例えばこんなゲマトリア   作:スカイブルーホワイトヘアー

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ベアカスと嫌いだけど信用出来る相手

朝起きたら汗で身体がベタついていた。この暑い時期に抱き合って寝たらこうなる事くらい想像する事は容易い。然しアツコは身体がベタついていてもただ一言「離れないでくれたんだね」と言って嬉しそうに微笑んだ。相変わらず何を考えているか理解出来ない……

 

「起きたのならばそろそろ離れてくれませんか?」

 

「やだ」

 

「あまり我儘言う子は朝食抜きにしますよ」

 

「じゃあ朝食無しでいいから抱きつかせて」

 

「はぁ……いいから離れなさい」

 

多少強引に引き離したところ先程から浮かべていた笑みが何処かへ行ってしまったかの様に不服そうな顔をしている。たかが離れたくらいで大袈裟な……

 

「別にもう二度と抱きつくなと言っている訳ではないのですから」

 

「私は今抱きついていたかった。あと5分ってやりとりをしたかった」

 

「何があと5分ですか……別に眠いならまだ寝ていればいいと思いますよ」

 

「お母さんが離れるなら寝ない」

 

「小学生ですらそこまで親に執着しないと思いますよ」

 

いっその事ベア先生にこのアツコを引き取ってもらいたくなってきた。やり方を改めるつもりはあるものの子育てをしたい訳ではないのだから。こうして振り回されている限り何も成長出来ないという焦りも多少生まれてきてしまう。

 

「嫌いな方のお母さんが言ってたけど子供は親に甘えられる時に甘えておきなさいって。大人になったら親に甘えるのが難しくなるから今のうちにって。だから私は15歳である特権を活かして甘えるの」

 

「……アツコは何を言っても離れそうにありませんね。仕方ありません。シャワーを浴びて身体のベタつきを解消したら許可します」

 

「! じゃあ一緒に浴びよう」

 

「一人で入りなさい」

 

「やだ」

 

「絵面的に不味いでしょうが」

 

「親の責任を果たして?」

 

「その理屈は無理がありますよ」

 

この後ずっとゴネ続けるアツコをどうにか納得させて先にシャワーを浴びさせる事に成功し、その後適当な朝食(非常食)を机に置いて花を見に行った。とはいえ一日経過した程度では大した成長はしておらず苛つきを覚え始める。教育と同じで成長するのを待たねばならないのはもどかしいですね……栄養剤とか与えてすぐに成長とかしたりしないでしょうか? 

 

「はあ……ダメですね。慣れない事だらけで色々と疲労が溜まってきております。もう楽になってしまいましょうか……然しアツコを放置して去るのは何故か躊躇うのでこの花が咲くまでは耐えましょう」

 

……ですが私が去った後は誰にアツコの面倒を任せれば良いのでしょうか? 無難にシャーレの先生……いえ、あいつに頼むくらいなら死んだ方がマシです。では他のゲマトリアに任せますか? 確か此処では彼らも先生になっているのでしたね。……ですが彼らとも合わないのでとてもではありませんが頼めませんね……サオリ達は……まだ子供ですので自立は出来ないでしょう。

 

「考えれば考える程不安ですね。このまま依存されるのも困りますがアツコの将来が上手くいくようにする為にはどうすればいいのか……」

 

「ん、良い人を紹介するよ」

 

「何ですか貴女は」

 

「私はただの銀行強盗。着いてきて、面倒見の良い頼れる大人を紹介するから」

 

「銀行強盗を女子高生にさせている時点でダメな大人だと思いますが」

 

「ん、話が進まないから早く来るべき」

 

「はあ」

 

生徒とは強引な子が多いですね。こうも振り回されていては気が休まる時間がないと思いますがよく他のゲマトリア達は先生として生活出来ていますね……

 

ーーー

 

「"なんで連れてきちゃったの?"」

 

「この人が頼りになる大人を探していたから」

 

「"頼りになるって思ってくれてるのは嬉しいけど一応私達はボスらしいからあんまり関わりを持たない方が……"」

 

「ん、でも前に先生もこの人に絡んでた」

 

「"それはそうだけど……"」

 

くだらない……頼りになる大人と言われて来てみれば多少黒ずんでいるシャーレの先生ではありませんか。こんな黒服のなり損ないには用がないのですが……

 

「"まあいいや。とりあえず話を聞こうかな"」

 

「先生に話す理由はありませんが」

 

「"アツコの事なんでしょ? 無駄なプライドやわだかまりなんて捨てて話してほしいな"」

 

「……まあ、その通りですが。2日目ではありますが既にアツコに振り回され続けてしんどくなりまして……」

 

「"そりゃあ子供は搾取されるもの(キリッ)とか言ってた人が急に生徒に向き合って振り回されてたらそうなるよね"」

 

「この向き合い方を否定する気はありませんが私には合いません。混浴や添い寝を要求される時点であり得ないと思います」

 

「"2日目で混浴と添い寝とか確かにあり得ないね。好感度が上がるチートでも使ったの?"」

 

「そんな能力はありませんよ。アツコがおかしいだけです」

 

「"どんなに変でも生徒をおかしいとか言っちゃダメだよ。先生候補生なんだから"」

 

「は、はあ? 勝手に決めないでください。私は先生になる気はありませんよ。昔と変わらず悪い大人ですが?」

 

「"ゲマトリアは最初は皆そういうんだよ。とりあえず何かあったら私も解決を手伝うからさ。自分の感情が整理出来るまではアツコの側に居るべきだと思うよ"」

 

「それはまあ……そうですね。もう少しだけアツコの茶番に付き合ってあげるとしましょう」

 

何故かそこまで話していてあまり嫌悪感が湧かないシャーレの先生との話を終えてしれっと戻って来たものの……何やら揉めているみたいですね。

 

「……姫、一つ聞いても良いだろうか?」

 

「どうしたのサっちゃん?」

 

「母親の為に昼食を用意して待っていたい。姫はそう言っていたな」

 

「うん」

 

「……すまない、私には目の前にある黒い物体が昼食には見えないのだが……」

 

「? これは卵焼きだよ?」

 

「………」

 

花の世話よりも優先するべきものが見つかりましたね……




秤アツコシェフによる本日のメニュー

手榴弾で焼いたカリカリの卵焼き(黒焦げ)
サっちゃんが持って来てくれたパックのお米

お腹を壊す確率脅威の99.6%
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