「……という訳で過去から連れて来たんだ」
「連れてこられたんだー!」
「……過去からってまた随分とぶっ飛んだ事をしてるわね……既に色々やらかしてるし今に始まった事じゃないけど」
「受け入れられちゃう私達も私達でどうなのでしょう……」
「ん、細かい事なんて気にしたら負け。それよりも私とあっち向いてホイをやるべき」
「シロコ先輩のその台詞、随分と久しぶりに聞いた気がするわ……いや違う、私達の出番が少なすぎてそう感じるだけじゃない!? ちょっと黒服! もっと私達と絡みなさいよ!!」
「そう言われましても家庭を持った手前そちらを優先せざるを得ないと言いますか……」
「それなら仕方ないわね……ってなる訳ないでしょ!? ただえさえ今アビドスがおかしい状況なんだから先生としての責務を果たしてよね!!」
「善処します」
「……とにかくこれから私達と一緒に過ごす先輩の事を宜しくね。じゃあ私は先輩と行く所があるから」
「え、デートの誘い? 急にそんな距離を詰めてくるなんて……」
「馬鹿な事言ってないで早く来てください」
「はーい」
後輩ちゃん達に詰められて頭をシェイクされている黒い人を他所に私はホシノちゃんに着いていった。その目的地は生徒会室。たった数日放置しただけでは溜まらないであろう埃っぽさを見て二年経ってるんだなぁ……って認識しちゃうね。やっぱりドッキリとかではないんだなぁって。
「こんな所まで連れて来てどうしたの?」
「……ごめんなさい」
「え?」
「ごめんなさい……あの日私も着いていけば……先輩が一人で砂漠に行くのを止められたなら……私がもっと強ければ……」
「………」
ーーああ、そっか……あの日の選択は間違えていたんだ。私はこの子を一人残して……全てを押し付けちゃったんだ。二年……だもんね。黒い人が側に居てくれたから多少は大丈夫だったかもしれないけど……ずっと心の中で抱え込んでいたんだろうね……私を救えなかった事を……日常生活を過ごしていても心には小さな穴が空いていたんだ……
「ごめんね。私は先輩失格だよ。ホシノちゃんの事を形だけでも守ったつもりだった。けれど心までは守れなかったんだ……情けないよね」
「そんな事ないです。貴女は私にとって唯一の……大切な先輩です。失格だなんて言わないでください」
「でも私はホシノちゃんをずっと悲しませた。心に深い傷を負わせたんだよ。あの日私が一人で解決しようとしたから……だからホシノちゃんは何も悪くないんだよ」
「いえ、私が悪いんです」
「違う私が……」
「私です」
「………」
「………」
「じゃあ……どっちも悪かった事にしよっか」
「……そうしましょう」
「ねえホシノちゃん」
「何ですか?」
「ただいま」
「……お帰りなさい、先輩」
「……あれー? 二年経っても泣き虫なのは変わってないのかな? そうだ、私の胸を貸してあげるから思う存分泣いちゃって!」
「眼に埃が入っただけなので必要ないです」
「なんて冷たい塩対応……それでこそホシノちゃんだね。寒暖差をしっかりと感じれる最高の後輩ちゃん……」
「馬鹿な事を言ってないでさっさと戻りますよ」
「えーもうちょっと二人でいようよー後輩ちゃん達は可愛いしもっと話したいけど泣いてるホシノちゃんを慰めるのは先輩である私だけの特権なんだよ!」
「違います。今は先生だけの特権です」
「そんな硬い事言わないでよ〜」
「いいから戻りますよ?」
「つれないなぁ……あ、じゃあ手でも握って戻ろっか。先輩の手の温かさに驚くといいよ!」
「……じゃあ失礼します」
ぎゅっ
「どう? あったかいでしょう! ほっかほかでしょう!」
「……むしろ熱いくらいです。本当に……熱くて……」
「えっあっ……ど、どうしたの!? もしかして冷たい手の方が良かった!?」
「暖かい方が良いです……ずっとこのまま……」
こうして貴女の手を……あの日の冷たくなった手を握った記憶を溶かす様に握っていたい……
ガン泣きホシノさん+困惑するユメ先輩
扉越しに後方理解者面をしている黒服