「ねえホシノちゃん……勝手に抱き枕にしたのは悪いと思ってるけど……病み上がりの私に対して長時間の説教は酷いよ……」
「先輩が悪いんですからね。私と先生の仲を引き裂こうとしたのですから。むしろ説教程度で済ませてあげた事に感謝してください」
「先生? ああ、あの顔が二つある人の事かな。いつの間に知り合っていたの?」
「その人じゃないです。いいから早く先生に謝って誤解を解いてください。そこに座っている人です」
「あの黒い人がアビドスの先生なの? あっ確かにアビドスカラーのネクタイとホシノちゃんが着けてた腕章と同じやつ……あれ、もしかしてホシノちゃんの事が好きすぎて形から入っちゃった感じの人なのかな?」
「とにかく謝ってください」
謝る……謝る? 今初めて会った人に? そもそも何を謝ればいいの……? ホシノちゃんを抱き枕にした事? まさかとは思うけど「ホシノは私が抱きしめて寝るのがルーティンなのです。それを崩した事に対して謝罪してください」とか言われるのかな……流石にあり得ないかな……うん、あり得ないよね。
「ねえホシノちゃん、この先生の名前すら知らないんだけど……初めましての方だよ」
「その人は黒服。私の旦那です」
「へえ、変わった名前で……」
………………………………
「はい?」
今ホシノちゃん変なこと言ってなかった? 旦那? 先生が旦那? 待って待っておかしい。ちょっとアビドスを留守にしてる間に何があったって言うの? どうして可愛い後輩がこの人外と結婚してるの? そこまで私の脳を傷つけたいのかな。まるで寝取りの様な気分になってきたんだけど……まあ女の子同士だから結婚は出来ないけど……
『私が先日連邦生徒会に同姓の結婚を許可する申請書を提出したのでユメホシも可能ですよ』
そうなんだ……待って今の赤い人誰? 人の思考に勝手に入って来ないで? 見るからに悪人顔だったけど……まあ今はいいや。それにホシノちゃんの事は好きだけどLOVEじゃなくてLIKEの方だし……
『ですが案外貴女がホシノを押し倒せば受け入れてくれると思いますよ? まずは試してくれませんか? 録画は任せてください』
だから貴女は誰なの? 勝手に干渉してないで? ……これ以上思考ががぐちゃぐちゃになる前に話そう……
「せ、先生? えっと……ホシノちゃんと一緒に寝てごめんなさい!」
「ぐはっ!?」
「ひぃん!?」
謝った途端に何かを吐いて咽せる先生? は見た目も相待って恐怖しか感じなかったよ……この人が本当にアビドスの先生なのかな……いや待ってダメだよ、人を見た目で判断したら! だってホシノちゃんが心を開いている大人なんだよ! つまりお墨付き!
「失礼しました。昨日つい飲み過ぎてしまいまして。慣れない事をしたので思わず吐いてしまいました」
どうしよう、この人病み上がりの私よりも体調悪そう……やっぱりあれかな、借金を返す為にホシノちゃんと働いていてまともに寝れてないのかな……
「貴女の事はホシノから良く聞いております。事情も把握済です。……然し一つだけ不可解な点があるので教えて頂きたい。……貴女はホシノの事を愛しているのですか? 寝取る気は?」
「えっ? 寝取るって何? 後輩としては愛してるけどホシノちゃん自身の恋を邪魔したりとかはする気はないよ」
「LOVEではないのですか?」
「LIKEの方だよ」
「……では昨日ホシノを抱き枕にしていた理由についてはどう説明をつけるおつもりで?」
「あれは無意識のうちにやっちゃっただけでそういう気はないよ。それより私からも質問させて。さっきホシノちゃんが貴方の事を旦那って言ってたけど……」
「はい。私はホシノの旦那です」
「………」
「ちなみにあちらの椅子に座っている二人はホシノの娘です」
「どうも」
「おはようございます!!」
……スゥゥゥゥ……よし、一旦落ち着こう。一個一個整理して考えるべきだよね、うん。まずは目の前に居る人は恐らくアビドスの先生で間違いはない。名前は黒服……それ本名じゃなくない? それとホシノちゃんの旦那……
「こんなの落ちつけるかーー!!??」
なんなのこの状況は!? 色々聞きたい事があるけど何から聞けば良いのか分からなくなってくるんだけど!?
「どうしてこうなったの!? 私がホシノちゃんを仕事だからって放任し過ぎたから!? それとも寂しくさせてつい出来心で……って感じだったの!? だとしても娘まで産まれていてあんなに育っているなんてもしかして二人は幼馴染……にしては歳が離れ過ぎてそうだし……あっまさかアビドスの借金を返す為にホシノちゃんが夜のお仕事をしてその時にデキ婚しちゃったの!? 私が砂漠にお仕事している数日の間に何があったの!?」
「先輩、二年です」
「えっ」
「先輩が砂漠に行ってから二年が経過してます」
「えっ」
「それと夜のお仕事はしていません」
「良かった」
「あとデキ婚じゃなくて純愛です」
「えっ」
「あとあの二人はアンドロイドです。私が産んだ訳ではありません」
「えっ」
「ついでに……」
「ホシノ、一旦止めてください。ユメが思考を放棄しております。彼女が記憶を整理している間に抱きしめさせてください」
「うぇ、もうしょうがないなぁ〜先生は甘えん坊さんなんだから〜♡」
イチャイチャイチャイチャイッッチャイッチャイチャイチャ
「………」
何なのこれ……