『ホシノを誘拐した?』
「誘拐というか着いてきちゃったって言うか……お風呂場に髪の長いホシノちゃんが居たから抱きついたらこうなっちゃった」
『ああ、そのホシノは偶然迷い込んだホシノですね。お風呂場にある扉から送り返せるのでなるべく早く元の場所に帰してあげて下さいね』
「はーい。……偶然迷い込んだホシノちゃんって何? ……あっ、通話切れた……」
謎のパワーワードを残して切れた通話と抱きついて離れないホシノの頭を撫でつつ今後の事を考え始める。考えた結果とりあえず夕飯を一緒に食べる事にした。椅子に座って待機していたホシノに手料理を差し出すともぐもぐと食べ始めている。なんだか小動物みたいで可愛い、とか思ってしまうと昔みたいに怒られそう……
「美味しいです」
「ありがとう。もっと食べる?」
「貰います」
うーん素直、この子お持ち帰りしちゃおうかな? って既にしてたね。とりあえず何か話題を振ろうかな。
「実は私二年前から連れてこられたんだ」
「二年前?」
「そうそう。砂漠で瀕死になって気がついたら二年後! って感じだったから実感はないけど」
「……まあ、こっちの黒服ならやりかねませんね。いつも変な事をしているし」
「そうなんだ……こっちの黒服って事は……どういう事?」
「上手く説明は出来ないんですがとりあえずもう一つ似たような世界があるんですよ」
「よく分からないよ……」
「ようは髪の長い私がいる世界と短い私がいる世界があるんです」
「分かりやすい例えをありがとう。まあ他の世界とかそんなの関係なしにホシノちゃんはホシノちゃんで私の大事な後輩である事には変わらないと思うんだ。だから思う存分甘えてくれていいよ!!」
「……じゃあ遠慮なく」
「わ、わーお。やっぱりこの子素直すぎるよ。そういう所も可愛いね☆ 自分から言っておいてなんだけどまずはご飯を食べてからにしようね!」
ーーー
「という訳で明日の朝まで一緒にいる事にしたよ」
『私の話を聞いていましたか? なるべく早く元の場所に帰すようにとお伝えした筈ですが』
「先生には悪いけど……私はホシノちゃんの先輩だから。見るからに疲れてそうな後輩を放っておけないんだよ」
『それなら仕方ないですね。思う存分甘やかして元気にしてから帰してあげましょうね。……ついでに私への好感度も上がってくれれば万々歳なのですが』
「一応ホシノちゃんに先生の功績を伝えておくね」
『貴女は女神ですか?』
「それは大袈裟だよ、じゃあ切るね。……お待たせホシノちゃん」
「問題ないです。……ちなみに誰に電話をしていたんですか?」
「保護者……? かな。とにかく問題ないって言われたから今夜は泊まっていって! ほら、鯨柄のパジャマもあるよ! 私用のサイズだからぶかぶかかもしれないけど」
「そうですね。かなりぶかぶかです」
「もう着てる!? でも可愛い〜♪ 写真撮っていい? というか撮るね。はいチーズ!」
「……ピース」
「うん、良い感じ! これは後で携帯の待ち受けに設定しておくとして……大事なお話しよっか」
「大事な話?」
「その目の隈について教えて」
「………」
「私を求めてくれた事を考えるに君の状況は何となく理解出来てる。もしかしなくても夜の見回りをしてまともに寝てなかったりするよね?」
「……アビドスの治安の為ですから。私が見回りをするしかないんです」
「だとしてもダメだよ! お肌だって荒れてるし年頃の女の子なんだから身体を大事にしないと!」
「年頃って……既に先輩と同い年ですが」
「そうだった……時の流れは残酷だね……あれだけ可愛がっていた後輩に歳を追い付かれるなんて……とにかく夜の見回りについては私が何とかするからそこのベッドで寝て! 今すぐに!」
「そう言われても私は……」
「私を抱き枕にしていいから!」
「寝ます」
「素直でよろしい!」
こうして私に甘すぎるホシノちゃんを眠らせる事に成功した。おっぱいに顔を埋めて小刻みに震えている所を見るとこの子も色々背負っているんだなぁ……って感じたんだ。……そうそう、夜の見回りに関してはさっき先生に相談した所『ホシノの為ならば』と快諾してくれたよ。良い関係を築いていけそうでこっちのアビドスは安泰だね☆
「……先輩、時々こうして泊まりに来ても良いですか? こうしていると安心して眠れそうで……」
「ホシノちゃんの頼みなら喜んで」
まだまだ話し足りない事もあるけれど……今後もこうして会うのなら今急いで話す必要はないよね。とりあえずは今日という長い一日を終わらせよう。……あ、ちょっと身体が痛くなってきた。そうだった、私病み上がりだった……
ひと段落したのでそろそろアビドスじゃない学園の話に切り替えようかなと思い始めてきました