あの後アッちゃんから本当に逃げようとしていたんですよ。しかしですね、彼女達の結束が強すぎるので数秒もしない内に囲まれていたんですよ。
「ベアトリーチェ……!! 貴様よくもあれだけの事をしておいて私達の前に顔を出せたな!! 姫に接触して何をするつもりなんだ!?」
「姫? ……私に言われるのは嫌だとは思いますが公共の場でその様な呼び方をするのは少々……やめた方が宜しいかと思います」
「何……? 皆、姫呼びはおかしい事なのだろうか?」
「リーダー……」
「……とにかく貴様を見つけた以上悪事を働く前に始末させてもらう。私の大切なものを守る為に」
サッちゃん……なんてカッコいい……ではなくて。何ですかこの状況? 突然アリウスの四人に殺意を向けられたかと思えばいきなり困惑しているのですが。あ、なんか急に撃たれた部位が痛くなってきました。黒服もこんな感じなのでだったのでしょうか? 急に撃たれてロリコン呼ばわりされるなんて少し同情しますね。……あ、待ってください。今冷静になって考えたらこの状況ってかなり不味いのでは? ヒナにこの怪我を見られたりでもしたらこの子達の命を奪いかねません。ここは穏便に済ませ……
「皆様積もる話もあるでしょうが……ここは一つ穏便に済ませましょう。ほら、あちらにある海の家で食事でも堪能しながら……ですのでミッちゃん、そのロケットランチャーを降ろしてくれませんか? ヒーちゃんもお腹が空いていますよね? 今日は特別に私が奢りますからその武器を降ろして……」
「五月蝿い」
余程信用がないのか私の説得も虚しく四人から集中砲火を受けてしまい悲しい事に終わってしまいました。
アリウスの子達が。
「大丈夫?」
嗚呼ヒナ、貴女はやはり私のピンチとなれば駆けつけてしまいますよね。しかもいつの間にか水着から普段の制服に着替えています。一先ずは安心して頂く為に声を掛け……ヒナの視線が変な方向を向いていますね。私の胴体の方を見て……あっ。まさか撃たれた所を見つけてしまったのでしょうか?
「………」
あーこれは完全に見てしまったようですね。どうしましょう、完全に詰んでいませんか? えっと……
「大丈夫、マザーの言いたい事は分かるよ」
「そ、そうでしたか。それならばあの子達と和解をする為にどうかお力添えを……」
「貴女の危険を排除するね。大丈夫、四人が肉塊になった所で誰も気にしないから」
……私は初めてヒナに対して絶望しているかもしれません。愛が重すぎるが故に止まってくれない様です。
「何故ゲヘナの風紀委員長がベアトリーチェを庇う? まさかそいつに洗脳されているのか?」
「そこの青いの。さっき大切なものを守る為に始末する、とか偉そうな事を言っていたわね」
「あ、ああ。姫……アツコもミサキもヒヨリ、それとアズサも……私は守りたい」
「そう、それは残念ね。だって貴女達には今から死んでもらうから」
「なっ……」
《font:》「私の大切なものを傷つけた罪は償ってもらうわ」《/font》
口調は冷静、されど怒りは剥き出しに。本気でアッちゃん達を殺しかねない程に圧を感じる。ま、まあヒナが私の為にこんなに本気になってくれるのは嬉しいのですが……私ゲマトリアですしそう簡単には死なないのでそんな怒らなくても……とは言えない雰囲気ですよね……あっ、ヒナがサッちゃん達の武器を破壊してます。そのまま勢いよく殴るつもりですかね……流石にやり過ぎですよ!? このままでは折角出禁だった場所に来れたのにまた出禁になってしまう……
「それだけは嫌なんですぅぅぅぅ!!」
「えっ!?」グシャ!!
……嗚呼、ヒナの愛の拳が私の顔面にクリーンヒットしました。綺麗な星空が見えますね。お空からピンク色の髪の毛の女の子が手を振っています……可愛いですねぇ……
「………」
「………」
「……ゲヘナの風紀委員長、こいつ……ベアトリーチェとは一体どんな関係なんだ? 私達の知る人とはかなり雰囲気が違う様な……」
「結婚してるだけ」
「は?」
「え?」
「……?」
「ええっ!?」
「……とりあえず治療してからそっちの話も聞くわ。何だか冷静になっちゃったし……」
ーーー
「うぅん……折角アビドスの子達に似た女の子と仲良くなれたのに「まだ来ないでください」って断られてしまいました……先輩を宜しくって誰の事ですか……あっ、どうやら元の場所に戻ってしまったみたいですね。私は確かヒナの愛の拳で三途の川を渡る旅を……」
「おはよう」
「おや、ヒナの膝枕とは素晴らしい目覚めですね。……あっ、アッちゃん達はどうなりましたか!? まさか本当に命を……」
「そこに居るよ」
「居ますね。怪我は……見た感じ無さそうですね。ご無事で何よりです」
「あ、ああ……」
うーん、すっごく気まずそうですね。一応警戒は解いてくれているようですが……どうしましょう……とりあえずは自己紹介をしておきましょうか。
「既にご存知だとは思いますが……私はベアトリーチェ、見た目は怖いと言われますがこう見えてもアリウスとゲヘナの教師をさせて頂いております」
「?」
「そこに居るヒナは私の婚約者です。実は今新婚旅行中なのですよ」
「??」
「好きなものは生徒の笑顔、そして甘えてくる仕草です。普段ツンとしている子も何度も愛情を与えていればいつの間にか二人きりの時はデレてくれる。そんな姿に幸福を覚えます」
「???」
「ちなみに私とヒナは他の世界から来ました。そちらではアッちゃんは喫茶店と花屋の店長、サッちゃんは社長秘書、ミッちゃんはカウンセラー、ヒーちゃんは配達員として社会に出ています」
「????」
「……何故皆固まっているのです? 何かおかしい事でも言ってしまったのでしょうか?」
「多分全部おかしいと思うよ」
「言われてみればそうですね」
「……じゃあ姫に近づいたのは本当にナンパをする為だとでも言うのか? そんな戯言を信じろと……?」
「むしろここまで嫌われるなんてこちらに居た私はどんな悪事を働いたのか気になるのですが……まあいいです。私の見た目に嫌悪感を抱いている以上あまり接触するべきではないのでしょう。今回は身を引きます。ですが覚えていてください、絶対に貴女達の心も掴んでみせますからね!!」
この後黒服に『嫌われるのって辛いですね』とモモトークを送って急にどうしたと珍しく心配されたのだとか。頑張れベア先生、負けるなベア先生。
アッちゃん=アツコ
サッちゃん=サオリ
ミッちゃん=ミサキ
ヒーちゃん=ヒヨリ