「でね、色々考えてスーツだったら私と先生はペアルックになるから仲良し感が伝わるんじゃないかなって思うんだ」
「スーツだからと言ってペアルックになるとは思いませんがやる気になって頂けたのは嬉しいですよ」
「えっペアルックじゃないの?」
「ホシノのスーツは女性用。外の世界でいうOLが着るものです。なので客観的に見てもペアルックというよりは会社の同僚……みたいな印象の方が強いと思います」
「そうなんだ。じゃあ私先生やめる」
「はい?????」
「ペアルックじゃないなら私と先生が永遠の愛を誓い合った仲って言うのがアピールしずらいじゃん。初対面で「あ、この二人愛し合っているんだなぁ……」って見せつけられないのは困るよ。先生かっこいいんだから勘違いしちゃう子が現れたらどうするのさ?」
「私を選ぶ物好きはそう簡単には現れないと思いますよ。……まあ、二人ほど例外はいますが」
「そういう例外が生まれてる時点で先生は危機感を持った方が良いよ。もっと自分の良さを自覚して?」
「は、はい……仮にホシノ以外の生徒に好感を持たれても恋愛的に興味を持つ事はないと思いますが自覚しておきます」
「うんうん。……あ、でも先生の良さを百鬼夜行に広めたい気もする……アビドスにはこんなに良い先生が居るんだよってアピールしたい……」
「そんなものを広めたところで……まあいいです。百鬼夜行には私一人で足を運ぶとしましょう。ホシノはアビドスに残って高校生活を満喫して……」
「え、私もついていくよ?」
「ホシノも来るんですか?」
「もちろんだよ。ミレニアムの時と同じ二人きりの出張だね♪」
「……それならば先生体験をやりましょう?」
「それはちょっとペアルックじゃないから……」
「……」
この後駄々をこねるホシノをなだめて一週間後に百鬼夜行の先生(仮)として出張する事が決まった。
そしてこの日の夜。マエストロの経営するバーに黒服とベア先生の二人がカウンターに座ってカクテルの入ったグラスを手に持ちながら夜の密会……ではなく愚痴を言い合うだけの場である。例によって愚痴のないゴルデカペアはハブられている。
「最近ホシノの感情が分からないのですよ。やる気を出したかと思えば急にやる気をなくして……」
「乙女心はそう簡単に理解できるものではありませんからね。ですが永遠を誓いあった相手の心境が分からないのは致命的というレベルを超えていると思いますよ。それはもうクソボケとか通り越してホシノの伴侶として失格まであるかと」
「一理あるな。だが焦る必要はないと思うぞ。マダムは思考が女性寄りだから生徒の心境をより理解し沼に嵌らせる事が得意なだけで私や黒服とは根本的に考えが違う。ホシノとお互いに過ごしていく中で少しずつ理解していけば良いんだ」
「誰がババアですって?」
「別に言ってない」
「……ですが一点不可解な事がありまして。前まではホシノが何を考えているのか、何をしたいのかが手に取るように分かる、つまり阿吽の呼吸が出来ていたのです。ここ最近になって急に噛み合わなくなってしまい……」
「結婚後のマリッジブルーとか意味として破綻していますしもうちょっとマシな言い訳を考えた方が良いですよ。……ただ私も気にはなっているんです。最近黒服とホシノの様子は何かがおかしいと……」
「そういえば最近アビドスの様子を見に行ったユメもホシノに違和感があると言っていたな。今までよりも初心になっているというか……」
「恋愛耐性がマイナスになっている事ですか?」
「「多分それです(だ)」」
「なぜああなったのかは不明なので良いとして……」
「良くはないですよ。もしこのまま恋愛耐性が貧弱になり続けて手をつないだだけで気絶とかし始めたらどうするんですか?」
「そうだぞ。今まで以上に日常生活で支障をきたす可能性もあるんだ。今のうちに手は打った方が良い」
「手を打つと言われましても……原因すら掴めていない状況でどうしろと言うのですか?」
「どうにかしろ」
「えぇ……」
「案外慣れさせたら治る気がしますよ。私が抱いたあっちのホシノは恋愛耐性、というかそもそも信用度を感じない所から始まってどうにか懐柔出来るくらいまでは心に余裕を持たせましたが……」
「それは素晴らしいですね。ただ死刑です」
「まあホシノがそうなった理由は覚醒の副作用とかだろうな。そう簡単に覚醒出来ないようにリミッターが付いてるのだろう」
「成程? ですがそれだと副作用が尋常ではない程に重いのですが?」
「グルグルパンチでヤバそうな古代遺物を破壊出来るホシノには甘すぎるレベルのデメリットだと思うが」
「言葉にしても意味が分かりませんね。バトル漫画とギャグ漫画みたいななんとも言えない差があります」
「ホシノをギャグ漫画呼ばわりするのはやめていただきたいのですが」
「諦めろ。最大の神秘であるが故に常識が通用しないのは仕方あるまい」
「他人事だと思って好きなように言ってくれますね。……で、結局ホシノにどう接すれば彼女の感情が理解できる様になるのでしょうか」
「抱きましょう」
「抱け」
「………」
こいつら話にならないな……と黒服は相談する相手を間違えた事を後悔した。