理解出来ない。先生達は優しいにも程がある。ちょっと生徒と交流を持って振り回されているから何? 所詮データでしかないからあとで消えるから何? 存在自体が不快なのだから1バイトも残さずに抹消するしか選択肢はない筈。もし生徒を想うのならば尚更あいつは生かしておくべきじゃない。たとえ数分、数秒単位であっても。
「先生達は頼りにならない。私一人で全て片付ける」
ベアトリーチェも、それに従う生徒も全部消し去ってやる。揺るがない意思を持ってトリニティからアリウス自治区まで駆け抜けて対象の元へ向かう。
「あ、私のマイエンジェルがどうしてここにいるので」
「邪魔」
「アイノムチ!?」
突然話しかけてきた奴を蹴り飛ばす。そんな人間に構ってる暇はない。最も忌むべき悪を成敗しないと。
「痛いですわね。まさかヒナに愛の台パンをされるとは思ってもみませんでした。……あ、せっかく用意したアっちゃんNTR用の封筒が風に飛ばされてしまいましたよ!? ミカ、一緒に探してくれませんか?」
「探すのはいいけど……やっぱりNTRはダメだと思うな……」
「何を言いますか……本来私がアっちゃんの先生、そして母親なのですよ!? あっちが先に寝取りをしたのです」
「……それよりもさっきの子、追った方がいいんじゃない? なんとなく嫌な予感がするよ」
「それはそうですね。私のマイエンジェルがあんなにも焦るだなんて一体何が……まさかベアカスを倒しに……だとすればミカの言う通りNTR封筒なんて探している余裕はありませんね。急いで止めに行きますよー!」
「おー!」
ーーー
花の種を植えてから数日が経過してようやく小さな芽が顔を覗かせた。アツコ曰く「後少しで咲くね」との事ですがこの小さな芽が後少しで蕾を実らせ綺麗に開花する姿か想像出来ません。こんなちっぽけな存在が……然し少しずつ育っているのも事実。このまま私も同じように育つ事は……
「……はあ。また余計な事を考えてしまいましたね。最近一人でいる時は常に感情に浸ってしまいがちですね……考えたところで答えが出る筈がないと言うのに。……ん?」
花の世話を終えて部屋に戻ろうとした際、遠方からこちらに向かって走ってくる人影を見つけた。最初はアツコだと思い恐ろしい速さだと考えていたものの『それ』が近づいてくるにつれてアツコではない何かである事が分かっていく。物凄い毛量の白い髪、軍服に近しい衣装。わたしは『それ』の存在を嫌でも知っている。
「空崎ヒナ……」
私がそう呟いた頃には既に数M先という距離まで近づいてきており、彼女は銃をこちらに向けながら無表情で「覚えていてくれて光栄ね」と言い放った。
「……私を殺害するつもりですか?」
「当然よ。如何なる理由があろうとも私の大切な人とゲヘナ生を苦しめた貴女を生かしておく道理はない」
「例え私が危害を加えるつもりがないとしても、ですか?」
「存在しているだけで不快な人って居るでしょ?」
「………」
どうやら交渉は難しい様子ですね。遅かれ早かれ私は目の前の悪魔に存在を抹消させられる運命なのでしょう。それならば……
「……あちらに花壇がありますよね? とある生徒と花が咲く瞬間を見る約束をしているのです。それを見届けるまでは生かして頂けないでしょうか?」
「命乞いをするならもっとマシな理由を言うべきよ。貴女みたいな悪い大人とそんなメルヘンな事をする生徒がいる訳がない。それにクズは変わらないのよ」
「……ええ、その通りです。私は何も変わってはいません。これ以上生き恥を晒す前に一思いに撃ってください」
「潔いわね。貴女の中で唯一好きな部分よ」
空崎ヒナは構える。目の前に居座る悪を塵にする為に。その悪である私はこのただ彼女に撃たれるのを待っている。この茶番を終わらせたい。望んでいなかった二度目の生を。何も未練はない。このまま消える事だけが私の存在意義でありここに存在する理由で……嗚呼、アツコとの約束がありましたね。……やはり未練が出来てしまいました。それで良いではありませんか。私は悪い大人なのですから最後まで皆に迷惑をかけて消えましょう。
「……気が変わりました」
「何?」
「あの時の復讐をさせて貰いましょう、空崎ヒナ」
私は彼女には勝てない。……それでもアツコとの約束がある以上自分の命を簡単に諦めてはいけない。全力で抵抗しようではないか。そう決めた後深呼吸をして体に力を入れ始める。……どうやらあの時のように変身は出来そうですね。
「抵抗するのなら容赦なく叩き潰す。覚悟しなさい」
……さあ、あの日の続きを始めましょうか。
ベアカスの生死
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生かす
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死なせる
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封筒でアツコを寝取る