「……ではヒナ、ミカの相手は任せましたよ。私は
貴女が集中できる様に他の子を指揮します」
「うん、分かった。それにしても……この状況って
あの日と真逆になってるわね」
「何の話?」
「覚えてないのならいい」
「変な子。ま、ゲヘナだから当然かなっ☆」
「御託はいいからさっさとかかってきたら?
白黒はっきり付ける良い機会だし」
「言われなくてもそのつもりだよ!!」
二人の戦いがは拳と蹴りが衝突した際の轟音が合図となり幕を開けた。
身長差や武器の大きさ等を考慮してもヒナの分が
悪いのだが対等に格闘戦を繰り広げている。
「力が強いだけなら私には勝てない」
「ゲヘナ風情が!!」
挑発に乗り大振りな攻撃を繰り返し隙ができたミカ
にカウンターを繰り出すヒナ。本気の戦いとなれば
利用出来るものは全て使う。心の弱さや劣等感、
忌み嫌っている感情ですらも。
「ゲヘナ風情に追い込まれる気持ちはどう?」
「……あはっ☆ この程度で私を倒せるなんて
思わない方がいいよ!!」
格闘戦に一区切りをつけたのか銃を構えてヒナに
発砲する。彼女は躱す事なく全て受け止め……
そのまま勢いに乗ってミカを殴り飛ばした。
「くっ……なんで避けないの?」
「生まれつき身体が頑丈なのよ」
「そっか……じゃあこれでも喰らって!!」
銃弾が効かないと理解したミカが取った手段。
それは何処かから隕石を降らせヒナを潰す事。
「いくら頑丈な貴女でも隕石にぶつかれば
致命傷になるよねぇ!!」
「……そうね。隕石ともなれば流石にダメージが
大きくなると思うわ」
迫り来る隕石に対してヒナはただその場で銃を
構えて待機をする。そして彼女の身体が白く光り
輝いた刹那発砲された一発の銃弾。
「無駄だって♪ そんなので隕石が砕け……!?」
徐々に亀裂が入っていき砕け散る隕石。その欠片に
飛び乗ってミカを見下ろす彼女は『白い秩序』と
化した空崎ヒナ。その姿はまさに最強に相応しい。
「他に切り札がないなら終わらせよう」
「まだ勝った気になるのは……!」
「ううん、もう終わり。私は早く親友を、ホシノを
助けに行きたい。だから貴女に使う時間はない」
「うっ……」
先程よりも威力が上がった蹴りが腹部に当たり
数十メートル先の壁に吹き飛ばされるミカ。
空崎ヒナの圧勝。誰が見てもそう答える程に
完膚なきまでに叩き潰された。
「私の勝ちね」
「……はは、そうみたいだね」
「負けを認めるのね。意外だったわ」
「……本当は初めからわかってたんだよ。
私には何も残ってないんだから。
こうして戦う事にしか価値がない……」
「……その辛い記憶もあと数十分で消える。今の
貴女が見ているのはただの悪い夢よ」
「……そうなのかな。うん、そうだと良いな……」
希望に縋り付くようにミカは眠りについた。きっと
彼女が起きる頃にはこの騒動が解決しているだろう。
「……ふう」
そんな彼女の近くでヒナも倒れ込んだ。覚醒を使用
した事による反動で数分動けなくなるのだ。
「ヒナ、お疲れ様でした」
「うん」
「ミカの事はマエストロにでも任せましょう。
そ、れ、よ、り、も……久しぶりですね、覚醒した
後の動けなくなるお楽しみタイムは」
「そうだね。好きにしていいよ」
「はい。……と言いたい所ですが今はそういう気分
にはなれないのでまたの機会にします」
「珍しいね。そういえば聖園ミカの取り巻き達との
戦いは大丈夫なの?」
「勿論。思っていたよりも過激な子が多くて……
リオが変なデザインのロボットを操っていたり
ハルナが何処かから用意した車で轢き始めたり
指揮以前の問題ではありましたが何とか」
「そっか。後はホシノを助けるだけね」
「ええ。ハッピーエンドまで後少しです。ああ、
今のうちに今後の方針を決めておかなければ。
怪我人の把握と医療品の用意とそれから……」
「医療品なら前に百鬼夜行の生徒を保護した時の
余りが幾つかある。それと……」
ーーー
「いいですかホシノさん。今から現れる五人。
それが貴女が殺す必要のある人間です。彼らを無事
始末できたら報酬を用意しましょう」
「五人……どうせ大した事のない雑魚だけ」
「貴女にとってはその通りでしょうね。……おや、
彼らがご到着した様です。ではホシノさん。
くれぐれも失敗なさらぬ様に」
「分かってる」
悪い大人に利用されている小鳥遊ホシノ。彼女は
自身が気付かぬ内に大切なものを傷つけている事に
気づいていない。この後更に傷が増える事にも……