「なあ黒服よ。身体を万全な状態に整えるという
つもりで半日時間を設けたのだ。……何故だ。何故
両手を損傷している?」
「気にしないでください。家族団欒の時間を
過ごした代償ですよ」
「そ、そうか……」
「全く……締まらない出発になりますねまあ私も
脚が痺れて数分は動けませんがね!」
「ふざけるなよこのロリコン共が」
「"ま、まあ落ち着いて。平常運転なのは心に余裕が
ある証拠でもあるんじゃないかな?"」
「甘いぞ。この二人はすぐに暴走するからな」
「"それは先生としてどうなんだろう……"」
「とりあえず早くホシノを助けてハッピーエンドを
迎えようではありませんか。後の事は彼女を救出
してから考えれば良いのです」
「……はい。皆様行きましょう、アビドス砂漠へ」
四人の先生、十三人の生徒。少数ではあるが彼らは
これから強大な悪に立ち向かっていく。その戦いが
導く結末は如何に。
ーーー
『やはり戻って来てしまいましたか……哀れな
先生とそれに従う生徒達が』
「はい。貴方から私の大切な人を返して貰わねば
いけませんので」
『そうでしょうね。では争いましょうか。
ゲマトリアである私と教師という地位に落ちぶれた
哀れな先生達よ』
通信が切れる。それと同時に前方に生徒達が現れて
こちらを牽制している。正義実現委員会と百花繚乱
の二つの勢力が並んでこちらを出迎えていた。
「"見知った顔しか居ないなぁ……"」
「……なあ先生よ。私の予想が正しければ恐らく
先生の号令で生徒は止まるのではないか?
もし記憶の改変が特定の世界線を参照すると
すれば殆どはシャーレの先生が指導をしていると
想像がつく。試しに声を掛けてみてくれ」
「"分かった。……おーい皆ー!"」
ザワザワ……
あれって先生じゃない?
えっでも私達は先生に指示されてここに……
だって私達の先生はさっき会った……あれ?
「"なんか混乱しちゃってるけどいいのかな?"」
「それでいい。混乱している今の内に走り抜けて
奴を探しに……」
ちょっと待って。そこの二つ頭の先生、あんたよ
「……私を指名するのは誰だ?」
「桐生キキョウ。……あんたの妻だよ」
………
「は?」
「他の先生はともかくあんただけは逃さない。
さっさと籍を入れさせてもらうから」
「待てタイミングを考えろ。というか何故面識の
ない私の妻だと虚言をするんだ!」
「……あんた私にあれだけの事をやっておいて
忘れたなんて言わせないよ?」
唐突に現れた黒猫に絡まれたマエストロ。こちらの
世界では出会ってすらいない筈のキキョウに浮気を
疑われているようで……
「やっぱり来た。それに黒先の他にマエ先も居る」
「ええ! そろそろ身共達も行動しましょう!」
「腕と……貴女の事、二つの御礼をしないと
いけないね、アヤメ」
「そういう事! 既にキキョウがマエ先の何処に
近寄ってるしきっと事情とか伝えてくれてると
思うからあっちは大丈夫。それじゃあ合図を……
百花繚乱!! 私達の恩人に力を貸すよ!!」
おー!!!!
「"あれ、百花繚乱の子達が正実の子を攻撃してる
けど……大丈夫かな?"」
「大丈夫ではないですが今は好都合です。仲間割れ
している内に先を急ぎましょう」
「"マエストロは……"」
「私の事は置いていけ! この場を鎮めたらすぐに
合流をす……」
「ねえ、前に言ったよね? あんたは私の事だけを
考えて私だけを見ていれば良いって。どうして他の
人に返事してるわけ? 反吐が出そう」
「分かった一度落ち着けキキョウ!」
束縛系猫に捕まった彼を放置して黒服達は先に
進む事にした。彼の犠牲は無駄にしないと誓い。
「おい待て私が死んだかのようなナレーションを
付けるんじゃない!」
「いい加減にしてもらえる。私だけを見ろって
さっき言ったばかりだよね?」
「束縛してくるな!」
「嫌」
置いて行かれたマエストロは話の通じないキキョウ
とのやり取りを何とか終えて落ち着かせた後、話を
聞いてみる事に。
「何故私との記憶がある?」
「最近思い出したの」
「何故私の妻だと言い張る?」
「大人なんでしょ? 私にあんな事をしておいて
よくそんなシラを切れるね。大人しく責任取って」
「あんな事とはなんだ?」
「不良生徒に絡まれている時にあんたが私を助けた
事に決まってるじゃん。本当に忘れたの?」
「……それだけで妻を名乗るのはおかしいだろう」
「それはあんたの価値観でしょ?」
「……先に百花繚乱に加勢してこい。話は後で
時間を設けるからじっくりしようじゃないか」
「じっくり? ふうん、焦らしが好きなんだ?
それならこの桐生キキョウの策に嵌めてあげる。
先生を満足させてあげるから」
「何故こうも話が通用しないのだ!?」
芸術家大苦戦中
レンゲさんは青春を満喫しているので来ていません