「見るからに怪しい扉の前に来ましたね」
「この先にホシノが居ます。間違いありません」
「ようやく黒服とご対面出来るという訳ですね。
あの野郎は一度ぶん殴らなければ……」
『おや、既に此処まで来ていたとは。その熱意は
素直に賞賛致しましょう』
「……毎回毎回通信してきますが黒服、貴方は
暇なんですか?」
『余裕があると言ってもらいたいものですね』
「ふん、もうハッタリは聞き飽きましたよ。
貴方の切り札的な存在であるシロコは既に保護済と
先程先生から連絡がありました。戦況を考えても
こちらが圧倒的に有利。大人しくこの騒動を解決
すると誓うなら拳千発で勘弁しましょう」
『先程一発と仰っていた気がしますが……まあ、
その様な事はどうでもいい事です。しかしマダムは
勘違いをしている様ですね。確かに砂の神は傑作。
私の切り札と言っても過言ではありません。ですが
心の弱さを克服させるまでの懐柔は失敗していた
様で……結局は駄作という事だったのでしょう。
ですので今から砂の神よりも調教が上手くいった
本当の最高傑作をそちらに転送しましょう。それと
大量の兵士も連れてね』
「ふん、どうせレッドウィンターの子達の様に操る
事なんて出来る筈が……」
「やだな〜あんな子達と一緒にしないでよ☆」
背後から聞こえてくるのは聞き慣れた声。だが
いつもと違って天使の様な思考の音色を奏でている
のではなくまるで絶望に染まったかの様な声に
聞こえる。振り返るとそこには翼を赤く染めて血の
涙を流して笑う壊れてしまったミカが居た。
その背後にはガスマスクを被ったアリウス生徒が
大量に配備されている。
『どうでしょう? 既に一部の方には接触をしたと
思いますが素晴らしい作品でしょう? 哀れな魔女
とでも呼びましょうか。砂の神とは違い既に崩壊
しているので懐柔される心配もない。ただ自らの
憎悪に身を任せて行動する殺戮兵器です』
「ゲヘナ生みっけ☆ しかも錠前サオリまでいるじゃーん♪ ここから先は進ませないよ?」
「サッちゃんの知り合い?」
「……知らないな。だが殺意を向けられている以上
私が何かをしてしまったのだろう。……すまない」
「謝るくらいなら死んで?」
『嗚呼、素晴らしい。ブレる事のないその殺意。
まさに魔女と呼ぶに相応しい存在です』
通信越しに笑う黒服。その不快な声が引き金となり
彼女は、ベアトリーチェの怒りは限界を迎えた。
それでも冷静さを忘れないように抑えようとして
その場で拳から血が出る程に強く握り締めて耐え、
絞る様な声で
「黒先、アリス、ケイ、ユメ、シロコ。貴方達に
後は任せました。私達は此処に残って彼女達が
貴方達の邪魔をしない様に食い止めます」
「マダム……しかし……」
「早く行け! これ以上私をイラつかせるな!」
「っ……分かりました。恩にきます、マダム」
「……行かせて良かったの? さっき千発殴るって
意気込んでいたのに」
「今のまま奴と対面したら殺してしまいそうです。
殺人鬼になってしまったら生徒達の教育に悪影響が
ありますので」
「私は貴女が殺人鬼になったとしても愛せる」
「嬉しい言葉ですね。その言葉で私はこの怒りが
間違っていない事を理解しましたよ」
「ねえ、そろそろ攻撃を始めていい?」
「はい、構いませんよ」
「おっけー全員まとめてあの世行き、だよ☆」
「やってみなさい」
ーーー
「……ほう、素晴らしい戦闘能力ですね」
「こいつらが弱いだけ。あと何でこの三人が
アビドスの制服を着てるのか説明して」
「さあ? 私はただ戦闘用の訓練兵を用意したに
過ぎないので。それにその様な事どうでもいいと
思いませんか? 敵である事には変わりがないの
ですからね」
「………」
そう、こいつらは敵。私から先輩を
奪った奴らの仲間。……本当に?
「さあホシノさん、そろそろ貴女の出番ですよ」
「命令するな」
私に命令していいのはユメ先輩だけだ