例えばこんなゲマトリア   作:スカイブルーホワイトヘアー

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ユメ先生とホシノ

ユメ先生と待ち合わせをしている場所に私は一時間早く着いてしまった。私の知るユメ先輩と違って彼女はしっかりしすぎているので時間通りに来てくれると信用しているけれど彼女を待っていた方が落ち着く。

 

「ホシノちゃん、待たせちゃってごめんね」

 

「いえ、まだ来たばかりですので。わざわざありがとうございます。本日は宜しくお願いします」

 

「うん、こちらこそ」

 

ユメ先生からスッと差し出された手を握り私は百鬼夜行へ向けての歩みを始めた。

 

「こうして手を握って歩くのは久しぶりだね」

 

「そうですね。あの時はまだユメせんぱ……先生と意味もなく歩きましたね」

 

「好きなように呼んでくれていいよ。……まだそんなに時間が経っていないのに随分と昔の事の様に思っちゃうよ。……まあ、あれからこんな風になるなんて考えつかないよね。全部を失った私が家庭を持つなんて……誰も想像出来ないよ」

 

「……今は幸せですか?」

 

「……うん。帰る場所があるのは嬉しいよ。でも私の事は気にしなくていいんだよ。ホシノちゃんには既に先輩が帰ってきたんだからさ。本物の、ね」

 

「私にとって貴女も本物のユメ先輩ですよ」

 

「………」

 

それを聞いた彼女は何か複雑そうな表情を浮かべた後に「そっか」と微笑んでくれた。そこからは特に何か話をする訳もなく……黙々と歩いて百鬼夜行に……

 

「それよりもホシノちゃん」

 

「なんでしょうか?」

 

「なんで黒タイツ……履いてないの?」

 

「………」

 

「スーツも着てないよね? 昨日旦那からホシノちゃんが同行してくれるって聞いた時には黒タイツOLホシノちゃんが見れるって喜んだのに……あ、でも今の私服姿も可愛いよ☆」

 

やっぱりユメ先輩はユメ先輩だった。……でも、彼女がこうして冗談を言えるくらいに精神的に回復している事が分かるのは嬉しい。それはそれとしてセクハラはやめてほしいな。

 

ーーー

 

「でね、アロナちゃんが仕事を手伝ってくれるから仕事が楽に終わって……」

 

「先輩先輩」

 

「どうしたの?」

 

「もう百鬼夜行に着いてます」

 

「えっもう着いたの? 話していると時間が経つのは早いね……じゃあ軽く見回りつつホシノちゃんのお眼鏡に敵う生地を探しに行こっか」

 

「はい」

 

後輩の頼みとシャーレの特権を利用して見回りという名の生地探しを始める。高そうな着物の店や良い生地を取り扱う店を巡って黒服に似合う服を作る為の素材を厳選している。……とはいえ専門的な知識を持っていないのでお財布と相談しながらなんとなくで選ぶ形になっている。

 

「プレゼントって結局は気持ちだと思うんだよね。高級なものでも嬉しいんだけどやっぱり自分の為に用意してくれた過程を想像して喜びに浸るって言うのかな……」

 

「それ、何となく分かります。想いのこもった贈り物って金額では決められない価値がありますよね」

 

「うんうん。……あ、どうせなら私も旦那とアロナちゃんに服でも作って渡そうかな。ねえねえ、私も一緒に生地を選んでいい?」

 

「勿論です」

 

……あ、どうせなら皆にも何か贈ろうかな。ほら、この柄とかノノミちゃんに似合いそうだし……鯨柄はちょっと子供っぽいかな……このマエさん柄は先輩にでも……

 

「えっマエさん柄の生地って何?」

 

「あーそれは気にしないでいいよ。今の百鬼夜行は色々あって私の旦那とベア先生の派閥に分かれて変な抗争をしているんだ。これはその争いが始まった時に生まれた悲しい遺産なんだよ」

 

「誰がこんな柄を着こなせれるんですか?」

 

「誰も着こなせないよ……流石に奇抜なデザインすぎて和服に合わないし例え好きな人のデザインだとしてもこれを使うのはちょっと躊躇うんだ」

 

「どうしてそんな悲しい遺産が……」

 

「正直分かりたくないかな……とにかくそれは置いておいて選んじゃおう」

 

「分かりました」

 

そういえば昨日マエさんが桐生キキョウって子に色々……みたいな話をしていた気がするし多分その子が作ったのかな……? 

 

ーーー

 

あの後何件か巡って見回りをした結果治安については今の所問題なさそうとの事で私と先輩は帰路に着いた。購入した生地は先輩が持っていたタブレット端末の中に入っている? みたいで運ぶ必要がないみたい。頼りになるユメ先輩、というのも何か違和感を覚えるけれど好意に甘えておこうと思った。

 

「黒服、喜んでくれると良いね」

 

「はい。……その、まだ先輩は先生の事を……」

 

「……まあ、そうだね。見た目がどうしても受け入れられないの。黒服を見ると黒くて素早い虫さんを見た時みたいに無条件で嫌悪しちゃうんだ。ホシノちゃんの大切な人だって分かってはいるんだけど……」

 

「それは……」

 

「でも……少しずつ受け入れられるようにするよ。恩も借りもあるし……嫌ってばっかりだと疲れちゃうからね。またアビドスの様子を見に行く時に世間話でもしてみるよ」

 

「お願いします。先生は良い人なのできっと先輩もいつか親しくなれると思います」

 

「嬉しいけれどその姿を想像したらちょっと嫌だね」

 

なんて軽口を言いながらマエさんに報告をして荷物を家に置かせてもらい私と先輩はそれぞれ帰るべき場所へ。スマホの通知に1000件以上先生からの連絡があったので急いで帰らないと……まだ悟られたらいけないからね。




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