「……あら?このような記録は今まで存在していませんでしたが……なるほど。これも体験したいのですね?」
「"い、いや……一度休憩を……"」
「ちょっとお時間をいただく程度ですから大丈夫です♪」
「"待って……!まだ仕事が残って……"」
ーーー
ホシノ「………」
小鳥遊ホシノは天井のシミを数えている。彼女は今キャパシティがオーバーフローしている。
ホシノ「………」
時刻は午前1時。スマホを片手に持ちただぼうっと過ごしている。こうなってしまった原因は数時間前に起きたとある出来事が関係している。
ーーーエピローグの終盤辺り
ホシノ「……好きだよ」
彼の背中を見ながらそう頭の中で呟いた。面と向かって言うべきなのだろうけど今の私にはこれが限界。誰かを好きになるその感覚を知れただけで充分だった。
黒服「………」
先生は何も言わずに歩いている。その後ろ姿についていけるだけで……
黒服「私もですよ」
ホシノ「うぇ?何が?」
不意に声を掛けられてつい変な声で返事をしてしまった。
黒服「ですから……私も貴女の事が好きですよ、ホシノ」
ホシノ「……ヒェ」
ーーー現在
ホシノ「」
正直そこからの記憶がない。どうやって帰ったのかも、いつパジャマに着替えたのかも覚えていない。今となっては心の中で呟いた言葉が何故聞こえていたのかもどうでもいい。
『貴女の事が好き』その言葉だけがずっと脳内を彷徨っている。そこから更に2時間程経過したところでようやく少し落ち着いた。
ホシノ「夢……じゃないよね」
言われてからの記憶がない。即ち夢オチという可能性もある訳で……
ホシノ「……確かめたい」
時刻は午前3時。床に脱ぎ捨ててあった制服を着て夜中の学校に向かった。月の光に照らされながら静寂に包まれた通学路を1人歩く。
ホシノ「夜に学校に行くのも2回目だねぇ……あの日もこんな感じで静かだったなぁ……およ?」
学校に到着した時、1つの教室に明かりが付いている事に気づいた。あの場所は先生の部屋。もしかして起きてるのかな?
ホシノ「夜遅くまで頑張ってくれてるんだねぇ。……うへへ」
そういう所も好きになった理由の1つなんだよね。……なんて私には似合わないね、なんて考えながら上履きに履き替えて廊下を歩いている。教室を覗くといつもの優しい表情とは違って真剣な顔で机に向かい何かの作業をしている先生が居た。
ホシノ「(……なんだかいつもよりカッコよく見えるね。あっ)」
黒服「ホシノ?」
先生と目が合う。椅子から立ち上がり近づいてくる先生。一歩、また一歩と距離が短くなるにつれて心臓の鼓動が早くなっていく。
黒服「こんな時間にどうしました?」
ホシノ「え、えっとね……先生に聞きたい事ががが……」
緊張で呂律が回らない。先生に変な子だと思われたらどうしよう……
黒服「……とりあえず部屋の中へどうぞ」
ホシノ「あっ……うん」
慣れ親しんだソファーに腰をかけて深呼吸をして落ち着こうとしたけれど中々落ち着かない。むしろ先生と夜に2人きりという事実が余裕を無くして逆効果だった。
黒服「それで話というのは?」
ホシノ「え、え、え、え、え、と、せ、せせ先生は……」
黒服「落ち着いてからで大丈夫ですよ。ですが……その反応から察するに昨日の事でしょう?」
ホシノ「そ、そうなの。ほら、気づいたらベッドの上に居たからさ。その……夢オチかなって考えちゃって……」
黒服「……仕方ありませんね。改めて伝えておきましょう。……貴女の事が好きですよ」
ホシノ「………」
黒服「ホシノ?」
ホシノ「……困っちゃうよ。こんなに良い夢を見ちゃったら起きた時に泣いちゃうかも」
黒服「困る必要なんてありません。これは現実ですからね」
ホシノ「……本当に私の事が好き……なの?」
黒服「はい。勿論異性として、ですよ」
ホシノ「……駄目だよ先生。これ以上は冗談じゃ済まされなくなっちゃう……」
黒服「私は本気ですよ」
ホシノ「……幸せすぎてどうにかなっちゃいそうだよ……ありがとう先生」
黒服「こちらこそ。生まれてきてくれてありがとうございます」
ホシノ「……ねえ先生」
黒服「どうしました?」
ホシノ「……大好きだよ」
黒服「ええ。知っていますよ」
要望があれば続きを書きます。