「食べて」
「……はあ」
自信満々に胸を張っているアツコと何故かお父さん呼ばわりされている黒服の二人が差し出してきたのはただの玉子焼き。……あいつが父親という事は私と黒服が夫婦ですか……最悪ですね、死んだ方がマシです。とりあえず今は目の前にある玉子焼きを食べるしか道がなさそうなのでさっさと食べるとしましょう。先程の黒い物質を食べた影響か身体が落ち着きませんね……
「(黒服の指導の甲斐もあったのか多少焦げてはいるものの形は綺麗ですね。ですが見た目が良くても中身が……という可能性もありますのでまだ油断は出来ません。……ではそろそろ覚悟を決めて食べましょう)」
箸で一口サイズに切った後、一思いに口に運び咀嚼を始めた。……驚くほど普通の玉子焼き。少し甘い気もしますが普通ですね。
「どう? 美味しい? 昇天しちゃいそう?」
「……昇天はしませんが悪くはないですね」
「そっか……」
何故寂しそうにするのですアツコよ。昇天する事を期待していたのですか? こういう時どうすればいいか分かりませんね……黒服に何か案がないか確かめ……
『頭を撫でながらありがとうと言ってみてください』
黒服は何処から取り出したのかスケッチブックにそうデカデカと書いたものをこちらに見せてきていた。何故そんな事を……なんて言っている時間はなさそうですね。仕方ありません、ここはその指示に従ってあげましょう。
「アツコ、私の為にありがとう」
小っ恥ずかしい台詞を言いながら私はアツコの頭を雑に撫でる。すると彼女は一瞬目を開いてこちらを見つめた後に顔を赤らめて下を向いてしまった。……逆効果だったのではないでしょうか?
『良いですね。そのまま抱きしめてみましょう』
その手には乗りませんよ。撫でてこんなに不機嫌になっているのですから抱きしめでもした暁には完全に嫌われて……いえ、むしろアツコに嫌われた方が……こういう思考はやめましょう。とりあえず黒服の言う通りにしてみますか……
ぎゅっ。
「あっ……」
「………」
黒服の「こいつ冗談で書いたのに本当にやるなんて……」みたいな顔に見られながらアツコの反応を確認するも未だ俯いたままで棒立ち状態で……突然背中に手を回して抱きしめ返されました。
「両想いだね」
「……は? ちょっと黒服、これはおかしくないですか? 私はアツコに嫌われていたのでは……?」
「普通は褒めながら頭を撫でられた後に抱きしめられたら喜ばれますが」
「……何ですって?」
嵌められた……とは言いにくいですね。黒服から指示があったとしても最終的に従ったのは自分な訳ですし……どうしましょう、このままアツコが更に依存してしまったら永遠に親離れ出来なく……いえ、そもそも私はアツコの親ではないのですからそこまで気にする必要は……
「お母さん好き」
「は、はあ? 別にアツコに好かれたところで私は嬉しくも何ともありませんからね。親子的に言えば良好な関係である事は望ましいものだとは思われますがこうして人前で抱きつく親子が何処にいると……」
「……これ以上親子の営みを傍観し続けるのは良くないですね。一先ず二人が抱き合っている姿を報告する為の資料として残します」
「ばっちょやめなさい黒ふ」
私の静止を聞く事はなく無慈悲にシャッターは押されカシャ、という音と共に黒服は去っていった。写真を消すように要求しようにもアツコに強く抱きしめられているので動けない。……覚えていなさい?
ーーー
似合わない家族二人の抱き合う姿をカメラに捉えた後にトリニティに向かい謎の歓迎を受けた後やけに実装された事を強調するセイアに連れられてマエストロとヒナが話している所にお邪魔する形で報告を始めた。
「……以上がベアトリーチェでした。こちらがその時抱き合っていた写真です」
「何これ」
「黒服……幾らなんでも騙すのには雑すぎるぞ。アツコを抱きしめるババ……マダムなんてヒナ依存症のあいつしか居ないだろうが」
「残念ながらこれはベアトリーチェ本人ですよ。色々思うところがあってこういう風に行動しているのでしょう」
「こうはならなくないか?」
「それはそうですが何処かの胸元のボタンが外れてチラ見えした下着を芸術と言い張る人よりかはマシかと」
「なんだその変態は……目の前に居たらぶっ飛ばしているぞ」
鏡を見ろ、と言いたくなりますがここは冷静に対応しましょう。
「その変態については置いておいて……彼女の事はどう対処するべきかを話し合うべきかと」
「放置でいいと思うぞ。どうせ試験と共に消える存在だろう? 私達に害をなさないのであれば好きにやらせておけばいい。それに今更奴が襲ってきたところでホシノとヒナと『私の』ユメが一瞬で倒して終わるだろうな」
「そうですね……ところでホシノ達は何処へ? トリニティで合流するという話だったのですが」
「『私の』ユメがホシノの娘なる人物共々部屋で歓迎会をしている最中だ。女子会との事で私と黒服は出禁だと」
「着いているなら構いません。では私はこの後ヒナと共に変態のマダムを探しに……おや、ヒナが居ませんね」
「ヒナなら先程放置する事に関して不服そうな態度を示した後に走り去って行ったぞ」
「……やはり抑えきれませんでしたか。そのまま倒してしまっても進行に問題はありませんがアツコがどうなるか不安ですね」
流石にヒナの事ですからどうにかすると思いますが……最悪な未来だけにはならないようにお願いしますよ?
昨日のアンケートですが
NTRが最多数になって死なせるが0票だったのでちょっと展開が狂いました。……狂ってるのは今更でしたね