「はぁ……」
「それで340回目のため息ですよ」
「ため息が出るのは仕方がないだろう……ユメ達が花見時に食べる弁当の下準備をすると言って今夜は帰って来ないんだぞ……ただえさえシャーレの仕事を始めて過ごす時間が減っていると言うのに……アロナだけでも居てくれる手前何とか耐えれ……だいぶ厳しいぞ……」
「『いつもお世話になってるから先生達には当日までのお楽しみって事にしたいから今日は帰れないんだ。ごめんね』とユメ……お母さんは言っていました」
「それは理解しているのだが……」
ユメと過ごす内に寂しがり屋へと変貌した大人マエストロ。娘? のアロナが居なければ彼は約束を破りユメの元へ突撃していただろう。
「"やあマエストロ。明日がお花見って聞いたからシロコと遊びに来た……"」
「………」
「"……あ"」
アロナ!?
「喧しいな……もう少し静かに出来ないのか?」
「えっ嘘なんでアロナが箱から出てるの!? ……あ、分かったよマエストロ、さてはホログラムだね? そうやって茶目っ気があるのは良い事だけどそう簡単に騙されるわけが……さ、触れる……"」
「……故障はしませんよ」
「先生よ、あまり私の娘を触るな」
「"あ、ごめん……というか娘って? え? ちょっと何言ってるのか分からないんだけど。説明してくれる?"」
「構わないぞ。丁度話し相手が欲しかった所だ。それに晩酌の相手もな」
「"私は生徒の前でお酒は飲まないよ"」
「そうか……仕方ない、では最近流行っているほんわかメロンミルクでいいか」
「"なんかいやらしい響きだね"」
ーーー
ほんわかメロンミルクを片手に話し始める大人二人と遠くでわちゃわちゃしてる生徒二人。いつもの混沌とは程遠い……かもしれない空間が形成されていた。
「"そっか、アリスみたいにアンドロイドとして実体化を……なんでそうなったの? 確かにアロナは可愛いけどわざわざ……"」
「ユメに頼まれたからだな」
「"本当君はユメに甘すぎるよね"」
「そういう先生もいずれはこうなるのだろう?」
「"どうだろうね……シロコの事は面倒を見るつもりだし嫌われていなかったら……とは思うけど"」
「シロコに嫌われるか……先生には無理難題だな。シロコに限らず先生として生徒に嫌われる様な発言や行動をする事はないだろう」
「"昔ゲヘナの子の脚は舐めたけど……"」
「………」
「"だ、大丈夫。それ以降は特に問題は起こして……ないよね? どうしよう、なんだか不安になってきた……"」
「ま、まあ……私の知る犯罪者よりはマシだろう」
「"今度生徒達に聞いてみよう……私変な事してないかなって……"」
「そういう意識があるなら問題はないだろう……」
「"そうかな……そうだと良いな……マエストロはどうなの? 生徒の脚を舐めたりは?"」
「する筈がないだろう」
「"ユメのは?"」
「あの子は成人しているし生徒ではないからな」
「"……舐めたんだ"」
「………」
「"………"」
「……話題を変えようか?」
「"そうだね"」
「……少し変な質問をしても良いだろうか?」
「"どうしたの?"」
「もし過去を変えれるとしたらどうする? 例を挙げるなら事故で命を落とした生徒を生存させる……とかな」
「"うーん……それって何が問題なの?"」
「過去を変えるというのは今まで積み重ねてきたものを砕くのと同義。仮に変えることが出来たとしてもそれが与える影響も未知数だ」
「"そんな難しく考えなくて良いんじゃない? もし私が過去を変えられるなら生徒の未来を守れる様にするし……君もそうなんじゃない?」
「………」
「"それに君は既に私とシロコに似た様な事をやってるしあの子がまた笑える様になったのも君が介入してくれたおかげ。これって君の過去を変えたという行いが正しいって証明にならないかな?"」
「……そうなのか?」
「"大丈夫だって。何を企んでいるのか詳しくは聞かないけどゲマトリアだからこそ出来る生徒の未来を守る方法を実行すればいいんだ"」
「……そうか。それでいいのか。先生よ感謝する」
「"気にしないでいいよ。……そろそろ夜も遅い。私は寝なくても良いけど君は休んだ方が良いんじゃないかな?"」
「先生も休んでおけ。いくら長時間睡眠を取らなくてもいい身体になったとて最低限人としての在り方を忘れない様にな。来客用のベッドはある。好きに使っていいぞ」
「"ありがとう。それじゃあまた明日"」
「ああ」
ーーー
「"………"」
来客用のベッドは確かにあった。ダブルベッドが一つだけ。
「……ん、先生。私は大丈夫。一緒に寝よう」
「"私は床で寝るから……"」
「ダメ」
「"いくら何でもこれはダメだよ!? 生徒と同じベッドで寝るとか正気じゃない!! スキャンダルで報道されて私の先生としての尊厳が破壊されるぅ!!"」
結局マエストロに頼んでベッドを複製して貰った。
来客用×
アリス達用⚪︎
だからダブルベッドなんですね