砂に埋まってから数時間が経過した頃。未だに発掘されずに放置されているマエストロ。そろそろ退屈でどうしようもなくなってきたのでどうにか脱出しようとするも身動き一つすら取れない。
「(口を開こうとすると砂が入ってしまう……それもこれも全部あのババアが悪いんだ。生徒から好かれているからと言ってあまりにも調子に乗り過ぎている……)」
ベア先生の事をババア呼びに変えてしまう程彼女に苛ついている様子。そんな彼の苛つきを助長するかの様に頭上から騒音がし始めた。
「(今度はなんだ!? そういえばこの砂漠には預言者が居る筈だったな……丸呑みされて終わり、なんてオチになるのは勘弁だぞ……)」
嫌な想像をしつつも音は鳴り止まない。それどころか徐々に大きくなっていき想像が現実になっている様な……
「……らの……がす……よっ」
微かに声も聞こえてきた。まさか救助の人間が来たのか? 恐らく先生辺りが呼んできてくれたのだろう。ババアとは違い頼りになる大人だ。であれば声を出して場所を特定させる必要がありそうだ。多少砂が口内に入ろうとも致し方ない。
「おーい、私は此処にい……」
ガァン!?
ーー声よりも先に鈍い音が響き渡る方が先だった。上から「やった! 遂にお宝を見つけたんだ!」と無邪気な声が聞こえてくる。何はともあれ助かったようだ。
「何だろうこれ? ぜんまいかな? とにかく掘り起こしてみようっと!」
「……誰がぜんまいだって?」
「えっ」
………
「ひぃん!? このぜんまい喋った!?」
「だから私はぜんまいではな……!?」
訂正するべく声の主と向き合った際に目線があったのは紛れもなく探していた人。……何故かスク水を着ているがユメだった。
ーーー
「……そんな事があったんですね」
「ああ……」
「……とはいえ偶然とはいえ助けられて良かったです! 良ければこの後お家まで付き添います!」
「気持ちは有難いがそこまでユメの世話を焼かせる訳にはいかない」
「そうですか……あれ、私貴方に名前名乗りましたっけ?」
「(しまった、つい言ってしまった…)あ、ああ。実は私は教師なんだ。殆どの生徒の顔と名前なら記憶に入れている」
流石に苦しい言い訳だろうか……実際私は自分が担当している学園以外の生徒は知らない。そこを漬け込まれたら……
「………」
「………」
「先生だったんですか!? あっ、ようこそアビドスへ!! 知ってると思いますが私は梔子ユメです! アビドスの三年生であり生徒会長なんです!」
「……疑わないのか? 私が嘘をついている可能性だってあるのではないだろうか」
「よく見たら胸元に免許みたいなものがありますし……それにこう見えて私人を見る目はあるんです! ……この前騙されて後輩に迷惑をかけちゃったけど……」
「そうか……その騙してきた奴に何もされていないか? 例えば猥褻な行為を強要されていたりは……」
「それはないです。えっちな事は好きな人としたいなって夢があるので!」
「良い夢じゃないか。それを叶える為にも自分の身体は大切にしないとな。……その絆創膏が全部剥がれるくらいにな」
「……そうですね。でも私はアビドスの借金を返さないといけないから……えっちな事はやりませんが肉体労働でもやらなければ利息すら返せないんです」
「借金か……なあ、良ければ私も力に……」
「先生に迷惑をかける訳にはいきません。これはアビドスが、私が抱えている問題ですので」
「……分かった。念の為に私と連絡先を交換しておこう。ユメの相談相手程度にはなれるだろう」
「いきなり連絡先だなんて……もしかして先生私の事を口説くつもりですか?」
「確かにユメは好みだが私には妻も娘も居る」
「そうだったんですね。……あ、じゃあ私が家まで付き添ったら奥さんに浮気だー! って思われちゃうかもしれませんね。では先生、また今度会いましょうね! それじゃあ失礼します!」
「あ、ああ……」
あれが高校三年生のユメ……なんて……なんて素晴らしいのだろうか。正直な話高校生に手を出すなんて頭がおかしいと思っていたがいざ目の前にJKユメを見てしまったら揺らいでしまった。くそ、まさかこんな理由で私も教師として駄目な道に進んでしまうところだった。
「……待て、冷静になって考えると過去のユメと接触したのはタイムパラドックスが起きてしまうのでは? ……多少は致し方ないか。とにかく先生と合流するかあるいはタイムマシンを見つけなければな……」
ユメの日記にマエストロの事が書かれていた原因