「”思っていたよりも早めに着いたね……正直に言うと焦ってるよ。朧げに覚えている前世の記憶ではもっと苦労させてた気がするんだけど……”」
「試練の数と内容が……」
「”生徒が考えた試練なんだから私は否定しないよ。それにまだスク水を着てもらうチャンスは残っているからね。焦ってはいるけれど慌ててはいないんだよ”」
「そのスク水に対する熱意は一体……まあどうでもいいので早く試練を始めてください」
「”スク水は大事なんだけど……話が進まなくなっちゃうからこの話はやめとこう。それじゃあお待ちかねの最後の試練の内容をお伝えするね”」
『シロコラッシュ!!ん』
……?
「”実は私これでもこの試験のラスボス枠として呼ばれたんだよね。4徹状態だったから安請け合いしちゃって。その時にこの当時の状態を再現した大人のカードを渡されたんだけど……何故かシロコしか呼べないんだよね。どうしてかを聞いても『プレナパテスはそういうものなんです』とかよく分からない事を言われるし……”」
「は、はぁ」
「”しかも『道中は好き勝手やってもいいですけど最終的には戦って負けて下さい』って言われたんだよ? 酷くない?”」
「それは中々酷いですね……」
「”でも戦わないとこの試験が終わらせられないみたいだから……訓練を付ける感じでシロコ達の相手をしてほしいんだ。ベア先生とその当番以外ならだれでも構わないからさ”」
「おやおやおやおや、シャーレの先生ともあろうお方が私を差別するのですか? 流石に許せませんね。いくら寛大な心を持ち合わせている慈母のようだと言われている私でも怒りがこみあげてきますよ」
「"アルに手を出していたでしょ? あの選択は先生として間違えていると思うんだよね。だからベア先生は失格"」
「あれが私のやり方ですけど? え、もしかして僻んでるんですか? 生徒と愛し合えてより親密な関係になれる私の事を?」
「"ちょっと羨ましいとは思うけれど未成年に欲情するのは大人としてダメだと思う。正直なところまだアツコに振り回されてるベアトリーチェの方が僅差で大人らしさがあるよ"」
「しかしあいつは私からアっちゃんをNTR……」
「"とりあえずベア先生以外で相手をして貰いたいな。黒服とマエストロ……あ、奥さんの方も含めてね(ふふ、ベア先生を失格にすれば強すぎる二人のうちヒナの方を戦闘参加させられなく出来る。これで多少は善戦出来るかもしれない……! 元々失格ではあったけどヒナを抑えられるのはとても大きい……!)"」
先生がベア先生を失格にした理由は彼女の当番になっているであろうヒナを抑えホシノだけを警戒すればいい、という作戦をたてる為だった。いくらホシノが強くても一人だけでは限界があるというもの。そこを自らの指揮力で賄い少しでも良い勝負をしたい。そういう意図であった。然し先生は一つ誤解をしていた。『現在ヒナはベア先生ではなく黒服の当番である』事を知らなかった。つまり……
「では私とその当番が相手になりましょう」
名乗りを挙げたのは当然黒服。これは予想していたようで「"やっぱりホシノが相手になるんだね……だけど私のシロコも簡単には負けないからね!"」とやる気に満ちた発言をしていた。
「では先生の了承を得ましたのでホシノ、そしてヒナ。早く終わらせてしまいなさい」
「「了解」」
「"黒服、ちょっと待って。ヒナはベア先生の当番でしょ?"」
「いえ私の当番ですが」
「"そういう笑えない冗談はやめてほしいな"」
「冗談ではありません。現にヒナは今アビドスの制服を着用しています」
「"……言われてみれば確かに!? 普段のカッコいい制服も似合うけど他の制服も似合うね!"」
「そういう事ですので私はホシノとヒナの二人で先生の試練を突破させて頂きます」
「"あー……ちょっと待っててね。準備するから"」
……どうしよう、どうしようどうしよう。完全に誤算だった。人外先生とその集団の中に埋もれていたから初見で気付かなかったけど冷静になって考えてみればこの箱舟に入ってきたときからずっとヒナはアビドスの制服を着ていた……なんなら誰も触れていないけどミレニアムの制服を着てリオを縄で拘束しているフウカもいる……なにこの集団? ……落ち着こう、人生はいつだって上手くいくとは限らないからね。想定外は想定内の精神でいこう、うん。とにかく今力を貸してくれる生徒を確認しよう。まずは中学生シロコ。……忘れてたけど過去から連れてきてまだ戻してなかったなぁ……そろそろタイムマシンを借りて元の場所に返してあげないと……次にシロコライディング。この子に関してはちょっと癖に刺さる……じゃなくて。何故かあまり良い印象がないんだよね。上手くは言えないけれど青天井で水着ホシノを狙っている時にアビドスのマーク+海岸が見えて喜んだ後にセリフを見て絶望した感覚に近いんだ……次に水着シロコ。この子は……過酷だね。次にサンドウルフ・バイジ。……? 翻訳を間違えたのかな? 見た目はシロコだけど何かがおかしい……まあいっか。そして最後は初めて私と出会った親愛なる始まりのシロコ高校二年生。私が大人のカードで呼べるシロコはこの五人。それと……今こうして隣にいて支えてくれているシロコ。……ごめん。やっぱり色々考えたけど私にはダメかもしれない。確かに私は敵としてこの場に居て倒されるべき存在でもある。……それでも私はシロコが負ける姿を見たくない!
「"……お待たせ。ようやく覚悟が出来たよ。それじゃあ……試験を始めようか"」
そう言い終えて真剣な表情を見せる先生はこの試験の最大の障壁として立ち塞がった。
最終決戦が今、始まろうとしていた。