例えばこんなゲマトリア   作:スカイブルーホワイトヘアー

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ベアカス

『そういう訳なので私のミスで貴女を配置してしまいました。まあ……ベアカスと言われてるくらい嫌われ者らしいので大人しく先生試験の壁となって倒されてくださいね☆』

 

……突然意識が戻ったと思えばふざけた催しに巻き込まれたようで……ベアカスなんて口の悪い奴ですね。これだから生徒というのは信用に値しない。搾取だけされていればいいものを偉そうに……

 

「……ですが私はあの日敗北しました。搾取するべき生徒と手を取り合い共存している私に。彼女を支えようと奮闘した生徒達に」

 

最大戦力とも言える軍隊を用意した。色彩の力も利用した。それでも及ばない。ベア先生と彼女に従う生徒達に完膚なきまでに叩き潰されて……私の選択が間違っていたのだと知った。シャーレの先生、そしてもう一人の私。二度も敗れた私は悪役としてすら目立つ事もなく色彩力を利用した反動で消失した。……今更私に何をしろと言うのだろうか?

 

「………」

 

「……私に何か用ですか?」

 

「………」

 

「そこで見ている人間、貴女に言っているのですよ? 柱に隠れきれていないのに何故バレていないと思っているのですか?」

 

……そういえば周囲を見ていませんでしたね。とはいえ薄汚れた廃墟にしか見えませんが。多少アリウスに近しい景色ではありますがどうでもいい事です。一先ずはこの目の前にいるガスマスクを着けた子供をどうするかを考え……

 

「そのガスマスク……アリウスの生徒ですね?」

 

「………」

 

アリウスの生徒。そう告げるとガスマスクの生徒は手を動かして何かを伝えようとし始めた。奇妙な動きですね。……いえ、これは手話でしょうか?

 

「もしや秤アツコですか?」

 

名前を聞いた途端に肯定するかのように頷いている。そしてまた手話を……いえ、これは私が命じたものでした。常にガスマスクを着用する、極力声を発しない事。今にして思えば何故そんなくだらない枷を彼女に着けたのかは不明ですね。

 

「ガスマスクを外しなさい。それと手話ではなく声で会話をしましょう」

 

「……いいの? もう苦いの飲まなくていい?」

 

「苦いのとはなんですか……そんなもの必要ありませんよ」

 

「良かった。もう飲みたくなかったから」

 

そう言って笑うアツコを見て過去の自分を振り返ってみる。この子を磔にして儀式をしようとしたりミカや他のアリウス生を利用してトリニティを壊滅させようと……

 

「……私はなんて馬鹿なのでしょうね」

 

「?」

 

「……サオリ達はどうしていますか?」

 

「今はベア先生に教育されてる。バニバニ言うな〜! ってスパルタ教育されてるんだ」

 

「そうですか。……まあ彼女なら貴女達を今からでも正しい道を歩めるようにしてくれる筈です」

 

「でもあの人、私が手話でしか話せない理由を病気だからって勘違いして苦い薬を飲ませてくるから嫌い」

 

「まあ、今日からは飲まされないでしょう。ガスマスクはともかく声は自由に出して頂いて構いませんので」

 

「うん」

 

「……何故隣に座るのです?」

 

「ダメなの?」

 

「別に構いませんが……」

 

私の知る秤アツコはこんな性格ではなかった筈……いえ、そもそも生徒の性格なんて覚える必要もないと理解する事すらしませんでした。ただ命令を聞く駒だとばかり思っていて内面なんて気にしてすら……

 

「ありがとう」

 

「急にどうしたのですか?」

 

「アリウスに来てくれて」

 

「……理解出来ません。何故感謝が出来るのですか? 私は貴女達を利用する為だけに生かし自分の都合で命を奪おうと……」

 

「それでも生かしてくれた。やり方は乱暴だったけど」

 

「………」

 

「貴女が来てくれなかったらこの歳になるまで生きられなかったかもしれない。だからありがとう」

 

感謝の言葉と共に自然な笑みを浮かべるアツコは眩しすぎて顔を背けてしまった。……こうして自分の考えが間違っていたのだと再認識させられるとは……ただもう何もかもが遅い。生徒と向き合う権利なんて私には存在しない。今この場にいる理由は『倒されるべき敵』というだけなのだから。

 

「アツコ。最初で最後のお願いをしても良いですか?」

 

「……?」

 

「私を撃ってください。私はもう……貴女には必要のない存在です。これ以上アツコの枷になりたくない」

 

……大人としての責任。私が取れる最大限のものは何よりも大切だった自分の命しかない。今となっては安いものですよ。私の命一つで目の前の未来ある生徒が前を向いて歩けるようになるのであれば……

 

「"はい不合格。それじゃあダメなんだよベアトリーチェ"」

 

「……何故貴方が此処に居るのです?」

 

「"それは……ほら、私が最終章のボスだからだよ。そんな事よりも何その責任の取り方。不器用すぎるよ"」

 

「何ですって……?」

 

「"確かに私達はいついかなる時であっても子供と共に生きていく大人として責任を負わなければならない。でもそのやり方だとアツコに殺人という責任を負わせてしまう。その後も君を撃った事を後悔して過去に囚われる。枷になりたくないと言っておきながらその選択を迫るのは0点としか言いようがないね"」

 

「………」

 

「"こういう時の責任を取るやり方を教えるよ。とっても簡単、ただアツコの側に居て見守るだけで良い。それだけでいいんだよ"」

 

「……そんな事で私の罪が赦される筈がありません」

 

「"そうとも言えないんじゃないかな。幸いにもまだ君がやらかす前に時間が戻っているからね。……まあ、そもそもこの場所で犠牲を出す方が難しいまであるけど……変態とロリコンが先生やってるし。とにかく暫くアツコと話して考え直してからでも良いと思うよ"」

 

「……それもそうですね」

 

「"同じボスとして君の成長を応援しているよ。……あ、そろそろ戻らないとシロコが変な金色のロボットに乗って暴れ出しちゃう"」

 

そう言うとシャーレの先生は歩いて去っていった。所々黒ずんでいてどちらかと言えばこちら側に近しい存在になっている事は気にはなりますが……今はアツコの側に居るとしましょう。

 

「さっきの答えだけど断るね。私には貴女が必要な存在。それに枷になんてなってないよ」

 

「……変な子ですね。ですが……」

 

そう言って頂けるのは嬉しいですよ。

 

 

 

 

 

 

 

「こーらベアカスゥ!! 私のアッちゃんをなにNTRしようとしてるんですかぁ!? 良いムードにしてエッチな事をしようとしても無駄ですよ!! エ駄死ロケットランチャーをぶつけてやるぞオラァ!?」

 

「………」ジャキ

 

「あばばばばばばばばばばばばばばばばばばばばば」

 

最後の最後で乱入してきたベア先生に空気をぶち壊しにされて頭に血管が浮き出たアツコがベア先生に向けて銃を乱射した。そして左脇腹に弾丸が当たりミッションが一つ達成されたのだとか。

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