『今から部屋に行っていい?』
そういう連絡が来た時には「何かあったのかな?」程度に考えていたんだ。夕方くらいだからあまり時間は取れないけれど親友の頼みだから断りにくいからね。歓迎しようとお菓子とお茶を用意して待っていたんだよ。それでインターホンが鳴ったから扉を開けて部屋に迎え入れたんだ。下を向いて震えているヒナを見てね、ちょっと前の記憶が呼び起こされたんだよ。そうしたらね……
「ほしのぉ……」
うん、これは間違いなくシナシナのヒナになってるね。ヒナがこんな弱弱しくなってる時は大体ベアさん関連なんだけど……まあ何かあったんだろうね。
「どうしたの? 話を聞くよ?」
「ぼじの゛ぉ゛ぉ゛ぉ゛!!」
「だ、大丈夫?」
「びぇぇぇぇぇん!!」
びぇぇんって……前はそんな泣き方してたかな……とりあえず落ち着いて貰いたいんだけどこの時のヒナはとても繊細なんだ。具体的には単語とか物に関するベアさんとの思い出を勝手に連想して大泣きするの。玉子焼きとか紅茶とかお菓子……とにかく何でもね。アリスちゃんが前に遊んでいた地雷が何処にあるか探すゲーム……マインスイーパーみたいな名前だったかな? それに近い事をしないといけないんだ。全くベアさんったらどうしてヒナを泣かせるような事をしちゃったの……?
「ほ、ほら。落ち着いて深呼吸をした後にゆっくりでいいから何があったのかを教えて欲しいな」
「わ゛……わ゛だじ……わ゛だっ゛……わ゛ぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁん!!」
どうしよう前よりも重症だ……ごめんヒナ、私じゃ力になれないかもしれないよ……とりあえず落ち着いて貰いたいけど言葉じゃダメそうだから抱きしめてみる? 前に先生がハグをするとオキシトシン? って奴が出て良いとか言ってたから……何もしないよりはいいよね……そう考えた私は泣きじゃくるヒナを抱きしめてみたんだ。ぎゅって。これで少しは落ち着くといいんだけど……
「ほしの……?」
良かった、少しは落ち着いてくれたみたい。これなら何があったのかを聞くくらいなら出来……
「……えへへ。ほしのまま……♪」
「は? えっちょヒナ?」
「まま。もっとぎゅってして……?」
「やめてヒナ、私にこれ以上娘を増やさせないで。もうロリママとかバツイチとか言われたくないの」
「う゛ぅ゛……」
「あーごめん分かった、分かったよ。ほ、ほら。ぎゅってしてあげるからこっちおいで」
「……わーい♡」
……何これ。私の親友は何をしているの? 私は何処で選択を間違えたのかな……誰か分かるなら教えて欲しいよ……
ーーー
『黒服先生、黒服先生』
何ですか独裁者気取りの元連邦生徒会長?
『言葉に棘がありますよ。今の時代そういう風に圧をかけるのはハラスメントになるので気をつけてくださいね。……ってそんな事はいいんです! なんとですね、シークレットミッションをクリアしたんですよ!!』
は、はあ。私はただツキノとかいう未知の存在と共に夜のトリニティを練り歩く準備をしているだけなのですが
『いえいえ、ちゃんと達成していますよ。「ホシヒナの百合を誕生させる」というミッションを。ベア先生が望んだ百合カップルがホシノさんとヒナさんという事で適当にミッションとして追加したもののまさか達成されるとは思いませんでしたよ』
一つ聞いても良いですか?
『どうしました?』
試験という意味を理解しているのでしょうか? 百合カップルなんて先生の試験としては全く必要のないものだとは思いますが
『楽しければ良いと思います』
だから破綻するんですよ。私は早くこの茶番を終わらせたいのです。ホシノの教育実習が待っているのですよ。
『それじゃあ残されているミッションをクリアしてパパッと試験を突破しちゃってくださいね』
……はあ。魔女の鎮圧だなんてどうしろと言うのでしょうか?
魔女よりもシナをどうにかしないと