例えばこんなゲマトリア   作:スカイブルーホワイトヘアー

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ホシノ奪還編#3

 

 

理事「大事なもの?まさかそこに居る戦闘能力しか価値のない女の事を言ってる訳じゃないよな」

 

黒服「左様でございます。貴方には理解できない彼女の魅力を私は知っていますので」

 

理事「口の聞き方には気をつけるんだな。大事な女がどうなってもいいのか?」

 

黒服「そちらこそあまり早まらない方がいい。これ以上その子に傷を付けられてしまったら貴方の命を保証しかねます」

 

理事「単純な脅しは通用しないか。それならばこうするとしよう。黒い服のお前は知っているかもしれないが、アビドスの学校に借金を課しているのはカイザーコーポレーションであり管理をしているのは俺だ。これが何を意味しているか分かるか?いきなり額を跳ね上げたっていいんだぞ?」

 

黒服「ほう?ならば言い値で払いましょう。その場合はアビドス高等学校とその生徒達の安全は保証してもらいますが」

 

理事「……話を聞いていたのか?何十億なんてレベルじゃないぞ?お前が想像しているよりも遥かに……」

 

黒服「言い値で払うといいましたよね?何故言いだした貴方が困惑しているのです」

 

理事「狂っているのか?そんな事をしてお前に何のメリットがある?たかが数人の生徒とちっぽけな学校の為に何故そこまで肩入れをする?」

 

黒服「それが先生というもの…らしいですので。私自身の考えとしては学校や生徒がどうなろうとあまり気にはしません。……ですが」

 

ホシノ「……?」

 

黒服「あの子には…ホシノには私の全てを賭けてもいい価値がある。それだけの話です」

 

ホシノ「??!!」

 

ヒナ「……ふうん」

 

ノノミ「黒服先生、大事なお話を遮って申し訳ないのですが……そういう言葉は2人きりの時に伝えた方が宜しいかと」

 

黒服「何の話ですか?私はただ思っている事を伝えたまでで…」

 

理事「……どうやら何を言っても引かないようだな。だがホシノを人質にしている以上こちらが有利である事は変わらんぞ。お前達がそこから一歩でも踏み出したら頭を撃ち抜くからな」

 

黒服「この状況でしたらそうするのが妥当でしょうね。懸命な判断です。ただ一つ忠告するとするのであれば……こちらに気を向けすぎでは?」

 

理事「何を言って………何だこの爆発は!?」

 

理事室の窓ガラスが轟音と共に割れる。窓側にいた兵士達は理事を庇って傷を負い被害がない者達もいきなりの爆発に驚いている。

それと同時にホシノの頭に銃を突きつけていた兵士が倒れ込んだ。

 

ーーー黒服達が理事室に突入して数分前に遡る

 

アヤネ「突撃部隊から連絡が来ました。ホシノ先輩の周辺にいる兵士は2名。そのうち1人が先輩に銃を突きつけているようです。座標軸は……」

 

アル「把握してるわ。その光景はずっと視界に入っているもの。……もう撃っていいかしら?」

 

アヤネ「アルさん、気持ちは痛いほどわかりますが落ち着いてください。この作戦で一番重要なのは私達なんですよ」

 

アル「……そうね。つい冷静さを欠いてしまっていたわ。……もう大丈夫、話を続けて」

 

アヤネ「分かりました。……送られてきた内部の敵部隊の数と配置を見るにヘリに内蔵されているミサイルで窓ガラスを爆発させてその混乱に紛れてホシノ先輩を救出……という流れが一番成功率が高いと思われます」

 

アル「窓ガラスを全部!?……貴女達ってかなりのアウトローよね……」

 

アヤネ「アルさんには爆煙で視界が悪い中ホシノ先輩を拘束している兵士2人を撃ち抜いて欲しいのですが……」

 

アル「それはまた随分と難易度が高いわね。けれど任されたからには絶対に成功させるわ」

 

アヤネ「では始めます。ミサイル射出まで3……2……」

 

アル「………」

 

瞼を閉じて集中する。ターゲットまでの距離は200M。コンディションは充分。ゆっくりと目を開けて弾を2発装填しているライフルを構える。

 

アヤネ「1……0!ミサイル発射!」

 

数え終わるのと同時に射出されたミサイルが理事室の窓ガラスに直撃して爆煙が広がっている。その中に向かって2発の弾丸を放った。

 

アヤネ「アルさん…結果は…?」

 

アル「決まってるじゃない。……命中よ」

 

爆煙が晴れて視界に映るは救援されて安全になったであろう友人の姿。それを見たアルは心の中でこう呟いた。依頼完了、と

 

ーーーそして現在に戻る

 

黒服「御二方、ナイスタイミングですよ。……お待たせして申し訳ありません。今拘束を解きますからね」

 

ホシノ「うん……先生、来てくれてありがとう」

 

黒服「当然の事をしただけですよ。……所で何故目線を合わせてくれないのですか?何か気になる事でも?」

 

ホシノ「な、何でもないよぉ…」

 

黒服「そうですか。……はい、これで拘束は解けましたよ」

 

ホシノ「これで自由になれたよ……あれ…」

 

黒服「身体の具合から見るに衰弱していますね。学校に戻ったら休息を取って貰いますよ」

 

ホシノ「そうする……」

 

黒服「……そちらの方も片付いたようですね」

 

ヒナ「ええ。とはいえほとんどあの子達がやったけど」

 

セリカ「数が少なきゃただの雑魚ね」

 

ノノミ「さらに油断もしていましたのでとても楽でしたね」

 

シロコ「ん、あとはこいつだけ」

 

理事「お、おい!その手を離せ!貴様らの借金を数倍に上げたっていいんだぞ!」

 

黒服「言い忘れていましたが実はこの部屋に入った時からの会話を録音していたんですよ」

 

理事「それがどうした!いいからこの白いのに手を離すように…」

 

黒服「どうやら理解していないようなので説明して差し上げましょう。この録音には貴方が女子高生を誘拐して監禁した事、借金を利用して脅し行為をしたなどの会社全体のイメージ損失に繋がるものが記録されています。もしこれが世に出回ってしまったら果たして貴方は今の地位のままで居られるのでしょうか?」

 

理事「なっ…脅すなんて汚いぞ!」

 

黒服「その台詞は是非数分前の自分にでも伝えてあげてください。……そういう訳なので社会的制裁だけで勘弁してあげますよ。……「私」はね」

 

理事「?どういう事だ?」

 

セリカ「あんたには随分と世話になったからね。お礼がしたくてたまらないのよ」

 

ノノミ「私もです⭐︎」

 

ヒナ「100発位で勘弁してあげる」

 

シロコ「ん、集団リンチ」

 

理事「お前ら!いい加減にしないと本当に…」

 

セリカ「うるさいのよ!」バキッ!

 

黒服「死なない程度にお願いしますね」

 

シロコ「ん、任せて。塩梅は分かってる」

 

アヤネ「ホシノ先輩、迎えに…って何してるんですか!?」

 

アル「……やっぱりアビドスってアウトローよね」

 

黒服「私とホシノは先にヘリに乗り込みますね。貴女達も満足したら乗ってください」

 

シロコ「分かった。ついでにそこの脱税金庫も……」

 

黒服「だから窃盗はやめなさい」

 

ホシノ「いつも通りすぎて安心するなぁ……アルちゃんも来てくれてありがとね」

 

アル「え、ええ!当然じゃない!友達なんだから!」

 

ホシノ「……嬉しいねぇ」

 

ヒナ「……ホシノの初めての友達は私」

 

黒服「おや、戻ってきたのですね。他の子達は……」

 

ノノミ「黒服先生〜理事さんが『おこづかい』としてさっきの脱税金庫をくれました⭐︎」

 

セリカ「何が入ってるかは分からないけど贈り物なら貰っておいて損はないわね!」

 

シロコ「ん、パパ活だね」

 

黒服「親父狩りの間違いでは?ですが貰い物なら何も言いません。……全員乗り込んだようですし学校に戻りましょう」

 

アヤネ「了解です。発進します」

 

セリカ「……あのビーム撃ってるやつはどうするのよ?」

 

黒服「ああ。あれは端末から数km離れたらまた地面に潜るので気にしなくて大丈夫ですよ」

 

ノノミ「便利なものですね。……ところでホシノ先輩は?」

 

黒服「ここで寝ています。このまま休ませておきましょう」

 

肩に寄りかかって寝ているホシノ。その光景を笑顔で見てくるノノミと何かを悟ったように頷いているヒナ。……また面倒な事になりそうだ。

 

ーーーアビドス高等学校 校庭

 

アヤネ「到着しました。もう降りても大丈夫ですよ」

 

黒服「ご苦労様でした。ホシノ、起きてください」

 

ホシノ「んー?あと五分だけ…」

 

黒服「……今日だけですからね」

 

セリカ「!?ちょっと待って!校門前に誰かいる!」

 

「嗚呼……なんと嘆かわしい……」

 

ヒナ「……何でいるのマザー」

 

ベアトリーチェ「そのエンジェルボイスは…我が愛しきヒナ!それに親愛なる我生徒のアル!お二人とも怪我はありませんか?」

 

アル「大丈夫よ…相変わらず過保護ね…」

 

ノノミ「えっと…その方は?」

 

ベアトリーチェ「失礼。ご挨拶が遅れました。私の名はベアトリーチェ。ゲヘナ学園の教師であり……ヒナの母親です」

 

セリカ「この辺りの先生ってこんなのばかりなのかしら…」

 

ベアトリーチェ「そこの貴女。人を見た目で判断するのは軽率ですよ。これでもそこの黒服とは違い連邦生徒会に認められた正式な教師なのですから」

 

セリカ「そうなのね……って黒服は正式な先生じゃないの?」

 

黒服「はい。私はただ教師を名乗って居るだけですよ」

 

ノノミ「いつの間にか当たり前になってましたけどまだ臨時の先生って立場でしたね」

 

ベアトリーチェ「それはいいとして…目的は達成出来たので……グッ」

 

セリカ「えっ!?いきなり苦しみ始めたけど大丈夫!?」

 

ヒナ「いつものこと」

 

アル「いつも爆発してるわよね」

 

セリカ「えっなにそれ怖い」

 

ベアトリーチェ「素晴らしい…素晴らしいですよ黒服。その幸せそうに眠る生徒は間違いなくホシノ。私の生徒ではありませんが思わず発作が出てしまいました」

 

黒服「何しに来たのですか?」

 

ベアトリーチェ「そんなの決まっているでしょう?私の生徒を迎えに来たのです。無事も確認しましたし早く学園にもど…」

 

ヒナ「もっとホシノと話したい」

 

ベアトリーチェ「本日はアビドスに泊まる事にしましょう。ご安心なさい、パジャマは用意してあります」

 

セリカ「手のひらドリルってレベルじゃないわね」

 

黒服「彼女にとって崇高するヒナの言葉は絶対ですからね。ではセリカ、ホシノを任せますのでシャワーを浴びてきてください」

 

セリカ「仕方ないわね。その代わりに布団を敷いておきなさいよ?」

 

ノノミ「あ、でも私達は一度パジャマを取りに帰らないと…」

 

ベアトリーチェ「勿論皆様の分も用意してあります。サイズも合わせてますよ」

 

セリカ「………怖」

 

ーーー

 

黒服「布団は7つで良いのですか?貴女の分が足りませんが」

 

ベアトリーチェ「私はヒナに抱き枕代わりにされて寝ますので問題ありません」

 

黒服「世間の目的には問題があるのでは?」

 

ベアトリーチェ「ヒナ側がそれを望んでいるのですから拒む理由もないでしょう?」

 

黒服「そうですか。……この度は助かりました貴女が救援に応じていただけなければアビドスは崩壊していた事でしょう」

 

ベアトリーチェ「理由はどうであれ生徒を助けたいと言われたら協力する他ないでしょう。借りもありましたからね」

 

黒服「危うく長年の苦労が水の泡になる所でした。……これ以上同じような事が起こる前に実験を始めましょうかね」

 

ベアトリーチェ「……一応聞いておきますがその実験を中止する気はありませんか?」

 

黒服「ありません。長年アビドスに付き添ってきたのもホシノが実験に協力的になってくれるようにする為ですから」

 

ベアトリーチェ「あくまで彼女は実験道具でしかないと?他に何の感情も湧かないのです?」

 

黒服「湧きませんね。私の崇高を満たす為に実験は不可欠。他は二の次です」

 

ベアトリーチェ「……今のホシノに現実を伝えるのは酷ですね。最悪強引に私が連れ帰っても……」

 

黒服「それは無理でしょうね。ホシノがここを離れる事はありませんし離れられない理由もあります」

 

ベアトリーチェ「……私が介入出来る余地は残されていないようですね」

 

黒服「ご安心なさい。何もホシノを殺すわけではありません。彼女の心が壊れなければ日常に戻れるわけですし」

 

ベアトリーチェ「……これ以上何を言っても無駄なようですね。分かりました。貴方が満足してアビドスから離れた場合残された彼女達の面倒は私が見る事にします」

 

黒服「それは助かりますね。……そろそろ皆が戻ってくる頃でしょう。私は夜景でも見てきますよ」

 

ベアトリーチェ「ええ。生徒達の事は私に任せて貰いましょうか」

 

ーーー数分後

 

セリカ「ホシノ先輩!私に寄りかからないで自分で歩いてください!」

 

ホシノ「今日くらい許してよセリカちゃんー」

 

アヤネ「前にも同じ事を言ってませんでしたか?」

 

ホシノ「うへぇ……記憶力が良すぎるよアヤネちゃん……」

 

ノノミ「わぁ〜この部屋に布団が7組も敷かれる日が来るなんて……」

 

ヒナ「(お泊まり会……楽しみ)」

 

アル「あの……パジャマの件に触れなくていいのかしら?恐ろしいほどサイズがぴったりなんだけど……」

 

セリカ「なんか触れたら負けな気がするのよね。部屋の中心で悶えているベアさんにも」

 

ヒナ「あれは生徒のパジャマ姿を見て昂る感情を抑えきれずに唸り声をあげているだけだから気にしなくていい」

 

アヤネ「……本当に生徒想いな先生なんですね」

 

ホシノ「えーでも私達の先生も生徒想いだよ?危険を顧みず私を助けに来てくれたし」

 

「………」

 

ホシノ「およ?どしたの皆」

 

セリカ「前から思っていたけど……ホシノ先輩って黒服の事好きなの?」

 

ホシノ「もういきなり何を言い出すのさー?そんな事ある訳ないじゃん」

 

ヒナ「隠さなくていい。応援してる」

 

ホシノ「えー…ヒナまでどうしたの」

 

シロコ「私達全員が黒服から愛の告白をされて顔を真っ赤にして俯いているホシノ先輩を目撃してる」

 

ノノミ「そうですよ。正直に白状してください⭐︎」

 

ホシノ「あれはそんなんじゃないってーただ皆が助けに来てくれた事が嬉しくて……」

 

アヤネ「……それはそれで恥ずかしい事を暴露しているような」

 

ホシノ「……もーあまり先輩をからかわないの。なんだか熱くなってきちゃったから外に涼みに行ってくるねー」

 

セリカ「あっ逃げた」

 

ノノミ「まあまあ。私達は陰ながら応援するとしましょう⭐︎」

 

アヤネ「ですね。……ところでベアトリーチェちゃんから後光が見えるのですが……」

 

ベアトリーチェ「………」

 

ヒナ「ああ。これは恋する乙女を見て語彙力を失った結果尊死する一歩手前の状態よ」

 

アル「詳しすぎないかしら…」

 

ーーー

 

黒服「……友達や後輩達と話さなくていいのですか?」

 

ホシノ「ちょっと熱くなっちゃって……隣座っていい?」

 

黒服「どうぞ」

 

ホシノ「ありがとう。……またここに帰って来れるなんて思わなかったよ」

 

黒服「救援要請が間に合っていなかったら貴女はここに居ないでしょうね。ここまで上手くいくとは思ってもいませんでしたが」

 

ホシノ「皆本当に優しいよね。私なんかの為に危険な事ばかりしてさ」

 

黒服「それ程貴女という存在は皆にとって大切なのですよ。だからまた自分だけを犠牲にするような勝手な真似は許しませんからね」

 

ホシノ「皆にとって大切……それって先生もそう思ってくれてるの?」

 

黒服「勿論です。でなければあそこまで必死になってホシノを助けに行きませんよ」

 

ホシノ「そっか……うへへ……」

 

黒服「そろそろ冷えてくる頃でしょう。部屋に戻った方がいいですよ」

 

ホシノ「……もうちょっとだけ」

 

黒服「ごねてもダメです。無理矢理にでも連れて行きますよ」

 

ホシノ「分かったよぉ……先生、今日は本当にありがとう。おやすみ」

 

黒服「ええ。おやすみなさい」

 




時間第一部最終回です。
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