「………」
「………」
アビドスにある私の研究室。通称ホシノとの愛を育む部屋に招かねざる客を迎える事になるとは思いませんでしたよ。同じ見た目の存在をね。
「……嗚呼、ようやくハニー……いえ、ノノミさん以外と話せる機会が訪れるとは……」
「ハニーですか? 流石に女子高生をそういう呼び方をするのはゲマトリア……いえ、人としてどうかと思いますが」
「……貴方に分かりますか? 呼び方を間違えるだけで毎回屈辱的な行為を強制される苦しみが。少しでも間違えようものなら即座に尊厳を破壊する行いをされる絶望感が……」
「まあ、貴方にとってはそうでしょうね。ですが生徒達を酷い目に遭わせた人にはもっと苦しみを与えた方が良いとは思います。何よりホシノの髪を切った貴方はどの様な罰を与えられても私は赦しませんがね。……念の為にノノミにされたをお仕置きの詳細をお伺いしても?」
「[規制済み]や※※※※※※、あとは@@@@@@をされてきました」
「……付くならもう少し信憑性のある嘘をつくと良いですよ。ノノミがそんな事をする筈がないでしょう」
「貴方は十六夜の狂気を知らないからそんな戯言を言えるのですよ……忠告しておきます。ノノミさんはアビドスの誰よりも危険な存在、決して彼女の自我を呼び覚ましてはいけません」
「まあ、仮にノノミが危険であったとしても私の生徒ですし何よりその負担は全て貴方が引き受けてくれるのでしょう? 私は何も困りません」
「………」
この黒服、見るからに絶望していますね。彼の言う十六夜の狂気は気にはなりますが私には関係がないので放置しておきましょう。
「分かりました取引をしましょう。私が知るシャーレの先生、その人の秘密を共有します。ですのでこの状況から私を解き放って頂けないでしょうか?」
「要りません」
「ではアビドスに眠る列車砲の情報は……」
「要りません」
「分かりました。いっその事もう殺してくれませんか? これ以上尊厳を破壊されてしまえば私は人として死んでしまう。その前に私を……」
「お断りします。私にメリットがありませんので。大人しくノノミに飼われていてください」
そもそもどんな要求をされようとも婚約指輪を破壊してホシノを酷い目に遭わせた人間の頼みを聞くつもりは毛頭ありませんがね
ーーー
「毛頭ないって言ってたけど先生って元から髪はないよね」
「………」
教室を出た廊下で待機していたホシノは鋭く研ぎ澄まされた言葉を無慈悲にも突き刺してくる……それにさりげなく思考を読むのをやめてください。
「口に出てたよ?」
「そうでしたか」
「一応話してた内容も全部盗み聞きしてたよ。聞いてた感じだとなんだかちょっと可哀想だって思っちゃった」
「良いんですよ、そのまま十六夜の狂気とやらに苦悩していれば」
「先生がそう言うならいいのかな……」
「救われてはいけない人間も居るのですよ。生徒の足を舐める黒服もそういう人種に含まれます」
「どうして先生は変な癖を持っている人が多いんだろうね。コスプレやら傷痕を舐めるやら足舐めやら……」
「誰しも癖の一つや二つは持ち合わせていますよ。それを抑制できないから目立ってしまうだけであって」
「先生も人には言えない癖があるの?」
「……まあ」
「え〜なになに気になる〜教えてよぉ〜」
「それはまたの機会に……」
いくらホシノ相手とはいえ言えないものはあるのですよ……
「それはそうとホシノ、もうそろそろ進路について考えた方がいい時期ですよ」
「進路? どうして急に?」
「どうしても何も来年には卒業なのですから」
「……ああ、そうだったね」
「この後進路希望の用紙を渡します。提出期限は来月の8日ですのでお忘れなく」
「りょーかい」
ーーー
「ハニー、その手に持っている衣装は一体?」
「『ユメ先輩のコスプレ衣装保管箱』から持ち出してきた服ですよ」
「見るからに女性用の衣装しかない様に見受けられますが……何故それを持ち出して来たのですか?」
「着てもらおうと思いまして☆」
「……誰に?」
「つ☆」
……嗚呼、やはり十六夜の狂気である。正気な人間はこんな非人道的行為を行える筈がない……
「大丈夫です、前にとある方に聞きましたけどゲマトリアって性別不明と聞いていますので☆ 性別不明ならフリフリのメイド服も着れますよね?」
「そもそもコスプレ自体に抵抗が……」
「着れますよね?」
「……はい」
何故狂気的なコスプレを着用させる事を要求するのか……その答えを知る人間は誰一人としていない……
今の所卒業式が最終回という程で進めています