ーーあれは砂漠のオアシスと呼ぶに相応しい存在。……いや、女神とでも言うべきだろうか。汗で濡れ、そして揺れる。その汗に溺れたくなる衝動に駆られたくなるが冷静に観察しなければならない。
「"それ記録だよね? どう見てもマエストロの癖をバラすだけになるからちゃんと書いた方がいいよ"」
「光る汗とスク水とユメの揺れる胸以外を記録する必要があるのか?」
「"それで喜ぶのは君だけだと思う。絶対後で見返して愉悦に浸ったりするんでしょ?"」
「これはただ記録として残すだけだ。それにスク水での行為は既に……」
「"マエストロ? 君今とんでもない事を暴露しかけたね? 成人した女性にスク水を着せるとか……"」
「スク水ならまだメジャーな方だろう。他には……」
「"言わなくていいよ。今君の癖については重要じゃないしそれよりもユメの観察をしないと"」
「だが今は夜だ。尾行するにしてもこのままではストーカーと勘違いされて目立ってしまう可能性があるぞ」
「"スク水の女子高生を観察してる時点でもう終わってるよ"」
「一理あるな。だからこそ今ユメをつけている訳だが」
この二人、既にストーカーになっていた。悪びれもなく女子高生に対して行って良いものではないものの「ユメの為だ」の一点張りで正当化をしてしまっているので誰にも止められない。
「"でも……確かにユメがいつ襲われるのかを調べるのは大切だけど何も夜にまでストーキングしなくても……"」
「馬鹿を言うな。まだユメの全てを覗けていないのだぞ? もっと堪の……いや、監視する事に力を入れるべきだ」
「"マエストロは本音を隠す練習をしよう?"」
「それにシャーレの先生が近くに居るなら合法ではないか? シャーレは何でも出来る権限があるのだろう?」
「"二年前ならまだ就任前じゃない? 流石に適応されないと思うよ。それにシャーレの権限は私利私欲の為に使うじゃないよ"」
「使えない奴だな」
「"やけにトゲがある言い方が多いね……ユメの事になると君はいつもこうなるの?"」
「ユメの性格を知っている人ならばよく分かる。彼女は私が護らなければ悪い大人に貞操を奪われてしまうかもしれない」
「"君か今やってる事はその悪い大人がやる事と大差ないんじゃないかな"」
「先生も同罪だぞ?」
「"私を共犯者にしないで"」
「過去に行こうと駆り立てたのは先生だぞ?」
「"何だかとっても既視感ある状況ではあるけど……まあいいや。とにかくこうなったらとことんユメをストーキングしようか"」
「違う守っているのだ」
「"はいはい"」
頑なに守っていると言って譲らないマエストロと大人の対応をする先生のユメ観察は続く。……途中何度もマエストロがユメと接触しようとして観察の域を越えようとしたので先生は呆れたのだとか。
ーーー
一方現代、ゲヘナの一室。空崎ヒナの過剰摂取により精神に異常をきたしていたベア先生が平常心を取り戻した頃……
「もうあそこには行くな、ですか?」
「うん」
「もうヒナサンドを経験出来ないと……?」
「うん」
「しかしヒナサンドというのは……」
「空崎ヒナは私だけで充分。二人もいらない、そうよね?」
「言ってしまえばあれもヒナ本人で……いえ、貴女がそう言うのならばヒナサンドはもう諦めましょう。一度経験しましたからね。……しかしですね、何故ヒナの目に涙が流れた後があるのかを知りたいのですが……」
「24時間」
「え?」
「前に約束したよね。どんなに離れていても忙しくても絶対に24時間以内には連絡するって」
「あっ……」
「この約束だけは破らないで欲しかった。私ね、初めてマザーが嫌いになりそうなの」
「そっ……それは困ります!! どうか嫌いにならないでください!! 私の崇高は貴女なのです!! ヒナに嫌われたら私は自殺します!! 分かりました、今腹を切って詫びを……」
「それはやめて。でも詫びる気持ちがあるなら……分かるよね?」
「まさか……ですが今はアレを切らしています。今買いに行くのでその間は……」
「そんな時間要らないよね?」
「ヒ、ヒナ!? 何故獲物を見つけたかの様な目で……お待ちなさい、私は腐った果実ですよ!? ヒナ!! 一度冷静にな……ちょっとだけお待ちください!! 時間を開ければ落ち着く筈で……あーヒナ!?
ヒナ!! ヒナァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァ‼︎⁇⁉︎」
ーーこの日以降空崎ヒナは捕食者になったそうです