「……うぇ、凄く埃っぽい……もっと定期的に掃除しておけば良かったよ……」
「埃を吸い込まない様にマスクを着用してから始めましょう。着けてあげますので顔をこちらに」
「ありがとう」
黒服とホシノが居る場所。そこは昔ホシノが一年生の頃利用していたアビドス生徒会室。今になって突然此処を掃除したいと言い出したので黒服は付き添い役としてこの埃まみれの部屋に訪れた。
「何故今更この部屋を掃除するのですか?」
「……そろそろ整理しないとなって。ずっと先延ばしにして来たんだけど今なら向き合えると思ったから……」
「そういう理由なのであれば付き合いましょう。ただし無理は禁物ですからね」
「……うん」
ユメの遺品整理。それはホシノにとっていつかは向き合わなければならなかったもの。様々な経験を得て彼女は決心をした。
「……まあ、意外と大したものはないんだよね。変なものとか学校の鞄とか……あとは手帳くらいかな。だから部屋掃除の方を優先した方がいいかも」
「では私が掃除をしましょう。ホシノは彼女の遺した品の整理をお願いしますね」
「任せたよ」
遺品の数が少ないのは幸いな事である。その分彼女の中の思い出を振り返る事も少なくなるから。とはいえ鞄や変なものに大した思い出はなく問題となるのはこの手帳。『たのしいバナナとり』と書かれたよく分からない表紙には彼女が過ごした日常を細かく記載しているのでホシノにとっては大分酷な内容になっている。
「…………」
ーー○月○日
90時間働いたらお金が貰える! と思って働いてたら騙されてたみたい! その後ホシノちゃんが助けに来てくれた! 良い後輩に恵まれて私は幸せ者だよ!
「……良い後輩なんてそんな筈が……」
ーー△月◎日
今日は一人砂漠でお宝探し! していたら困っている人が居たからお水を分けてあげたんだ。なんだか私を見て凄く驚いていたけどお礼に水族館のチケットを貰っちゃった。今度ホシノちゃんを誘って行こう!
「あの時のチケットは貰い物だったんだ……」
ーー□月×日
前に助けた顔が二つある人と再開したんだ。何処かで先生をやってるんだって! ホシノちゃんにも紹介しようと思ったんだけど用事があるって言って変な機械に乗って帰っちゃった。また会えるといいなぁ
「……顔が二つある人? それってマエさんの事じゃない?」
「マエストロがどうしたのですか?」
「えっと……ほら、この日記の部分に顔が二つある人って書いてあるんだけど……これってそうだよね?」
「少なくともキヴォトスで顔が二つある教師はマエストロしか居ないと思いますが……一体どういう事なのでしょう? これだと私とホシノが出会う前にユメと邂逅していたという事になりますが……」
「先生、今度聞きに行こう。いやむしろ今からでも聞いた方が良いよね。早く行かなきゃ……」
「お待ちなさい。焦る気持ちは分かりますが今はこの部屋の掃除と整理をしなければなりません。この件は花見の時にでも伺いましょう」
「……うん、分かった。何があったのか絶対に聞いておかないと……」
謎が残るまま部屋の掃除と遺品整理は続く