ゴルコンダと先生の救援。どちらも雑に解決させて
数日が経過した頃……それぞれ新築やら結婚式やら
ミカに手を出した等で慌しかった日々も落ち着いて
再度会議を開く事になり集まった。
「……何ですって? 既に結婚式は終えた? 何故
なのです! あの子の花嫁姿を私に生で見せずに
式を終えてしまったのですか!!」
「二人の愛を誓う際に不純物を混ぜる必要があると
思うのか?」
「それはそうですが私だって見たかった!」
「写真ならあるぞ」
「気が利きますね。……ヴッ゛」
眩しい程の笑顔で笑うユメの花嫁姿を見たベア先生
は案の定今週二回目の爆発をした。写真か燃えない
ように机に置いて距離をとってから爆発する辺り
無駄な気遣いをしているようだ。
「しかしマエストロ、いくら惚れていたとはいえ
結婚する必要はあったのですか? トリニティや
ミレニアムにも貴方の芸術を理解してくれる生徒
が存在していると思います」
「ユメに対する愛が崇高を上回っただけの話だ」
「貴方それでもゲマトリアなんですか? 崇高を
捨てて愛を選択するとは……」
「勘違いするな。私は崇高を捨ててなどいない。
崇高よりも愛を優先したいだけだ。私からして
みれば黒服の方が崇高を捨てているようにも
見えるがな」
「私が?」
「そこの爆発したマダムとは違い生徒が崇高では
ないのだろう?」
「……お気づきになられましたか。実はですね……
私は過去にホシノの手によって潜在意識を改変させ
られたのですよ。その際に崇高が『ホシノ』に変化
させられて昔の私が求めた崇高を見失いました」
「そんな馬鹿な話がある訳ないだろう。くだらない
理由でロリコンを正当化するな。……と切り捨てる
事は簡単だがそこの年増の例もあるので一概に無い
とは言い切れないのも問題だな」
「そういう事です」
「……話を戻そう。私達は今回何を議題に
話し合うと言うのだ?」
「……あ、そうでした。爆発して尊みに心を
通わせている場合ではありませんね。本日の議題は
ずばり『身近なてえてえを探そう』です!」
唐突に息を吹き返したベア先生は何処からか用意を
してきたホワイトボードに大きな文字で
ヒナ好き
と汚い文字で書き始めた。
「最近とある影響でですね。一部の生徒達が
カップリング、つまり恋仲になりかけているとの
情報を昨日抱いた生徒から聞いたんですよ」
「そうか……この際トリニティかミレニアムの
生徒でなければ抱いた云々は気にしないぞ」
「私が抱いたのはミレニアム生です」
「何やってんだババア!!」
「マエストロ落ち着いてください」
「止めるな黒服! あいつを許してはならん!」
「美味しかったですよぉ……あの子は」
「貴様ァ!!」
「……はぁ」
やたらと低俗な争いを繰り広げる二人だがベアが
手を出した生徒の名前を告げると黒服も彼女に
殴りかかったとか。
第七部 虚無と変態 完
ねえ、いつまでそんなおままごとを続けるの?
これ以上生きる事になんの意味があるの?
所詮人を傷つけて生きる事しか出来ないのに
何が生徒の為、何が愛の為なの
綺麗事なんてくだらない、本当にくだらない
人間が根本から変われるなんて思うな
ゲマトリアが悪い大人以外になれるなんて
万が一にもあり得ない
絵空事を描いて能天気に過ごしたところで
知らず知らずのうちに傷つけるだけなのに
例え違うと、そんなつもりじゃないと否定しても
この物語の終着点は破滅しかない
それならば今のうちに自分から命を絶って
この物語を終わらせるのが一番良いよ
ほら、ここに包丁と縄を用意しておいたからさ
思う存分苦しんで生き絶えるといい
人に迷惑かけた分苦しんでね
さあ早く苦しめ、そして死ね
お前が被害者面をするな加害者
誰のせいでこうなったと思ってる?
全部自分が招いた結果だろう
さっさと死ね
死ね
死ね
死ね
死ね。
人は悪夢を見る。原因を作ったのが自分自身だと
理解せず。そしてその現実から逃れる為に夢の中に
入りまた悪夢を見る。その繰り返し。しかし誰も
同情してはいけない、手を差し伸べてはいけない。
それは彼自身が自らの手で招いた結果なのだから。
どれだけ正しく生きようと、反省しようと。
根幹が変わる事はない。悪い大人が改心したとして
また罪を増やす事だってある。どれだけ本人が
もう二度と人を傷つけないと誓ったところでそれが
身を結ぶ事はない。後悔してもしきれない。そんな
現実に嫌気がさして拳銃に弾を込めた。この行為は
償いにならない。なる筈もない。
それでも彼は自らの手で引き金を引いた。
ーーその直後に目が覚める。
「………」
最近このような夢をよく見る。その理由は隣で眠る
彼女が関係していた。
「ホシノ、貴女は幸せなのでしょうか……」
「幸せだよ」
「……起きていたのですか」
「うん。それよりもいきなり幸せか聞くなんて
何か悩み事でもあるの?」
「……私はこのまま生きていてもいいのかと
考えてしまいましてね」
「そんなの当たり前だよ。先生はずっっと私の隣に
居てくれないと!」
「ずっとですか……」
「もー忘れたの? 結婚式でこの指輪に誓って
くれたのは先生だよ? しっかりしてよー」
「指輪……ええ、そうでしたね。私がホシノを生涯
愛すると決めた証……」
「……本当に大丈夫なの? もうちょっと寝た方が
いいかもしれないよ?」
「……そうですね。もう少し休ませてもらいます」
心配し、ほんの少し不安そうなホシノの手はとても
暖かくて心地よい。
……だからこそ恐怖に怯えて悪夢を見てしまう
ようになってしまった。もしホシノがこの手から
離れてしまいもう二度と温もりを感じられなく
なってしまったら。そんな嫌な想像は止まらない。
胸騒ぎが止まらない。いつか何らかがきっかけで
この幸せな時間に亀裂が入ってしまう。その時が
近い。いつもと変わらぬ日常の中の違和感に
気づかなければ彼女は……
「先生、大丈夫だよ。私はずっと側にいる。
ちょっと頼りないかもしれないけど……」
「ホシノ……」
「……なんか不思議だね。先生は私よりもずっと
頼もしくて頼りになるのに、時々こうして一人で
抱え込んで私よりも小さく見える時がある」
「情けない話です。大人であり教師でもある私が
教え子に安心させられるとは……」
「確かに情けないかもしれないけど……先生と生徒
の関係でもさ、結局のところ私達は人間なんだよ。
心が折れちゃったら弱くなっちゃう生き物。先生も
見た目は人外だけど心は人間だからさ。そういう時
は頼ってくれていいんだよ。私はずっと貴方と一緒
に居るからね」
「……はい」
おまけ
「どうでした?」
「とても良い感じですよ。羨ましい程に」
「むむむ……ずるいです。今夜はアリスもパパとママと
一緒に寝たいです!」
「そうですね。せっかく同じ屋根の下に生活している
家族なんですから一緒に寝なければいけません。
……ですがもし父に襲われでもしたらどうしましょう」
「大丈夫です! 見境なく襲うのはシャーレの先生だけ
しか該当しませんから!」
「そうでしたか。ところでアリス、昨日はどちらへ
行っていたのですか?」
「ベア先生の所です! アリスにだけの特別な授業を
してくれました!」
「……まさかとは思いますが」
「とっても頭がふわってしました!」
「あの人一度撃ちに行った方が良いですね」