例えばこんなゲマトリア   作:スカイブルーホワイトヘアー

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無謀でも

ー目が覚めた時、私はベッドに寝かされていた。

気分も体調も最悪で腹部に強烈な痛みが走り手で

抑えてしまう。朧げながらケイに殴られた記憶を

思い出して状況を把握した。あれからどれだけの

時間が経過したのだろう……とにかくホシノを

助けに行かなければならない。腹部を抑えつつ

ベッドから立ち上がろうとした際、黄色い生徒が

暇そうにこちらを見ている事に気がついた。

 

「やあ。体調は如何かな?」

 

目線があったかと思えば突然話しかけてきた。

何だこの生徒は……

 

「今は安静にしていた方がいいんじゃないかな、

無理はしない方がいい、黒服先生」

 

「ご忠告ありがとうございます。では失礼します」

 

「待つんだ。そんなに急いで何処に行くんだい?

まさか小鳥遊ホシノを助けにでも行く気かい?」

 

「ええ。何か問題でも?」

 

「ああ、大アリだね。とりあえず一度腰を下ろして

私の話に耳を傾けてみてはどうだろうか?

君は今回の事件の全貌を知る必要があると思うよ」

 

「……聞かせてもらいましょうか。ただし3分、

それ以上は聞きませんよ」

 

「せっかちだね。まあいいさ、多少は端折って

話すとしよう」

 

彼女は話す。この騒動の元凶を。そして予知夢で

ホシノが命を落としてしまうものを見たと。

 

「……これで大体の事は分かっただろう?

だから今はこのまま他の先生達が戻ってくるまで

大人しく待っているべきで……」

 

「ーーくだらない」

 

「……何故外に行こうとするんだい?

話を聞いていたのかい?」

 

「ホシノが危ないのであれば一分一秒だって

無駄にしてはいられない。当然でしょう?」

 

「頭海綿体なのかい? 大した戦闘能力もない

ヘイローすらもない大人一人で何が出来るんだい?

それこそ無駄だと思うけどね」

 

「……黙れ。生徒の分際で偉そうに」

 

「どうやら本当に頭に海綿体が詰まっている様だ。

無駄に命を散らしても無意味じゃないか。そんな

単純な結論にすら辿り着けないなんて相当思考を

放棄している様だ」

 

「黙れと言っている!!」

 

「……分かった、これ以上は止めないよ。でもね

黒服先生。貴方が居なくなったら悲しむ人だって

少なからず居る。少なくとも君の娘はそう思って

いるんじゃないかな。だから軽率に命を粗末に

するべきではないと思うよ」

 

「……それでも私は行かねばならないのです。

例え無謀だとしても私はホシノの夫ですので」

 

「立派なものだね。……仕方ない、私も黒服先生に

付き合おうじゃないか。多少はマシになる程度では

あるが力を貸そう。……そこで聞き耳を立てている

生徒達も一緒に、ね」

 

「聞き耳?」

 

「私ですわ黒服先生!」

 

「………」

 

世界よ、何故この様な状況に陥ってもハルナという

面倒な生命体から逃れられないのだろうか。

あまりにも不条理すぎる。

 

「安心してください、私はホシノさんから貴方を

寝取るつもりはありませんの。ただ力になりたい。

動機としてはそれだけですわ。勿論フウカさんも

同じ考えですわよ」

 

「えっと……盗み聞きをしようとした訳では

なかったんです。……ですが確信しました。

貴方はただ奥さんを助けたいだけなんですね。

私も協力させてください」

 

「宜しいのですか? 明らかに命の危険がある

のに何故私に協力をするのです?」

 

「……父の母に対する想いが伝わったからです」

 

「ケイ……」

 

「行きましょう。母を救いに」

 

「……はい」

 

「……で、黒服先生。何処に向かうんだい?」

 

「アビドス砂漠。相手が黒服という存在ならば

其処にいる可能性が高いです」

 

「では車に乗って行きましょう。運転は……

私がしますね」

 

ーーー

 

砂漠に到着したは良いものの何やら重苦しい空気が

漂っている。不気味な程に静かな砂漠を車から降り

歩を進めていく。しかしどれだけ進もうとも誰の

気配も感じない事を考えるに此処には奴が居ない。

そう思わざるを得なかった。

 

「……どうやら無駄足だったようですね。

一度引き返して別の場所を……」

 

その時突然通信が入った。端末を開き応答すると

相手が聞き慣れた声で話しかけてくる。

 

『ご機嫌よう。この世界に本来存在する私』

 

……黒服だ。何故こいつが出るのか……

 

「……貴方が私のホシノを誘拐したのですか?」

 

『如何にも。貴方もご存知の通りホシノさんは

キヴォトス最大の神秘を所持しております。

実験道具としてこんなにも適した存在は居ません』

 

「……もしホシノに何かあったならその時は貴方の

命を奪います。絶対に」

 

『ほう? 面白い事を言いますね。私が私を殺す

なんて発言をするとは。非常に興味深い。ですが

口の聞き方には気をつけた方がいいですよ。私が

小鳥遊ホシノの命を握っている事を忘れずに』

 

「………」

 

『そうそう、今回何故貴方に連絡をしたのか。

気になっていると思いますので教えましょう。

現在私はとある実験を行っておりまして……

その妨害をされるのは非常に不愉快極まりない。

……ですので貴方達を処分させて頂きます』

 

「処分ですって?」

 

『はい。現在貴方達を囲む様に三方向から生徒を

配置しました。当然そちらに向かっていますよ。

1つ目はゲヘナの『風紀委員会』

2つ目はトリニティの『正義実現委員会』

3つ目は百鬼夜行の『百花繚乱』

です。そうそう、そちらに居る王女に似た存在が

テレポート機能を所持した武器を持っているとの

情報がありますのでその機能は破棄させて

頂きますね。それではお楽しみください』

 

言いたい事だけ言い伝え終われば通信が切れる。

同じ姿をした存在だが無性に苛ついてしまった。

 

「とにかく急いでこの場を離れましょう。

一つの勢力ですら厳しい状況で三勢力を同時に

相手に等出来ません」

 

「……父。既に囲まれています。初めから私達を

逃すつもりはない様です」

 

ケイの言う通り前方に百花繚乱。それぞれ左右に

風紀委員会と正義実現委員会が並んでいる。

……やはりマダム達を待つべきだったか。

 

「……私の我儘に付き合わせて申し訳ありません。

この様な状況になるなんて……」

 

「ーー黒服先生よ、甘く見て貰っては困るね。

私達は全員覚悟の上で着いてきたんだ。抗おう

じゃないか、運命に」

 

「そうですわ。ヒナ委員長の居ない風紀委員会

なんて私の手に掛かれば余裕ですわ!」

 

「わ、私も出来る限り協力します!」

 

「……ありがとうございます。頼りにしています」




……あれって……黒先?
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