……頭痛が酷い。それは悪夢を見ているから、
という理由もあるのだが一番の理由は……
「黒服知っていましたか? アリスちゃんの身体は
アンドロイドとはいえとても精密にデザインされて
いて触り心地も……」
この変態が付き纏ってくるからだ。何故くる?
はっきりと言って邪魔でしかないのだが。
嫌がらせのつもりか?
「……あのですねマダム。私は今とても頭痛が酷く
貴女の話を聞いている余裕がないのです」
「知っていますよ。だから付き纏っているのです。
私はこれでもメンタルケアは得意な方でしてね。
同じ教師として力になってあげましょう」
「必要ありません」
「まあそう言わずに。良いですか黒服、貴方の悩み
など手に取るように分かります。ホシノが誰かに
寝取られないかと不安なのでしょう?」
「………」
「それもその筈。過去に二度攫われたと記録が
残っていますし何よりこんなことわざもあります。
二度あることは三度ある、とね。せっかく掴んだ
幸福を何処の馬の骨かも分からぬ人間に壊されたら
どうすればいいか分からない。そう考えていると
私は読みましたよ」
「違います」
「あら違いましたか。では何故なのです?」
「それは……」
「……まあ、妻であるホシノにも相談出来ない内容
ともなればそう簡単に話せませんよね」
「……いえ、マダムになら言えるでしょう。実は
このような手紙を頂きまして」
「まあ、この気品あふれる高貴なる文字はまさに
トリニティの子が書いた手紙ですね。では少し
拝見させて頂きましょう」
ーー拝啓 黒服先生へ
ペロペロ様が空を舞い強き風が吹いてヒフミさんの
下着を覗けた事に至福を感じる中、如何お過ごし
でしょうか? あ、色は教えませんよ?
さて、本日こうして黒服先生にご連絡したのはそう
私の妻となる方をご紹介したいと思いまして。
先生はハルナさんを覚えておりますか? ゲヘナで
お馴染みのテロリストであり私のライバルです。
実は色々あって彼女を私の花嫁としてトリニティに
お迎えしたのです。その為妻を支えるに相応しい
立ち振る舞い等を貴方にご教授頂きたいのです。
モモトークに返信がなく枕を濡らしそうになって
しまったので手紙という形でご連絡しました。
返信お待ちしておりますーー
「……この内容に悪夢を見る理由とは? というか
モモトークは返信してあげてください」
「毎回くだらない連絡ばかりしてきていたので……
それよりも恐ろしくはないのですか?」
「何がです?」
「もしホシノ以外のアビドス生が百合に目覚めて
しまった場合簡単に寝取られてしまう可能性が
あるのですよ? このように生徒が生徒を襲う事例
が出来てしまった以上笑い話では済まされません」
「ホシノを襲う生徒が居るとは思えませんが」
「後輩達に迫られたら一度は断っても渋々……
なんて事もあるかもしれません」
「流石に考えすぎでは……ですがもし困るならば
ホシノ以外のアビドスの子達を私が抱いて……」
「いえそれは駄目です」
「残念です」
「マダムが仰りたい事も分かります。ホシノが
他生徒に襲われる可能性は限りなく低いと。
それでも……」
「というかそこまで気になっているのに何故ホシノ
の側から離れたのです?」
「友人と遊びに行くと言って出掛けて行きました」
「おや、そうでしたか。多分ヒナとお出かけしたの
でしょうね。今朝は張り切って準備をしていたの
で……」
「マダム?」
「……まさかヒナとホシノがそういう関係に?」
「……!?」
「いえ、まだ憶測の範囲内です。流石にそんな事が
あるとは思えませ……」
「あれ、先生とベアさん。こんな所で会うなんて
奇遇だねー」
「ホシノ、本日はヒナと出掛けたのでは……」
「? うん、居るよ」
そう、確かにそこにヒナは居た。恋人のように
ホシノの手を握り頬を赤らめて顔を背ける姿を
こちらに見せていた。
「ひ、ヒナ!? そんな雌のような顔を私以外に
見せるなんて……ま、まさかホシノとそういう
関係になったのですか!?」
「そ、そんなのじゃない。これはその……ホシノ
の方から求められて……」
「ホシノから!? 嗚呼、私のヒナが遂にNTRの
被害に遭って……」
「……何のこと? 私達はただ手を繋いでただけ
なんだけど……」
「恋人繋ぎで、ですか?」
「うぇ。……あっ。いつもの癖でつい……」
ーーー
「え? 私が襲われて百合に目覚める? ないない、
だって私が好きなのは先生だけだもん。例えヒナに
誘われてもそんな事起きないよ」
「私も同じ意見。ラブとライクは違うから」
「……だ、そうですよ黒服。良かったですね。
もう悪夢に悩む必要はなさそうです」
「そうですね。はぁ……安心しましたよ」
「話が見えないけど……先生が安心したのなら
良かった! じゃあ今夜も……いいかな?」
「勿論です」
「うへへ、約束だよ」
「これが純愛の権化黒ホシですか。確かにこれは
破壊力が高いですね」
「というかNTR云々の話をするならゲマトリアと
生徒がカップリングしてる時点で脳破壊不可避だと
思うんだけど」
「ヒナ、それは言ってはいけませんよ」
かくして黒服の悪夢騒動は解決し、数日は平穏な
日常を謳歌出来たのだとか。
しかし彼が感じていた日常の違和感は確実に
蝕み始めている。
そろそろ重くします