あれは昔の話です。私がアリウスの子達の巣立ちを見届けてから生徒の育成に時間を費やそうと考えていました。母性というのは恐ろしいもので搾取しようとした子供達が愛おしくて堪らなくなってしまった。かつて私が抱いていた崇高に自らが遠ざかってしまう愚行。それでも手元に残ったアリウスの生徒達と撮った写真には崇高と同じ……いえ、それ以上の価値があると考えていました。その後私は教員免許を取得する為に暫くの間連邦生徒会に接触し、ゲマトリアが教師になるという前代未聞の偉業を成し遂げました。当然壁はありましたよ。最初の一週間は『見た目が怖すぎる』という理由で門前払いされましたからね。アリウスの子達が署名をして助力してくれなければ私は今頃ニートにでもなって自堕落に過ごしていたでしょうね。そうして免許を得た私が担当する事になったのはゲヘナ学園。問題児が多いとの事ですがアリウスを改心させた功績を上げた私にしか任せられないと。まあ良いですとその場を後にしてゲヘナに向かった初日に事件が起きました。
「此処がゲヘナ学園……アリウスの何倍も大きい自治区ですね……ん?」
小さな生徒が私を見るや否や走ってきて……抱きついてきたのです。それはもう力強くぎゅっと。
「貴女を待ってた。……お帰り、先生」
そう言って微笑んでくる彼女……空崎ヒナに私は一目惚れしました。その時理解したのです。私はこの子に会う為に外の世界からこの箱庭に来て、悪い大人の道ではなく彼女達を導く先生としての道を歩んだのだと。これが私とヒナの初めての出会い、そして私がヒナ狂いになった日でもあります。
「つまり私は過去のヒナに出会い何故最初から好感度が高かったのかを確かめたい。その一心でタイムマシンに乗り込みました。……そして偶然にも此処はゲヘナ学園。そう、近場なのです!」
なんて都合の良い時間移動なのでしょう! これはまさに天が私の味方をしてくれていると言っても過言ではないですね! さてさて早速ヒナに会いに行くとしましょうかね!
「止まって」
「………」
わーお(おば)こんな奇跡が起きても良いのでしょうか!? 今私の目の前には一年生の初々しくて可愛くて愛くるしいヒナが居るのです!!
SHI☆KA☆MO☆銃をこちらに向けています! つまりまだ信用度が殆どない! ヒナにもこんな頃があったのですね……正直不安でしたよ、私と出会う前に他の人に甘えているだなんて事があったらと……ですがこの雰囲気のヒナは間違いなく人に甘える事に抵抗を持っているタイプのヒナです。街構いありません。
「見るからに怪しい人だけど……何しにきたの?」
「私ですか? 私は貴女にに会いに来たのですよ、空崎ヒナさん」
「私に?」
「ええ。貴女が大好きですので」
………
「なっ……何を言っているの……? 私なんかが大好きだなんて……」
「おお、自分に自信がないヒナとはこれはまた珍しい……とても可愛いので抱きたい……のですがそれは後でじっっっくりと堪能するとして今は優先するべき事があるでしょう。ズバリヒナを褒め続けようのお時間です!」
「何なのこの人……」
とても引かれているものの警戒心は溶けた……というよりも警戒する必要がないと判断したのか銃を下ろして困惑するヒナと彼女の頭を撫でつつしれっとヒナの部屋にお邪魔しようとするベア先生。好きなものの為に狂うのは彼女のお約束。
ヒナにヒナが如何に可愛いかを伝え続けるベア先生と初めて出会った変な人に自分の長所を言われ続けて恥ずかしいという思いと何故そんな事を知っているのかと更に困惑するヒナの図