『そういう訳でベアカスさんを私のミスで降臨させてしまったのでホシノさんとヒナさんの力をお借りしたいのですが……』
お断りします。自分のミスは自分で対処しなさい。
『それでも先生ですか!?』
私はアビドスの教師ですので貴女の尻拭いをする必要はありません。どうにかして欲しいのであれば他のお人好しに頼んでください
『他の人は聞いてくれないんです。ベア先生はNTR撲滅計画を立てて忙しいって断られてマエストロ先生には普通に断られました。ユメ先生に関してはマエストロ先生に酷い事をしたから誠心誠意謝罪するまでは許さないって……』
貴女のミスですね。とにかく朝から脳内に語りかけてくるのはやめて頂けませんか? 万が一ホシノに聞こえて眠りを妨げてしまったらどう責任をとってくださるのですか?
『……仕方ないですね。準備して私一人でどうにかしますよ!! 早くどうにかしないと甘いものが食べられなくて苛ついてしまいます!!』
……急に聞こえなくなりましたね。全く、試験監督気取りで私とホシノ二人の時間を邪魔するなんて常識の欠片もありませんね。この幸せそうに眠っているホシノを起きるまで見守るのが私のルーティンだというのに……
「うへへ……せんせいすき……」
……信じられますか? これが寝言なのです。無意識のうちに愛を伝えるなんて罪深い……然しこうして私がホシノの寝言を聞く事で日常会話で「ホシノが寝言で……」みたいな感じで話すと顔を真っ赤にして恥ずかしがる姿が見れるので有難い限りです。照れた乙女ホシノからしか得られない栄養素があるととあるミレニアム生に言わせましたのでこれは摂取する為に必要な事なのです。とはいえホシノに危険が及ぶ可能性がある以上ベアトリーチェを放置は出来ないので様子だけは見にいくとしましょう。
「そういう理由ですので二人にはホシノの事を任せましたよ」
「嫌よ、私も行く。あいつだけは生かしておけない。被害が出る前に存在を消さないと」
「お父さんとヒナさんがそんな警戒するベアトリーチェって人は一体……同じ名前の百合を助長する人なら知ってるんだけど多分別人だよね……」
「見た目だけは一緒ですが……簡単に言えば私とヒナの大切な人を傷つけた悪い大人です。誰かのミスでまた現れてしまったとの事でしてね」
「何その戦犯……どうしてそんなやばい人がミスで現れるの? 上手く言えないけどそのミスをした人は合理的に動いてるつもりで余計な事しかしてなさそう……」
「一概に否定は出来なさそうです」
「……何だか思い出して苛ついてきた。今すぐにでも倒しにいくわ」
珍しくヒナ、キレる。視界には映りませんがオーラみたいなものが出ていそうな雰囲気になっています。この状態のヒナを行かせてしまえば立ち塞がった生徒の息の根すら止めてしまうかもしれない……それは困りますね。
「ヒナ、お待ちください。確かに早いうちにベアトリーチェを討伐するのは私も賛成ではありますがまずは私が偵察してきますのでヒナはホシノ達と先にトリニティに向かってください」
「でも……!」
「感情のままに暴れてしまえば貴女の大切な人が悲しんでしまいますよ。それはヒナも望まないでしょう?」
「……分かったわ。今回は貴方に任せる。だけどもしあいつが敵対する意志を見せてきたらその時はホシノと一緒に倒す。それでいいわね?」
「構いません。元より私も彼女が存在している事はあまり好ましくない状況ですので」
……そうして私は一人アリウスに向かいベアトリーチェの動向を探るつもりだったのです。然し私は今……アツコに料理を教えています。
「ああ、そこで形を崩さないようにひっくり返してください」
「了解お父さん」
「貴女の父親ではありません」
何故こうなってしまったのか……それは全部ベアトリーチェが悪いのです。相手の気配を察知する事が得意なのかは分かりませんが私が近くに来て聞き耳を立てるや否や「黒服……」と声を掛けてきたのです。当然警戒しつつ返事をしましたが返ってきた言葉は「アツコに料理を……教えてあげてください……」というまるでベア先生みたいな事を言い始めたのです。困惑しつつもエプロンを身につけて気合の入っているアツコが視界に入り仕方なく教えている、という具合です。
「じゃあここで強火に……」
「お待ちなさい。火力はそのままで少しずつ焼いてください。強火にした所で時短になるわけでもなくただ焦げるだけですよ」
「そうなんだ。じゃあこのまま焼くね」
「それでお願いします」
ここまで壊滅的だと教え甲斐がありますね……ってそうではないでしょう。ベアトリーチェの動向を探らなければ……
「所でマダムは私にアツコの面倒を押し付けてどちらへ?」
「お母さんなら私の料理があまりにも美味しくてお腹がびっくりしちゃったんだって。だから今トイレに篭ってるよ」
「そうですか。ならば今調理しているものを食したらあまりの美味しさに昇天しそうですね」
「死んで欲しくはないけどそれくらい喜んでくれたら嬉しい」
「……アツコ、一つお伺いしても良いでしょうか?」
「どうしたのお父さん」
「父ではありません。……貴女が母親と呼ぶ存在ですが控えめに言っても毒親です。記録にはありませんが貴女も昔厳しい教育を受けて育ったのではないでしょうか?」
「うん。だけど今は優しいよ。一緒にお風呂は入ってくれないけど添い寝してくれたし」
「……添い寝ですか。あのマダムが……」
「お父さん。人は変われるんだよ。お母さんが今私に向き合ってくれているように」
「……そうかもしれませんね」
「ところで焼くのはこれくらいで大丈夫?」
「はい、問題ありませんよ。流石アツコ、飲み込みが早いですね。冷める前にマダムに食べてもらいましょう。呼んできますね」
「ありがとうお父さん」
「父ではありません」
マダムと夫婦だなんて冗談でも嫌です。
そろそろ決めないといけない事がありまして……アンケート置いておきますね