接触
させるのは様子を見てからの方が……もし本当に
先程戦った生物を彼が生み出しているのなら危険
ですからね。まだ教師ではない悪い大人ですし」
「でもそんな人がこんな表彰されるかな」
……確かに。
「プリン職人の方を見つけました!」
「おお……あれが幼児体型の癖に目覚めた黒服
ですか。いえ、構いません。この悪夢から私を
救出してくださるのならば」
「そういうこった!」
「………」
地下からスッと現れた同志はアリスに余計な事を
吹き込まれていた。純粋無垢な爆弾は健在である。
この感じだとホシノが言うように問題はない……
のだろうか?
「一先ず何が起きたのかを話して貰いましょうか」
「分かりました。始まりから話すべきですね」
ーーあれは同志達が生徒と接する事で崇高を
満たそうとする行為を模倣するようにこの学園に
接触しようとした事が全ての始まりでした。何故
レッドウィンターを選択したか、ですが……当時
学園のトップに居た低身長の少女が飾っている
偽りの絵画。それを存在しない概念として利用し
己の崇高を満たそうとしたのです。事前に調べた
プリンという土産を持って彼女の元に訪問し、
機嫌を取りつつ絵画について質問を……する前に
突如謎のクーデターが発生し彼女は一般生徒に
階級が下がりました。付け髭も外れ年相応の反応
しか出来ない彼女に対し仕方なく手を貸して再度
トップの座に就かせられた……と思えば絵画の件
を問おうとする度にまたクーデターが……何故
こんなにも頻繁に革命を行おうとするのか?
私は問題を起こした彼女達一人一人に問いかけて
確認をしたのです。すると皆口を揃えて
「プリンが不味すぎるから」と言うのだ。
たかがプリン如きと考えましたよ。ですが実際に
配給されているプリンの成分を確認した所中身の
50%が水で薄められていたのです。これでは
プリン風味の水を固めたもの以外の何物でもない
欠陥品でしかないのです。なので私が普通の
調理法でプリンを用意したらその噂が瞬く間に
学園中を巡り気がつけば私は表彰されました。
デカルコマニーも「そういうこった!」相槌を
うって生徒達の自己肯定感を高める働きを讃え
られたのか表彰されました。そして遂には
『同志ゴルコンダとデカルコマニー率いる
レッドウィンター連邦学園』に改名すらしてます
来る日も来る日もプリンを作り革命を宥めて多忙
な日々を過ごしていましたよ。途中からこちらの
意思とは関係なしに操られていましたが……彼女
達には常識が通用しません。理論を説明しても
屁理屈や強引にねじ伏せる……恐ろしいですよ。
ここまでが今までの振り返りです。今度は何故
私が地下に閉じこもっていたのかについて話を
しようと思います。理由としては外で何か危険
な生物が居るのでそれを掃討する際に万が一
同志を巻き込んでしまったら大変なので地下に
建設した牢獄に入れておく、との事です。
……はい、言いたい事は分かります。何故牢屋に
匿う必要があるのかですよね? それに関しては
私が聞きたいですーー
「以上が私が今地下に監禁されるまでの大まかな
流れでございます」
「突っ込み所しかありませんが……とりあえず
苦労していたのですね」
「そういうこった!」
「やはり私は生徒達と接するべきではなかったの
かもしれませんね……崇高を満たすどころか
プリン職人を余儀なくされてしまうなんて……
同志と慕われるのは悪い気分ではありませんが
それ以外で問題が多すぎます。挙句一時期洗脳
された事もありますのでいち早くこの場所から
立ち去ろうと思いました。この常識の通用しない
恐ろしい学園から……」
「……それには同情します。ですが一つだけ訂正
させて頂きたい事があります」
「何でしょうか」
「私は幼児体型が癖になった訳ではありません」
「貴方が連れている生徒は三人とも幼児体型ですが
どのように否定をするおつもりでしょうか?」
「まずですね、アリスとケイの二人は私の娘、即ち
年相応の体型なのです。幼児体型ではありません。
そしてホシノに関しましては……」
「………」
「……私の妻なので気にしないでいただきたい」
「成程。幼児体型が好みなのではなくただの
ロリコンなのですか」
「そういうこった!」
「……参考までにゴルコンダのお気に入りの生徒に
ついて聞きましょうか?」
「出版部の……ああ、写真を持ち歩いています」
「………」
お気に入りの生徒が居る時点で貴方もロリコンの
名前入りですよ。