決戦前の一日。それぞれがやりたい事をやって過ごした後に皆が脚を向かわせるのはアビドスの奥地にうっすらと見える方舟。先生試験を終わらせる為に皆が一丸となって……はいなかった。
「私はまだアリスにパパと言われていたい」
「ヒナとランデヴーし足りないです」
「……台無しなのですが」
「黒服は言われ慣れているから気にしていないのだろうがアリスという愛娘に『パパ』と呼ばれるのは幸福なのだぞ? もはや崇高だな」
「些細な日常に崇高を見出すのはありだとは思いますが私の娘に関わる行為を崇高にしないでください」
「今は私の愛娘だ。文句は言わせん」
原型を留めていないマエストロとヒナ依存症のベア先生、そしてロリ婚の三人とそれを慕う生徒達(ユメ先生20歳も含む)は無事に先生が待つ方舟の入り口に着いた。……ものの。
「お父さん、砂漠なんて歩かせないでよ……暑くて干からびそうだよ……」
「そうですよ、黒服の娘だと言うから手を出さずに我慢していると言うのにこんな汗でピンク色の下着が透けている子を見たら襲いたくなってしまうでしょうが。黒服は反省しなさい」
「ホシノ、マダムをしばいてください」
「うん」
ホシノにしばかれて変な奇声を発しているマダムを他所に入り口の扉を眺めてみる。確かマエストロが前に持ってきたこの方舟を攻略した際の情報ではアリスが破壊して侵入したとの記録がありますが……今回はなんと言えばいいのか……
『先生試験最終面接会場』
と手作りの看板に書かれているのはどう反応すれば良いのか分かりませんね。緊張感の欠片もありませんが油断していたら奇襲を受けるかもしれません。気を引き締めて行かねばなりませんね。そうして容易く開いた入口を抜けてエントランスに脚を踏み入れた際、館内放送が流れ始めた。
『"親愛なる先生達……うーん、なんか違うね。もっと柔らかい言い方を……あっもうマイクのスイッチ入ってるの? えっと……方舟にようこそ!"』
……嗚呼、先生も駄目そうです、緊張感が無いように見受けられます。シリアスは微塵にも消え去ってしまった様ですね。
『"此処まで色々な困難があったと思うけれど……それで得た経験を活かして私の元まで来てみて。道中には試練を色々配置しておいたから飽きないと思うよ。ただし……もし一つでも達成出来なかった暁には……ホシノとヒナ、そしてユメ。三人にスクール水着を着てもらうよ!!"』
……先生は変態でないと務まらないのでしょうか?
「なんて奴だ……! ユメのスク水姿は私だけのご褒美なのだぞ!?」
「そうですよ! ヒナのスク水は私の癖なのです! 他の人に見せるだなんてとんでもない!!」
……この二人はどうしようもないですね。とはいえ私もホシノのスク水姿を誰かに見せたくないので独占したい感情は理解できてしまいますが……
『”まあ恐らくゲマ先生達にとっては簡単すぎる問題だとは思うけれど頑張って私の元へ辿りついてね”」
「……とりあえず進みましょうか。早く終わらせてホシノの先生研修も兼ねて百鬼夜行にいかねば」
「そうだね。不思議な経験が出来て楽しい場所だったけどそろそろ現実に戻らないと」
『”あっ一つだけ伝えておくね。今現実だと黒服とマエストロがぶっ飛ばされてから一日くらいしか経過してないから安心してね。この試験の運営的な子が言ってたから間違いないと思うよ”』
「それは助かる情報ですが……その運営的な立ち位置の方にあまり良い印象を持っていないのです」
「最初から気に食わない奴だったな」
「私の知るあの子よりもはっちゃけていましたね。むしろあれが本来の姿なのかもしれませんが……」
『”……なんか迷惑をかけてるみたいだね。もう一人の私が叱っておくから許してあげて欲しいな……”』
そう言うと申し訳なさそうにゆっくりと『第一の試練』と書かれた扉が開きその奥で一人の生徒が椅子に座って待機しているのが見えた。角の生えた桃色に見えなくもない髪色の生徒が。恐らく彼女が第一の試練を担当するのだろう。まるで社長の様に堂々と椅子に座り待機している。
「待っていたわ。異形の先生方」
涼しい顔をしながら立ち上がりこちらに小さな紙を手渡してまた椅子に座った。紙の正体は名刺だった。
「私は陸八魔アル。異形の先生方、宜しくお願いするわね」
彼女は先生が呼んだ存在なのでこちらとは初対面なのでしょう。昨日唐突に語りかけてきた元連邦生徒会の方も先生が呼びだした生徒は記憶を引き継がないとも言っていましたね。
「アル……かっこいいけど暑そうだね」
「遠目に見ても透けているわね。このままだとマザーに美味しく頂かれるわよ」
「そうですね。記憶がないという事はつまり新鮮な反応を楽しめるという事。そんな無防備な姿を見せられてしまえば手を出さない方が無作法というもの……ここは私に任せてください、このアウトロー社長をどうにか打ち倒して第一の試練を突破して見せましょう」
ホシノとヒナが哀れみの目を向けながらもまだ何も気づいていないアルはベア先生の勝負を受けて無事に美味しく頂かれてしまったとか。
「先生、第一の試練が突破されたよ」
「"そうだね。とりあえずベア先生は失格にしておいて"」
「ん」