ーーーアビドス高等学校 生徒会室
あの出来事から数日が経過した。私がホシノとユメの遺体を担いでこの学校に戻ってきた後、彼女は部屋に篭ってしまった。より不安定な精神になった彼女で実験をしても前より意味のない結果になるだけだろう。
黒服「とりあえずこの遺体はこちらで保存しておきましょうか(生徒の遺体。何かに使えるかもしれないので冷凍保存でもしておきましょう)」
実験の道具…は一番最初に思いついたものの今実行してしまったらホシノの精神を破壊してしまうので今は保存程度でいいのだ。
それより問題なのが私は生徒に対して慰めるような事を行なってきた事がない為、こういう時ホシノにどう接すればより好印象を持たれるかどうかが理解できていない所である。
なんともどかしい。目の前に最大の神秘があるというのに。
黒服「ですが焦っても意味がありません。時間をかけて懐柔すればいいだけの話。今が好機とも言えるでしょう」
精神が疲弊している分付け入る隙があるという事。手はいくらでもある。「悪い大人」のやり方を見せて差し上げましょう。
黒服「ホシノ、起きていますか?軽食を持ってきましたよ」
ホシノ「……要らない」
黒服「貴女は数日なにも食べていないのですよ?何故食べようとしないのですか?何故?」
ホシノ「今は一人にさせて…」
黒服「そういう訳にもいきません。これ以上貴女を衰弱させてはいけませんからね」
ホシノ「一人にさせてよ!」
扉越しに叫び声が聞こえる。何故差し伸べた手を拒絶するのか理解できない。しかしこれ以上接そうとしても無駄だろう。
黒服「食事を置いていきますので後で食べてくださいね。私はしばらく留守にしますので」
ホシノ「……はい」
ーーーアビドス高等学校 資料室
微塵も興味が湧かないがホシノとの今後の為にこの学校について調べようと書物やデータベースを検索して情報をまとめていると事前に知っていた事ばかりであった。
1.かつては数千人の規模だった学園が数十年前から砂嵐が発生
2.対策の為に多額の資金を投入したが事態は好転せずに借金だけが膨らんだ
3.膨大な借金の影響で学園の経営が悪化、地区全体の衰退も止まらずに過疎化が進んでいる
黒服「簡潔に纏めるとこんなところでしょうか。大した情報ではありませんね」
借金の額もとても払えるような額ではない。
利子がなかったとしても数百年かかる計算だ。
黒服「毎月の利子でも…ざっとこんな額でしょう。子供からここまで搾取するとは賢い大人のやり方とも言えるでしょうね」
(ホシノはしばらく休息が必要…少しは助力してくれる大人が居ても構わないでしょう)
ーーーアビドス自治区 銀行
黒服「こちらの支払いを行いたいのですがこちらの窓口でよろしいですか?」
銀行員1「はい。こちらで問題はありませんが…これはアビドス高校の借金による利子ですよね。何故お客様がお支払いに?」
黒服「クックック…無駄な詮索はしない方が身のためですよ?」
銀行員1「し、失礼しました!」
黒服「理解していただけたならいいのですよ。支払いはこちらのカードでお願いしますね」
銀行員1「少々お待ちください!」
これでホシノが休息する時間は確保できた。神秘の為ならばこの程度容易い事だ。
ーーーアビドス高等学校 生徒会室
扉前に置いていた食事がない。食べてくれたのだろうか。
黒服「ホシノ、体調はいかがですか?何か必要なものがあれば…おや?」
扉がわずかに開いている。手をかけて開けたその先には初めて出会った頃のような鋭い目つきの強気な少女ではなく、生気を感じないほど弱々しい少女の姿になったホシノが居た。精神の衰弱と栄養失調なのは明らかだ。
ホシノ「黒服さん…さっきのご飯、ありがとうございました」
黒服「こちらこそ食べていただいてありがとうございます。それでも栄養が足りていないようですがね」
ホシノ「数日何も食べてなかったので……」
黒服「ホシノ?」
ホシノ「……ユメ先輩が死んでしまって……この学校の生徒は私一人になってしまいました」
黒服「そうですね。新しい生徒が来る可能性も0%に近いでしょう」
ホシノ「残ったのは借金だけ……」
黒服「……ホシノ、貴女はどうしたいのですか?アビドスを捨てて別の学園に転入する事も可能です。ここに拘る必要もありませんよ」
ホシノ「そうかもしれませんね……それでも私はユメ先輩が居たこの学園から離れたくないです。どれだけ苦しくても…先輩が居たこの場所を守りたいんです」
黒服「それが貴女の選択なのですか?自ら茨の道に進むとは理解し難いですね。とても現実的ではないように思いますね。楽観的に考えすぎかと」
ホシノ「そうかもしれませんが…それでも…」
黒服「ですのでしっかりと目標を立てていきましょう。まずはその弱った身体を元に戻す所からです」
ホシノ「……協力してくれるのですか?どうしてそこまで…」
黒服「簡単な事です。私は顧問であり大人ですからね。困っている生徒には手を差し伸べて当然でしょう?」
ホシノ「黒服さん…」
黒服「始めましょう。貴女と私の物語を」
透き通るような世界。この日一つの小さな学校で新しい委員会が設立された。
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例えばこんなゲマトリア
第1章 黒服とホシノと対策委員会 開幕