ベア先生という暴走機関車を無事に制圧したので改めて過去へ向かおうとするマエストロと先生。
「待ってください」
それを制する黒服が一人。彼はあまり過去に介入するのを良く思っていないようで……
「なんだロ……黒服よ」
「今ロリコンと言いかけましたね? 軌道修正したので今回は多めに見ます。それはそれとしてマエストロ、貴方は過去のユメに接触して何をしようと言うのです?」
「彼女が亡くなってしまった理由を知りたい、それだけだ。それの何処に問題がある?」
「先程先生と話していた際にですね、『ユメと接触した』と仰っていたのですよ。……まさかとは思いますが歴史を変えようとしているのではないでしょうか?」
「……それの何が悪い。何事も幸せな終わりを迎えた方が良いだろう? それにホシノにとっても『本物』の先輩が生きていたと知ったらより幸福な人生を歩むのではないだろうか?」
「ええ。ホシノにとってはそうでしょうね。ですが貴方達が下手に過去に干渉する事で私とホシノが積み上げてきた根幹部分が崩れてしまう可能性がある。私が本格的に彼女の教師という皮を被り始めたのはユメの死体を目撃して病んだ所を励ました事がきっかけ。……こういう言い方はしてはいけないと理解していますが私にとってはユメは死んでいた方が都合が良いのです。……私はもう星を見失いたくない」
「………」
「それ以外の部分は好き勝手にやっていただくのは構いません。そこはご理解頂けると幸いです」
「……善処する」
「"そこまで心配なら黒先も来る? 実際に見張っていた方が君も安心すると思うけど……"」
「そうしたいのは山々ですがヒナの様にホシノがなってしまう可能性もありますし何より私がホシノから長時間離れたくないので」
「"そっか。……君に言うのもおかしな話だけど……ホシノを大切にね"」
「言われずとも大切にしますよ」
「"うん、君ならそう言うと思ったよ"」
「では二人共、お気をつけて」
「ああ」
そうして二人はまた過去へ向かった。その場に一人取り残された黒服は今後について考えている。自らを軸に回る星の軌道が逸れるその時が来たらどうするべきか。……その様な事態が起こらない事を願うばかりであった。
「お洒落な言い回しっぽく聞こえますが少し意図が伝わりにくいですね。ゲマトリアだから難しい言い回しをしようと努力をしたのは認めますが残念ながらあまり評価は高くないですよ」
「何故貴女はいつも気付かぬうちにそばに居るのです?」
「私に移動能力を与えたのは他でもない父ですよ」
「そうでしたね。本当、実に優秀な娘に育ってくれました。まだ一年にも満たない時間しか過ごしていないにも関わらず」
「その分濃い時間ばかりでしたね。暫くはのんびりと家族四人で過ごしていたいです。あ、それと父と二人で出掛けたりもしたいです」
「四人でというのは魅力的な提案ですが二人きりとなるとホシノが認めてくれるでしょうか?」
「そこは説得しましょう。たまには娘孝行をしてください」
「仕方ありませんね……考えておきますよ」
「何なら今から二人きりで帰り道を……」
「それは難しいですね。丁度今ホシノから『早く帰ってきてね』と連絡が来たので即刻帰宅しなければ」
「……初めて母が嫌いになりそうです」
「反抗期ですか……また随分と人間らしくなってきましたね」
「まあいいです、さっさと帰りましょう。そして一緒にお風呂に入りましょう」
「娘と混浴するのは避けておきたいです」
その後談笑しつつ帰ろうとしたがケイを見つけたユメに引き止められて黒服だけ一人で帰ったのだとか。何処までも扱いが悪い男黒服……
ーーー
一方こちらは過去に訪れたマエストロ一行。相変わらず砂漠の中心とも言っていい部分に着陸したので方向感覚が狂いそうになっている先生と異形なのでそこまで暑さを感じないマエストロ。
「"どうして私も身体の半分くらいはゲマトリアっぽくなってるのに暑さを感じるの? 理不尽じゃない?"」
「半分人間なのだから神経や感覚はないと人の定義を見失った存在になるぞ。……さて、それはそれとしてユメを探しに……」
「"それならあっちの方に居るよ。ほら、水着で砂掘ってる"」
「何をしているんだ??? しかもホシノまで居るではないか……仕方ない、バレないように様子を見るとしよう」
結局この二人はユメ達が水着で砂を掘る姿を数時間観察したとか。……ちなみにマエストロの手元にあったメモ帳には『サイズは変わらず。揺れは凄まじい。これは芸術である」と明らかに酷い内容のメモが残してあったとか……