「もう少し手加減してくれても良かったのではないでしょうか?」
「良い雰囲気を台無しにした罰」
「それは申し訳ないと思いますが……アっちゃんの隣にベアカスが居たので危ないと判断してしまい……」
当然の反応でしょうね。ベア先生は私の非道を理解しているので。……まあ、その結果アツコに撃たれたのですがね。
「……で、何故ベアカスがここにいてどうしてアっちゃんと一緒に居るのですか? また生贄にしようなんて考えているのですか?」
「そんな無駄な行為をする必要はありません。気づいたらこの場所に居て敵役として倒されろと変な命令をされているに過ぎませんので」
「ほぉーん敵役ですか。そうですね、私のアっちゃんをNTRしている以上最も嫌悪するべき悪であると見受けられますね。ならばお望み通り倒して……やりたい所ではありますが今は見逃してあげましょう。見逃さないと私がアっちゃんに撃たれてしまいますからね」
「……別に気にする必要はないと思いますがね。私よりも先生である貴女の方がアツコの側にいるべきかと」
「私は苦い薬を飲ませてくるこのおばさん嫌い」
「……そういう事ですので任せますね」
……こうして私はほんの少しわがままで何故か慕ってくれている秤アツコと少しの間行動を共にすることになりました。「アっちゃんの紫封筒が手に入るまでは見逃してあげますよ」と吐き捨てるようにベア先生が言っていたのは気になるものの今は目の前のアツコの事で手一杯なので気にしないでおきましょう。
「ねえ」
「何ですか?」
「先生って呼んでいい?」
「私は先生ではないのでその呼び方はやめて下さい」
「じゃあお母さん」
「それも困ります」
「ダメ。先生かお母さんのどっちかにして」
「……それならアツコの好きなように呼んでくれればいいです」
「分かった。じゃあお母さんって呼ぶね」
既に振り回されている気がしますが……先生というのはこういうものなのでしょうか? アツコが楽しそうなので問題はないもののむず痒いですね……
「お母さん、あっち見て」
「……あれは花壇、でしょうか? 随分と荒れ果てていますが」
「……ここの花壇でお花を育てたい」
「花ですか……好きにやれば良いと思いますよ」
「違うよ。お母さんも一緒に育てるの」
「そんな面倒な……まあ、それが貴女のやりたい事なのであれば手伝いますよ」
「ありがとう。じゃあ種と良い土を買いに行こう。手を繋ぎながら」
「そんな親子みたいな……」
「嫌なの?」
「嫌というよりは……いえ、何でもありません。さっさと買いに行きましょう」
「うん」
手を握られる資格が自分にはない。そう言いかけたもののアツコが手を繋ぎたいと言っているのだから断る理由はない。……ただ握った手があまりにも温かくこの選択を多少は後悔してしまった。そのまま手を放す事なく花の種と土、スコップとジョウロを購入して土の手入れを行い種をまき水を与える。その後陽当たりの良い場所に花壇を移して成長記録をつけることにした。
「今回育てる花は比較的育ちやすくてすぐに成長するの」
「それなら適当に水を与えるだけでもよさそうですね」
「ダメだよ。適量を与えないと上手く育たない。それに愛情を注がないと綺麗にもならないよ」
「はあ……面倒ですね。こんなもの育つならなんだって良いではありませんか……」
そう悪態をつきながらもまだ埋めたばかりの種に対して水を与えてアツコの為に育てと想いを込めてみた。これで腐ったりでもしたら許しませんからね?
「後は定期的に見に来て成長記録を観察していこうね。花が咲く瞬間は徹夜して一緒に見よう」
「あまり徹夜を強要したくはありませんがそれがアツコの望む事ならば構いませんよ」
「じゃあ約束。嘘ついたら一生分の花の種を買ってもらうからね」
「一生分なんて言われてもピンときませんが……まあいいでしょう、破った時は大量に花の種を買いましょう」
「それとついでに約束。私を置いて勝手に居なくならない事。誰かに倒されるとかダメだからね」
「……善処します」
アツコと交わした約束。きっとこれを果たせれば私も……いえ、そんな甘い期待は必要ありませんね。何処までいっても悪は悪。そう簡単に変われるはずもない……けれどこのまま過ごしていればいつかは……なんて希望を持っても良いのでしょうか……?
「約束もしたし今日から一緒に寝よう」
「はい?」
「だってお母さんなんだよね? 親子なら一緒に寝るのが普通だって何かの本で読んだよ」
「少なくとも年頃の少女が親と寝るのは普通ではないと思いますが」
「いいから寝る」
「はあ」
これも先生としての務めだと割り切れば……いえ流石に無茶でしたね。そんな始発の電車を待った後に添い寝したり野宿した際に冷えてしまうからと抱き合って寝たりなんて先生がやって良い行いではないと思いますよ。……まあ、私は先生ではなく母親らしいので問題はあるにはありますが目を瞑ってもらうとしましょう。
「いやいや赦される訳がないでしょう頭に何が詰まっていたらそんな思考に至るのですか? アっちゃんと添い寝していいのは私だけなのですが? アリウスのお姫様に何手を出そうとしているんですかベアカスの分際で!!」
「おばさん嫌い」
「おばっ……」
またもや良い雰囲気をぶち壊したベア先生は勝手に凹んだ。そしてベアカスはベアカスで手を出すつもりはないのでただただ添い寝しただけなので何も問題はなかった。
ベアカスが生まれたのは私のミスなので然るべき対処をします
君はパフェを食べながらそう言った