「おはようございます♪」
「………」
起きた途端セリナと目があった事から推察するに眠りについてからずっと見守られていた可能性がありますね。何だか気味が悪くなってきました……
「起きて早々申し訳ありませんが身体検査を行いたいので服を脱いで頂いても良いでしょうか?」
「申し訳ないと思うのであればやめて頂きたいのですが」
「それは出来ません! 病人なのですから念の為に確認するのは大切な事なんですよ? 何事も早期発見が大切なんです」
……何故こうも話が通じないのでしょうか? 然しホシノ以外の人間に裸体を見せるのは嫌なのでどうにか言い訳をして見逃して貰いましょう。
「……分かりました。但し後でも良いでしょうか? モモトークを交換しておきましょう。具合が悪くなった際には連絡しますのでその時に検査をお願い致します」
「先生がそこまで言うなら……ですが少しでも体調に違和感を覚えたら直ぐに連絡してくださいね!」
「はい。それでモモトークですが……」
「あ、先生が寝ている間に登録しておきました♪」
このセリナという生徒、恐怖に染まっているのではないでしょうか? 見た目は無害そうでありながらこうも私相手に恐怖心を抱かせるとは……まあ、一先ずはどうにか納得して頂けたので保健室から出てホシノに連絡して彼女の元へ向かう矢先……また誰かに絡まれました。
「やあ先生、会えて嬉しいよぉ〜」
……またピンク髪の生徒ですね。格好から推察するに此処はトリニティなのでしょうか? はあ、また面倒な事になりそうですね。
「退院おめでとう。とりあえず……何か甘いものでも食べる?」
「その前に貴女の名前を伺っても?」
「あぁ〜まだ自己紹介してなかったね。柚鳥ナツだよ。先生と今日この場で会えたのはカラメルが上手く混ざり合って絶妙なハーモニーを奏でるプリンの様に奇跡的で……」
マエストロ、トリニティの生徒は癖が強過ぎます。何ですかこの生徒? 何を言っているのか全く理解できる気がしません……
「ナツさん、申し訳ありませんが私には既に運命の人が居るので……貴女と語り合う時間がないと言いますか……」
「それは悲しいね。これが失恋の味なのかもしれないね……」
……よく分かりませんが諦めていただけたのでしょうか? この生徒、理解が難しい言葉を発していますが先程のセリナよりかは害のない生徒ではあるのかもしれません。適切な距離を保ってくれている辺りホシノの粛清は免れそうです。
「もし機会があれば一緒にスイーツのロマンを求めて旅をしよう。当然前世の妹も連れて行くからね」
「前世……? まさか貴女は前世を理解できる神秘を……いえ、それはないでしょうね。分かりました。機会があればその前世の妹も交えて甘味を求めて彷徨いましょう」
「おっけ~」
……本当にあっさりと解放してくれましたね。束縛力が低い生徒は有難い話で……
「ちょっとあんた!!」
「今度は誰ですか……」
またピンク髪の生徒に……トリニティはピンク髪の生徒が多いのですか? 一難去ってまた一難とはこのことでしょうね。この子がナツの様に物わかりの良い子であれば良いのですが……
「さっき保健室で裸とか言ってたでしょ!?」
「言ってないですね」
「あ、そう……? って嘘つかないで、私は聞いたのよ!?」
「確かに身体検査の為に服を脱げとは言われましたが……」
「身体検査!? 服を脱げ!? し、死刑!!」
嗚呼、この生徒は面倒ですね。確かに高校生という年頃の子であれば思春期思考になっていてもおかしくはないかと思われます。……ですが死刑は言い過ぎなのでは?」
「正直に白状しなさい!! 保健室でエッチな事をしたんでしょう!?」
「してません」
「うるさい! 死刑! 死刑なんだからぁ!!」
「はぁ……面倒ですね……」
どうにかしてこの生徒を落ち着かせないとホシノが襲来してこの子が塵一つ残さないほどに粛清されてしまうかもしれませんね……然し初めて出会う生徒をどう落ちつかせればいいのか……
「どうせ救護騎士団の子に欲情して襲ったんでしょ!?」
「していません」
「じゃあなんで服を脱ぐだなんて会話するのよ!?」
「私が聞きたいです」
「……本当にエッチな事をしてないの?」
「していません」
「……ごめんなさい」
「構いません。では急いでいるので通していただいても宜しいでしょうか?」
「う、うん」
頑なに否定し続けた結果誤解を解いて頂けたみたいですね。起きて早々三人のピンク髪生徒に妨害をされるとは……先生試験の特典とやらが悪さをしているに違いありませんね。ですがその障壁を突破できたのでこれ以上邪魔が入る事はないでしょう。ようやくホシノに会えそうですね……暫くトリニティには近寄らないようにしましょう……そう思いながら校門を抜けたところで新品の黒いスーツを着てそわそわしている待ち望んだ子がうろちょろしているのが視界に入りなんだか初々しい。
「ホシノ、お待たせしました」
そう声をかけるとこちらを見て「先生!」と小動物の様に近寄ってくる。そのまま腕に抱き着いてきてうへへぇ~と満足そうにしている姿を眺めて『嗚呼、やはりホシノは素晴らしいですね』と脳内で完結させることが出来た。
「体調は大丈夫?」
「はい。多少は痛みますが支障は有りませんよ」
「そっか。もし何かあっても私が支えるから安心してね」
「ええ、頼りにしていますよ。……それとそのスーツ、よく似合っていますね」
「……ありがと///」
さて、随分遠回りをしてしまいましたがそろそろ始めましょうか。ホシノの先生実習を。