例えばこんなゲマトリア   作:スカイブルーホワイトヘアー

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小鳥遊ホシノ一年生と黒服
黒服と対策委員会活動記録#1


 

 

ーーーアビドス高等学校 旧校舎の中庭

 

黒服「…こちらでよろしいのですか?もっと見晴らしのいい場所にしなくてもいいのです?」

 

ホシノ「はい。先輩はここがお気に入りの場所でしたから」

 

黒服「では積もっている砂をどかしましょうか。このような作業はあまり好みではありませんが…」

 

ホシノ「これくらいなら私一人でも出来ますので、黒服さんは休んでいても良いんですよ?」

 

黒服「そうはいきません。顧問になった以上責任がありますから。生徒が頑張っているのに大人が見ているだけだなんて示しが付きませんからね」

 

ホシノ「……そうですか。では日が暮れる前に終わらせましょう」

 

何故旧校舎に居るのか。その理由は少し前に遡る。

 

ーーーアビドス高等学校 生徒会室(回想)

 

それはアビドス廃校対策委員会が設立されてすぐの話。

 

黒服『出来る事から始めていきましょう。ホシノは今どうしたいのですか?」

 

ホシノ『まずは…ユメ先輩のお墓を作りたいです』

 

黒服『墓ですか。もうユメとの区切りはついたのでしょうか』

 

ホシノ『まだついてはいません…心のどこかで先輩は生きているんじゃないかと何度も考えました…ですがユメ先輩の為にも立ち止まっている時間はないと思って…』

 

黒服『ホシノは強い子ですね。貴女がそうしたいのであれば私は協力を惜しみません』

 

彼女は強い。しかし故に大切なものを失った時には容易く砕かれてしまう。だからこそそこに付け入ったのだが。

 

ホシノ『ありがとうございます。既に場所はもう決めているんです。行きましょう』

 

ーーーそして現在

 

黒服「これで砂は大方取り除けましたね。ホシノ、穴掘りは任せても宜しいでしょうか?」

 

ホシノ「大丈夫ですが…何か問題がありましたか?」

 

黒服「埋めるならば棺に入れて綺麗な姿の方が良いと思いましてね。棺を作ろうかと」

 

ホシノ「…ありがとうございます。では棺はお任せしますね」

 

黒服「ええ。そんなに時間はかけませんので。目を離しているうちに無理はしないでくださいね。貴女はまだ体調が万全ではないのですから」

 

ホシノ「はい。気をつけます」

 

ホシノの視界に映らないほどの位置で端末を取り出す。そう、これはあの時ビナーに接続した端末だ。ユメの遺体を冷凍保存したあの時からこうなる事を想定してあらかじめ生成しておいたのだ。きっとホシノならこう言うだろう、と。

 

「さて…ユメを入れましょうかね」

 

冷凍保存していたユメの遺体を取り出して棺にしまう。安らかに眠るその姿はとても神々しい。彼女も神秘を紐解く鍵の器になれる存在だったのだろうか。そんな些細なことを想像しながら棺をホシノがいる場所まで運んだ。

 

ホシノ「えっ……早すぎませんか!?」

 

黒服「クックック…大人の力を使えばこの程度容易いものです」

 

ホシノ「ありがとうございます……黒服さんが居てくれてとても助かってます」

 

黒服「私は感謝される様な事はしておりません。ただ自分の利益の為に行動しているに過ぎないのです」

 

ホシノ「そうですか……それでも助かってる事には変わりがないので……」

 

黒服「それよりも…先程から土を掘る速度が遅くなってますよ。体力の限界なのでは?」

 

ホシノ「お見通しでしたか……体力には自信があったのですが……」

 

黒服「全く…無理はするなと先程言ったばかりでしょう?あとは私がやりますからホシノはしばらく休んでください」

 

ホシノ「はい……」

 

黒服「貴女はなんでも一人で背負おうとしていますが私がいる以上そんな事は許しませんよ。人に頼る事を覚えてくださいね」

 

ホシノ「黒服さん…はい、分かりました」

 

日陰に座って休んでいるホシノを横目に棺が埋まる程の穴を掘り進めていく。とはいえホシノがほとんど終わらせていたので早いうちに作業が終わった。後は棺を埋めるだけだ。

 

黒服「ホシノ、いくつか花を用意しました。ユメに手向けるものを選んでください」

 

ホシノ「…はい」

 

彼女が手に取ったのは空色の花と桃色の花。

色鮮やかな二つの花を棺に入れるホシノ。

 

ホシノ「ユメ先輩。ありがとうございました。あなたの想いは私が受け継ぎます……うぅ…」

彼女は耐えきれずに涙を流していた。今まで堪えていたものを吐き出すように。人知れず亡くなったアビドス最後の生徒会長。その供養は大切な人に見送られながら幕を閉じた。

 

ーーーアビドス高等学校 仮眠室

 

泣き疲れて眠ってしまったホシノをベッドに寝かせて空を眺める。月明かりが照らす夜。

安らかな寝息しか聞こえない程静かだ。

 

黒服「ヘイローは消えている…警戒はしていないようですね」

 

無防備に寝ているホシノ。いくらなんでも不用心すぎるとは思うがそれ程信用してくれているという事なのだろう。その信用をいつか打ち砕くかもしれないが。

 

黒服「その時が来るまでは顧問として良好な関係を築いていましょう…クックック…」

 

夜が明けていく。朝になればまた対策委員会としての活動が始まる。それまではこの静寂に包まれた心地の良い時間を堪能するとしよう。




ここまで読んでいただき誠に有難うございます。

次回の更新ですが平日は仕事の都合上投稿が遅れる可能性がある事をご了承の程よろしくお願い致します。
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