例えばこんなゲマトリア   作:スカイブルーホワイトヘアー

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黒服とホシノとエピローグ

 

 

ーーーホシノ奪還から数日後

 

とある先生からのタレ込みによりカイザーPMCの理事が女子高生の誘拐、および借金を理由にいやらしい事をしようとしていたとの情報が入った。カイザーコーポレーションはこれに対して理事を辺境の地に左遷する形で対応した。

その際にアビドス高等学校に不正な利子を支払うよう要求していた事も発覚。これに対する処罰も後に下す予定との事。

 

黒服「そして脱税をしていた事実も発覚した為連邦生徒会はこれに対する余罪を追求……まあ、このくらいの制裁なら充分でしょう」

 

セリカ「いい気味ね。精々したわ」

 

アヤネ「毎月の利子も良心的な額になりましたし……何とかなるかもしれないですね」

 

シロコ「じゃあ皆で銀行を…」

 

黒服「やめなさい」

 

ホシノ「皆が前向きになってくれて私は嬉しいよぉ」

 

ノノミ「それじゃあ改めてスクールアイドルとして……」

 

黒服「それも却下です。……おや、ベアトリーチェから連絡が来ていますね」

 

セリカ「あの人にもまたお礼をしないとね。アビドス観光ツアーでもやる?」

 

ホシノ「おーそれ良いんじゃない?とはいえほとんど砂漠しかないから復興も進めていかないとねぇ」

 

ノノミ「そうでした。借金の事ばかり考えていてそちらを疎かにしてましたね」

 

シロコ「ん、それなら水工場を襲って人工オアシスを……」

 

黒服「やめなさい。……皆様に良いニュースがありますよ。前に出したノノミのASMRの販売数が約28000になったようです。先程その売上金額が口座に振り込まれました」

 

セリカ「通帳見せて!……3300万円も!?」

 

ホシノ「ノノミちゃん……恐ろしい子」

 

ノノミ「やりました〜⭐︎」

 

黒服「透き通るようなASMRと評価も高いようです。まさかこんなに売れるとは思いませんでしたが」

 

アヤネ「これでまた一歩返済に近づきましたね!」

 

シロコ「ん、なら私のASMRも……」

 

黒服「貴女のは爆撃音しか聞こえないですし鼓膜が破壊されて終わるだけですよ」

 

シロコ「相変わらず黒服は私に厳しい」

 

黒服「日頃の行いと言動を見直してください。……特に問題がなければ全額返済に使いますが宜しいですか?」

 

ノノミ「私は構いません♪」

 

セリカ「ノノミ先輩がそう言ってるなら良いんじゃない?」

 

ホシノ「そうだねぇ」

 

黒服「分かりました。では後程銀行で支払いをしてきますね」

 

シロコ「!」

 

黒服「ダメです」

 

ホシノ「………」

 

あの出来事があってから皆と過ごすこの時間がもっと好きになった。出来ることならずっとこうして過ごしていたいと思うほどに。

 

ノノミ「あっホシノ先輩。またアルちゃんから連絡が来てますよ」

 

ホシノ「ほんとだ。……うへぇまたヒナから逃げ回ってる……今度は何をやらかしたのさ」

 

ノノミ「『また匿ってほしい』ですって。どうします?」

 

ホシノ「仕方ないなぁ…『いいよ』って返信しておくね」

 

友達からの連絡も頻繁に来るようになった。

あの時はとてもカッコいい姿だったアルちゃんも今となっては情けなくなってしまったけれど大切な友人だ。

 

黒服「……ホシノ、これから銀行に支払いに行きますので着いてきて貰えますか?」

 

ホシノ「いいよー。それじゃあ後輩ちゃん達、あとは任せたよー」

 

セリカ「はいはい。なるべく早く帰って来なさいよね」

 

ーーー支払い後

 

ホシノ「まさか借金があんなに残ってるだなんて……世知辛いねぇ」

 

黒服「………」

 

ホシノ「どうしたの先生?考え事?」

 

黒服「……いえ、頃合いだと思いましてね。一つ懐かしい場所に行きませんか?」

 

ホシノ「えーデートのお誘い?しょうがないなぁ……」

 

黒服「………」

 

珍しく口数が少ない先生。そんな彼が向かう先は砂漠だった。

 

ホシノ「なんだか2人で砂漠を歩くのも懐かしいね。この辺りも変わってないなぁ……」

 

黒服「砂の量は増えていますよ。あの時よりも」

 

ホシノ「そっかぁ……」

 

黒服「……着きましたよ」

 

そこは随分と寂れた研究室のような場所。私と先生の原点とも言える所。

 

ホシノ「……ここも懐かしいなぁ」

 

あの時はよく分からなかったけど今回は何をするのだろう。掃除でもするのかな?

 

黒服「貴女のメンタルケアを行いたいと思いましてね。ご協力をお願いしたいのです」

 

ホシノ「えーそんな事だったの?いいよー」

 

黒服「即決ですか……警戒とかはしないのです?」

 

ホシノ「先生の事は信用してるからね。それで……この機械を繋げばいいのかな?」

 

黒服「………はい。お願いします」

 

ホシノ「……うん。これで大丈夫。いつでも始めていいよー」

 

黒服「……遂にこの時が……おっと、感傷に浸っている場合ではありませんね。それでは始めます」

 

スイッチを押すと同時にホシノは意識を失う。その状態で注入されるのは恐怖。前はここでエラーが発生して中断されてしまったが今回は上手くいったようだ。

 

黒服「ここからどうなるか……非常に楽しみですね」

 

数分間は何も起こらず沈黙の時間が続く。失敗したのか……と思っていると突如ホシノの身体から色彩が失われていった。

 

黒服「なんと……素晴らしい結果ですね!」

 

思わず近づいてしまう程妖艶な魅力を感じる。身体の枠が白い線で構成され他は宇宙のように暗い紺色のみ。白い線がなければホシノかどうかすら判別できないだろう。

 

黒服「ホシノ……貴女は最高です!」

 

「………」

 

それがゆっくりと目を開いた。なんと神々しい……見惚れているとそれと目があった。瞳孔が開いて今にも襲いかかって来そうな圧を感じる。虚な表情で拘束具を破壊しゆっくりと近づいてくる。やがて数十センチ程の距離まで近づいてきた時、あまりの感動に動けなくなってしまう。だがこのまま命の終わりを迎えても悔いはないだろう。

 

黒服「貴女に感謝しますよホシノ。悔いはありま……」

 

そう言い終わる前に抱きついてきた。両手に持っていた武器を床に捨てて。

 

「せん…せ…」

 

黒服「……ホシノ?」

 

そう問いかけた時、彼女の表情は緩んでいた。そのままの姿勢で過ごしているうちに彼女の色が元に戻っていることに気がついた。

 

黒服「まさか恐怖を克服した……?どうやって?」

 

理解が追いつかない。何故目の前の少女はこんな奇跡のような結果を出したのか?何故?だがただ一つ分かった事は……

 

ホシノ「……あれ、先生?どうし……」

 

黒服「素晴らしいですよホシノ!!貴女は私の想像を軽々と越えていきました!」

 

ホシノ「うへ?先生どうしちゃったの?メンタルケアをしてただけで大袈裟だよ」

 

黒服「昂る感情が抑えられそうにないです!今ならベアトリーチェの事も少しは理解できる事でしょう!」

 

ホシノ「……よく分からないけど先生が嬉しそうだからいっか」

 

黒服「そうだ、記録を残す上ではホシノの意見も聞かなくては。ホシノ、メンタルケア中の様子を聞いてもいいですか?」

 

ホシノ「あんまり覚えていないけど…夢を見ていたかな」

 

黒服「夢、ですか?」

 

ホシノ「うん。大事なものが全部消えて独りになる夢。その時目の前が真っ暗になって……恐怖に支配されている感じだった」

 

黒服「(それが先程色が抜けた時の状態でしょうね…)なるほど……その後は?」

 

ホシノ「何も見えない状態で彷徨ってた。でもね……声が聞こえたの。私の名前を呼ぶ声が。声のする方向から光が差し込んできて……気がついたら先生に抱きついてた」

 

黒服「………」

 

結果としてはこう記さないといけないようだ。『ホシノは恐怖を愛で克服した』と。

 

黒服「とりあえず……学校に戻りますか」

 

ホシノ「……ねえ先生」

 

黒服「何でしょうか」

 

ホシノ「……やっぱ何でもない」

 

黒服「……そうですか」

 

足音しか聞こえない程静かな状態で歩を進める。

 

ホシノ「……先生、好きだよ」

 

背後にいるホシノがそう呟いているのを聞いた。

 

黒服「……知っていますよ」

 

そう返してから数秒後、ホシノの足音が聞こえなくなった。

 

黒服「ホシノ?」

 

ホシノ「……えっ……今、聞こえて……何で……」

 

振り向くと湯気が見えるほど顔を真っ赤にして混乱しているホシノの姿。

 

ホシノ「だって……今心の中でそう思ってただけで……聞こえるはずが……」

 

黒服「口に出していましたよ」

 

ホシノ「っ?!???」

 

声にならない叫びをあげるホシノ。ここまで彼女が慌てふためくのは珍しい。しばらく観察しようと眺めていたらいきなり頭部に痛みがきた。

 

ホシノ「忘れてー!」

 

そんなホシノの声を聞きながら意識を失った。

 

 

第一部完

 




ひとまずこれで第一部は終了となります。

あ、まだまだ作品としては続いていきますのでよろしくお願いします
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