「何をしているのかと聞いているのです。普段のヒナならすぐに答えてくれるでしょう? まあ、大方予想はつきますがね。はあ……今回は軽い気持ちでいたかったのですが仕方ありません、多少は真面目にやってあげますよ。でがヒナ、貴女の口から直接聞きたいのです。何故ベアカスが負傷していてアっちゃんごと撃とうとしているのですか?」
「それは……そいつを生かしておくと碌な事にならないから……それに皆は昔と違う、変わってるって言ってるけどクズはそう簡単に変わらない。だから私が手を汚してでも存在を消そうと……」
「クズはそう簡単に変わらないと言いますが……ヒナの目の前にいる私も昔はベアカスと同じ思想を抱いていましたよ? 私の存在こそがクズは変われるという証明になりませんか?」
「………」
いきなり現れたもう一人の私は空崎ヒナを説教している。その間にアツコが治療をしてくれますが……あれだけこちらを嫌っていた筈なのに何故助なるのでしょうか……
「ヒナへの説教は後でいいです。……いえ、冷静に考えるとヒナがこの様な行動をしたのはベアカスが存在しているからで……やっぱりベアカスが全部悪いのでは? つまり私がヒナをぶってしまったのも……? こらベアカス!! 何やっているんですか!!」
なんだこの大人……情緒が不安定ですね。こうはなりたくないものです。というか何しに来たのでしょうこいつ。アツコの命が護られたのは助かりましたが……
「こらベアカス! たかが一発弾丸が身体を貫いたからと言ってそんな痛がってはいけませんよ! ほら起きなさい! と思いましたが結構血だらけですね。先に血止めをしてから話してもらいましょうか」
「貴女随分と情緒がおかしいですね。そういう気味の悪い大人の姿はアツコに見せたくはないのですが」
「あまり減らず口を叩くようでしたらミカの愛ある拳を受けてもらいますよ」
「生徒を脅しに使うのは先生として正しい姿と言えるのでしょうか……」
「そりゃあゲマトリア相手ならそう簡単に死なないと思いますし……まあいいです、私はヒナを連れて帰るので後はご自由にしてください」
それだけ言うと情緒不安定のおばさんは先程まで溢れ出る殺意を抑えられていなかった空崎ヒナとボディーガードみたいに待機しているミカを連れて去っていった。……そして流れる沈黙の時間。こういう時どんな風に会話を切りだせばいいものか……とりあえずどうにかアツコとの約束は果たせそうですね……
「お母さん」
「……はい」
「もう約束を破ろうとしないでね」
「……分かりましたよ」
それだけ言うと暫く傷口を自らの身体で抑える様にアツコは暫く抱きついてくれた。……傷口を刺激されて多少痛みが走るが我慢をしよう。
ーーー
嗚呼神よ、唯一神ヒナよ。私はとんでもない悪事を犯してしまいました……あろうことか透き通るほどに美しいヒナの顔を……顔を……
「はたいてしまったのです!!!!!!」
「そうですか」
「そうか」
「……何ですかその冷めた反応は。私が抱えている重罪を懺悔として告白したと言うのに……」
「確かに暴力は許されないと思いますね」
「生徒に暴力を振るのはクズだな」
「その通りなのですが……あれはヒナを止めるために致し方なかったと言いますか……」
「おい黒服このババア言い訳し始めたぞ」
「あまり煽るのはやめましょうマエストロ。実際その場に居合わせなかった私たちが理想的な行動を提示した所でその場にいたマダムが冷静に行動が出来るとは限らないのです。それはそれとしてもう少しマシな選択をしても良かったのではと思いますがね。まあ私としては『ベアトリーチェ討伐』ミッションを達成して頂いた以上文句を言う必要もありませんので」
そう、なんだかんだヒナが暴走したおかげでベアトリーチェ討伐のミッションが達成されているのです。あと残っているのは
・ヒナをシナらせる?
・魔女の鎮圧
・シークレットミッション
の三つですが……やはりふざけていますね。こんなもので教師の試験として成立するのでしょうか?
「ミッションなんてどうでもいいのです。今後ヒナとどう接すればいいのか分からないのですよ……叩いてしまった以上完全に嫌われてしまいましたし……」
「ヒナに嫌われるですか……絶対にあり得ないと思いますが」
「ババアがゲヘナ生に嫌われるとか天地がひっくり返っても無理だろうな」
「それに先程ホシノから『ヒナが戻ってきてからずっと前みたいに子供っぽくなってる』と連絡がきました。つまりヒナ自身もマダムに嫌われてしまったのではないかと考えているのでは?」
「何を馬鹿なことを……私がヒナを嫌うなんてあり得ませんよ」
「ヒナも同じように考えていると思うぞ。さっさと仲直りでもして頭でも吸っておけ」
「……ですがやはり気まずいですね……二人ともついてきて頂けませんか?」
「私はこれから娘と出掛ける予定がありまして……」
「私も妻と愛し合う約束があってな……」
「この薄情者」
しれっと揃ったいつもの奴ら。
シナは明日の私に託します