例えばこんなゲマトリア   作:スカイブルーホワイトヘアー

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抵抗

空埼ヒナの銃から弾丸が放たれる音が戦闘開始の引き金となる。弾幕を展開されて徐々に回避が困難になっていき数分が経過する頃には弾丸が体を掠り始めた。

 

「くっ……」

 

あの時よりも強くなっていますね……油断は禁物でしょう。これは殺し合い。気を抜いたら一瞬で殺されるでしょう。あちらの私と深い関わりがある空埼ヒナはゲマトリアを殺害できる技術を持ち合わせていてもおかしくはない。銃弾が直撃しないように避け……

 

「弾に気を取られすぎよ」

 

「!? ぐあっ……!」

 

恐ろしい程に力の強い蹴りを腹部に受けてその勢いのまま日当たりの良い屋上から日の当たらない場所まで落ちてしまった。たかが2階程度の距離ではあるものの地面に叩きつけられた影響か骨は数本折れていそう。……このまま防戦一方では勝てない。こちらも何か対策をしなければ。とはいえこのアリウスに残っている武器は精々ヘイローを破壊する爆弾程度だ。丁度落ちてきたこの場所には爆弾を仕込んでいた記憶がある。それを爆破させれば……いえ、死人を出すのはアツコの為にもやめておきましょう。そうなると……八方塞がりでしょうか……

 

「どうして急に抵抗し始めたの?」

 

人が思考を巡らせて考えているというのに……降りてきたばかりの空崎ヒナは自らの疑問をこちらへ投げかけてきている。

 

「死ぬのが惜しいからです」

 

「所詮データの分際で死ぬのが惜しいなんて随分と偉くなったのものね」

 

「データ……何のことですか?」

 

「教えてあげる。此処は仮想空間の中で現実とは異なる場所。私たちの先生は現在試験を受けている状態なの。貴女はただ倒される為に呼ばれたに過ぎない」

 

「………」

 

いきなり何を言い出すかと思えば……ですが私を呼び出した奴も敵役として云々と言っていました。となれば空崎ヒナの言っている事は全て事実の可能性が高い。ですが……

 

「秤アツコにどれだけ入れ込んでるのかは知らないけど虚しいだけじゃないかしら」

 

「……だから何だと言うのです」

 

「?」

 

「私はデータであろうがなかろうが初めから存在意義なんてなかったのです。貴女と生徒の可能性を信じた私に敗れた敗北者に……なので私自身もさっさと消えたいと思っています。今こうして貴女に襲われている程嫌われている事も自覚しております。……それでも私は約束をしてしまったのです。アツコを置いて立ち去らないと。一緒に花が咲く瞬間を徹夜してみようと。私という無意味な存在に価値を与えてくれた彼女の願いは叶えたい。それまでは死ねないのです」

 

「……さっきと言っている事が違うわね。復讐がどうとか言ってたけれど」

 

「それはただの言い訳ですよ。復讐なんてくだらないものに囚われる必要はないのです。私は……最初から約束を果たす為に戦っている」

 

そこまで言うと身体を変形させはじめて禍々しい姿に変貌を遂げた。今はもう見た目に拘っている余裕なんてない。持てる全ての力を出して空崎ヒナを倒さなければ。

 

「貴女の都合なんてどうでもいいわ。さっさと死んでくれる?」

 

長く語ってしまったからか空崎ヒナは苛ついている。そして先程と同じく銃を構えて……レーザーを放出した。相変わらずキヴォトスでは常識が通用しませんね……! なんて滅茶苦茶な! 然し大振りな技である以上避けるのは容易ですし撃った後に多少は隙が出来るでしょう。その刹那彼女に突撃して身柄を抑え……

 

「お母さん……?」

 

「アツコ……何故この場に……」

 

「ーーナイスアシストね」

 

一瞬の不意を突かれて一発の弾丸に体を貫かれてしまった。……よりにもよってこのタイミングで用事を済ませて戻ってきているアツコに出会ってしまうとは……

 

「お母さん!!」

 

「……そんな叫ばなくても聞こえていますよ。胸元を一発貫かれた程度で大袈裟ですね……」

 

「やせ我慢しないで!」

 

「……逃げなさいアツコ。この戦いに貴女を巻き込みたくない」

 

「嫌だ!」

 

「いいから逃げなさい……貴女に傷ついて欲しくないのです……」

 

「………」

 

そう伝えた後にアツコは下を向きながら私の上半身を起こし……渾身の右ストレートを顔面におみまいしてきました。バキッ! という音と共に再度倒れこむ私、困惑する空埼ヒナ、目に涙を浮かべつつも怒りをあらわにしているアツコ。

 

「お母さんの分からず屋!!」

 

「……喧嘩なら後でやってもらえる?」

 

「貴女誰よ! 人の家庭事情に首を突っ込まないでよ!」

 

「そう。あくまで引くつもりがないのね。残念、貴女とは現実の方で関わりがあるから傷つけるのは躊躇うけれど……所詮データ。罪悪感なんて持つ必要もないわ。そのまま二人仲良く消してあげる」

 

「待ちなさい……! アツコを傷つけるのは……!」

 

「五月蝿い」

 

空崎ヒナはアツコごと私にトドメを刺そうとしている……せめてアツコを庇って消えよう。そう思い庇う様に抱きしめてその時が訪れる事を待っていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

「何をしているのですか?」

 

桃色の天使を引き連れた女性は問う。誰もその問いには答えない。仕方なく女性は自らの目で状況を確認し理解する。そしてゆっくりとヒナに近づいていきヒナに平手打ちをした。

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