机に並べられた料理を眺めその中の一つである家庭料理の基本とも言える『肉じゃが』に目をつけた。よく煮込まれ箸を通すだけでほろっと割れる具材を見ているだけで食欲がそそられる。私はホシノを触る時のように繊細に具材を箸で掴み口内へ運んだ。その優しい味わいは作った本人を表すかのようだ。噛めば噛むほど心身に染み渡る味は箸を動かす手を休ませてくれない。まさに至高の『肉じゃが』家庭料理の頂点だ。
「……満足したか?」
「はい。久しぶりにフウカの料理を頂きましたがこの味は家庭料理の域を超えていると言っても過言ではありません。仮想空間とはいえ食を愉しめる事も分かりましたので一石二鳥でしょう」
マエストロと合流して驚いたのはミレニアムでもトリニティでもユメでもなくゲヘナの生徒を当番として連れてきた事。それも自らを調月フウカと名乗りミレニアム所属と言っている……
「その……フウカはミレニアム所属なのですか?」
「? はい、そうですよ。リオさんのセミナーのお仕事を手伝っています」
「おかしいですね。リオはミレニアムに居づらくなって一時的にゲヘナ所属となっていた筈ですが……」
「ええ? 確かにセミナーでは色々問題があってロリコンのユウカさん? が失踪してしまいましたがリオさんはミレニアムに居ますよ」
「……成程?」
彼女は私の知る歴史とは違う可能性を歩んできたのか……? だとしても起こり得る筈もない……ま、考えたところで無意味でしょう。彼女がフウカであり料理の腕も素晴らしいものであるのならば苗字や所属学園の相違など些細な問題です。それよりも問題なのはミレニアムの制服を着ているのでもしマダムに見つかったら……
「そういえばババアはどうした? 腹部出血女の口振りから推察するにババアもこの試験に参加しているのではないか?」
「まだ合流していませんが恐らくは居ると思います。それとマエストロ、マダムをババア呼びすると大変な事態を引き起こしますよ」
「ああ、今私もそれを実感した。2km先から異常な殺意を感じる。ヒナが居るのだろう? ここは一つ大人として謝罪しておこう」
馬鹿にしてすまなかったと彼が言い頭を下げると世界を滅ぼせるラスボス並の威圧感が消え去って平穏な時間が流れ始める。一番の脅威が味方という破綻している状況ではあるもののこのくだらない試験を終わらせるのが早くなるのでヒナの加入は助かっている。実際既に第一章のボス的立ち位置の奴らは全滅している頃だろう。
「結局のところこの先生試験はいつ終わるんだ?」
「シャーレの先生が歩んだ軌跡を私達なりの解釈で歩めば良いのです。まあ既に破綻していますので放置していても終わりますよ」
「放置で解決出来るとか試験の意味がないと思うが」
「ホシノとヒナを共闘させた時点でもう……」
「まあ良いか。早くユメに会いたいからな。ユメが居ない以上こんなくだらない遊戯には付き合ってられん」
「無理して付き合う必要はありませんが元々貴方が余計な事をしたのが原因でこんな面倒なものに付き合わされる羽目になったのですよ? 辞める前に一つ『責任』を取ってもらいましょうか?」
「……なんだ?」
「イオリの脚を舐めてください」
…………
「HA?」
「イオリの脚を舐めないと次に進めないのです。ですので今からゲヘナに行って脚を舐めて頂き……」
「断る。何故試験で生徒の脚を舐めなければならないんだ? いくら何でも酷くないか?」
「然しシャーレの先生はイオリの脚を舐めないと正式に認められ……」
「私は妻子持ちだぞ?」
「私もですが」
「……マダムに任せよう」
「任せたいのは山々ですが彼女は三章まで出番がないので……それに早く進めないと大変な事になるのです、躊躇う必要はありません、イオリの脚を舐めるのはマエストロ、貴方です」
「いやいや黒服が舐めると良い」
「いえここはマエストロが……」
「よしじゃんけんで決めよう。それで恨みっこなしだ」
「分かりました。ではいきますよ」
「「じゃんけん……ぽん!!」」
ーーー
「ただいま先生。……あれ、マエさんと合流したってさっき言ってたけど……」
「ああ、彼は今野暮用でゲヘナに行ってます」
「ふうん……」
イオリの脚を舐めた時
私は何をやっているのかと虚しくなった
それでもイオリからの好感度が上がっているので
理解に苦しんだ