例えばこんなゲマトリア   作:スカイブルーホワイトヘアー

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砂狼ランドなんて誰が覚えているのか

「ファーザーの為に『ゲヘナ特製経口補水液』を持ってきたわ。可愛い来客さんには別の飲み物を用意したわ」

※経口補水液とは熱中症や脱水症状の時とかに飲むと良いやつ

 

をヒナが持ってきてくれた。イブキにはオレンジジュースを用意しており用意周到とも言えなくもない、そんな感じだった。ヒナ自身は水を飲んでおりストイックな姿勢を見せている。一先ず貰った経口補水液を口に含んでみたもののお世辞にも美味とは言えない味だった。

 

「さて、今日の分の書類整理は終わった事だしこのままぐうたらしよう。暑いし面倒臭いし」

 

「? 数枚程度しか整理をしておりませんが」

 

「いいのいいの。むしろ今のゲヘナとしては多かった方よ? ここ最近は皆ファーザーに嫌われたくないからって悪事を働かないし…むしろ奉仕活動を積極的に行うようになっちゃってこの前集計された『全学園平和区域ランキング』で1位に輝いたじゃない」

 

「大半が私に対して望む行為ですし治安が良いのは確実でしょうね」

 

私の知るマダムに毒されたゲヘナも治安は良かったと聞いているので大人が過剰に関与すると一番過ごしやすい自治区になるように出来ているのかもしれない。然しホシノを超える神秘を持つ生徒が居ないので過去の自分なら絶対に見向きはしない筈…何かしらの事象が起きたと仮定してもホシノを差し引いてこの場所に、ましてやファーザーなんて慕われるように立ち回るとは到底思えず…

 

「ねえファーザー」

 

「どうされました?」

 

思考を巡らせている間にヒナがこちらを呼んでいる事に気づいた。彼女は何かを考えこんだ後自然な表情で微笑み何かを呟いた。…正確には理解できる言葉ではあったがイブキが見ている都合上触れてはいけない言葉であると理解して聞こえないふりをした。「ねーねー、今の言葉ってどういう意味?」なんて聞かれた暁には全面戦争に発展しかねない危険性を秘めている為この言葉は墓場まで取っておこう。

 

「遠慮しておきます」

 

「そう、それは残念ね」

 

あっさりと引き下がってくれたのは非常に助かるものの二度とその言葉は口にしない方がいい、とヒナに忠告した。彼女は「確かにそうね」と少し残念そうにしながらも納得してくれた。

 

「それはそれとして今日も暇だし砂祭りでも見に行く?」

 

「砂祭り? アビドスで行われているものですか?」

 

「ええ。この前ホシノから招待状を貰ったしせっかくなら平日に行こうと思って」

 

これは絶好の機会だ。アビドスに行けるとなれば多少の構造が見えてくるかもしれない。そしてヒナとホシノに交友関係があるのを知れたのも大きい。私の知る世界とあまり大きな違いがないのであればまだドッキリの可能性もある。

 

「早速行きましょうか」

 

「ええ。準備をして向かいましょう」

 

 

 

 

 

夏の装いに身を包んだヒナ、イブキと共に向かったアビドスは頭を抱えてしまう程混沌としていた。アビドス砂祭り…もとい『砂狼ランド』と看板が設置された理解に苦しむテーマパークが建設されていた。ヒナは若干引いているがイブキはとてもテンションが上がっている。

 

「…これが砂祭りなのですか?」

 

「多分…」

 

「わぁ…! 遊園地だ! パパ、早く入ろう!」

 

「仕方ないですね…」

 

人が入っていい施設か疑わしいものではあるが想定以上に力が強いイブキに引っ張られて入ってしまった。コードを読み取る機械にチケットをかざすとゲートが開いてしまった。嫌な予感しかしないものの残念ながら行くしか選択肢はない。イブキに先導されつつ進んでいくと…思っていたよりはマシな出来のアトラクションが視界に飛び込んでくる。『銀行強盗シミュレーション』『ん、私とあっちむいてホイをやるべき』『50km砂漠横断サイクリングツアー』…やはり碌でもない。その割には人で結構賑わっているのも謎ではあるが…

 

「…あっ、お面屋だぁ~♪」

 

「勝手に行ったら逸れちゃうわよ。…もう、仕方ないわね」

 

祭りといえばで馴染み深いお面屋にイブキとヒナは夢中になっている。何故か鉄よりも硬くて丈夫なお面という気になるものも見えるが…それよりもようやく一人で行動する機会を得られた。さりげなく気配を消してその場を後にしホシノを探そう。

 

「ん、黒服黒服」

 

「はい?」

 

「私とあっちむいてホイをやるべき」

 

「お断りします」

 

突然話しかけられたかと思えばアビドスの生徒で一番思考が読めない最悪の問題児ことシロコだった。普段通りにあしらってしまったが彼女は私の知るシロコと変わらないのだろうか?

 

「そういえばホシノ先輩が探していたよ」

 

「ホシノが? 丁度会いに行こうとしていましたが…彼女はどちらにいるのですか?」

 

「百鬼夜行で先生体験してる」

 

「成程」

 

随分と強引な誘導ではあるもののホシノは自身の夢の為に行動しているようだ。あんなに依存していたホシノが自発的に行動するとは…彼女の成長を感じる…然しそうなると些か疑問が生じる。もしこの世界が別の何かではないとするのなら何故私は『ファーザー』と呼ばれてゲヘナの生徒達に慕われているのか?

 

「世界がそうなったからじゃない?」

 

「謎理路はやめてください」

 

「ん」

 

原因は依然として不明ではあるもの普段と変わらないシロコの姿は無意識のうちに心に余裕を持たせてくれていた。

 

「あ、もしかしたら私のせいかも」

 

「…何をしでかしたのです?」

 

「砂狼ランドを建設する為に砂漠を開拓してたら最終決戦で使いそうな箱舟が出てきた。それで気絶してた黒服を乗せて実験体にしたせいかも」

 

この砂狼…最悪だ…

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