例えばこんなゲマトリア   作:スカイブルーホワイトヘアー

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あーあ、やっちゃった

朝日が顔に触れて目が覚める。昨日は仕事部屋に布団を持ってきてもらってそのまま寝たんだった…と寝起きの頭を回転させて状況を把握する。

 

アビドスよりも過ごしやすい気候、そう考えてしまう程にのどかな朝を迎えた。花は咲き小鳥は歌い太陽の光が暖かい。家族がこの場に居たら最高の朝になっていただろう。

 

「おっといけない。笑顔でいないと先生が帰ってきたときに心配されちゃう」

 

顔を二回叩いて上を向き作業部屋を後にする。そのまま顔でも洗おうと洗面台へ向かう際中、応接室もとい休憩室が賑わっている事に気づいた。扉を開けて覗いてみるとユカリが小さな子供と遊んでおり楽しそうに過ごしてそう。途中でこちらの視線に気づいたのか笑顔で「おはようございますの!」と挨拶をしてくれた。

 

「おはよう、朝から元気だねぇ…その子は?」

 

「見回り中に見つけましたの。どうやらお父様と逸れてしまったそうなのです!」

 

迷子か…服装的にはゲヘナの子っぽいし家族で旅行にでも来てたのかな? とりあえず寝ぼけ眼を擦ってしゃがんで目線を合わせてから話をしてみる。

 

「私はホシノって言うんだ、宜しくね。君の名前は?」

 

「イブキはイブキだよ!」

 

「元気があって良いね。それでイブキちゃんはお父さんと逸れちゃったのかな?」

 

「うん。黒いトンネルみたいなのをパパが通ってったからこっそりついていったの」

 

「それで百鬼夜行に来たんだね。黒いトンネル…そんなものあったかな…」

 

そうは言いつつもなんとなく原因は分かっている。きっとマエさんやベアさん辺りが何かをしたんだろう。だからそこまで気にする事ではないと思うけれどそうなるとこの子は誰の子なんだろう? ゲヘナだしヒナの子? それにしては11歳くらいに見えるし流石に違うかな…そもそも全部憶測だし考えても仕方ない。

 

「とりあえずイブキちゃんの親を探しながら見回りしよっか~」

 

こうして今日も私の先生研修が始まった。…正直な話見回りは好きではなかった。失踪した先輩を探して砂漠を歩いたあの日からずっと。最近は一人ではなかったので苦い思い出も忘れられていたけれど数日先生と会えていないからか心にもやがかかったように嫌な記憶が不意に過ってしまう。昨日の見回りではそれでぼうっとしてユカリちゃんに心配されたっけ。だけど今日は…何だか胸の奥が暖かくなるというか…その理由は何となくわかる。『先生が近くに居るんだ』。第六感って言うのかな、それとも先生がよく言ってる最大の神秘? が教えてくれてるのかも。だからその気配を追って会いに行きたい、全てを放り投げて行きたい。先生はきっと受け入れてくれる。…でも、今は先生代理としてイブキちゃんの親を先に探さないといけない。これが私なりに考えた大人の階段の登り方、かもしれない。

 

 

 

ホシノが大人に近づいていく中ストレスなく快適に寝れた黒服は旅館に用意されていた部屋着に着替えて窓から外の景色を見ながら暖かい緑茶を嗜んでいた。同期(主にベアトリーチェ)や生徒(主にシロコ)に与えられたストレスは多少軽減されて精神的にも安定、身体的にも好調だ。チェックアウトまで時間があるのでもう暫くゆっくり過ごしていよう。

 

先程巫女服の見覚えがありそうな従業員に用意してもらった朝食も落ち着く味わいで心が満たされた。尤も、昔ホシノが焼いてくれた所々焦げている卵焼きには一歩及ばなかったが。

 

「さて、そろそろホシノに会うとしましょうか」

 

独自の技術で一晩の間にクリーニングを終えたスーツとアビドスの腕章、少しほつれた青いネクタイを付けて宿を後にした。神秘の反応を頼りにホシノの位置を特定し足取りを軽くして彼女の元へ。この辺りの地域は人口密度が高く活気づいている。近いうちに大きな祭りがあるのか『お祭り運営委員会』なる集団が先導して屋台や花火、神輿と呼ばれるものを準備しているようだ。時間があれば先生研修で四苦八苦しているであろうホシノを誘っていってみようか。参加できるほど治安が良ければ…の話にはなるが。

 

「あ、黒先じゃん! お久ー!」

 

背後から声を掛けられそちらを向くと前に知り合った百花繚乱の部長、アヤメがこちらに手を振りながら走ってくる。

 

「お久しぶりです。ホシノがお世話になっております」

 

「こちらこそ! ホシノさん、うちのメンバーとも相性が良いのかいつも以上に楽しく過ごせているよ」

 

「それは良かった。…それでホシノは今どちらに?」

 

「多分委員会の本部に居るんじゃないかな。…あ、そういやさっきユカリから『ホシノ先生と朝の見回りに行ってますの! それと迷子の子の親探しも!』って連絡来てたっけ。案外その辺でばったりと会うかもね」

 

「成程。彼女なりに行動しているようですね。子供の成長は早いものです」

 

「とりあえず一緒に本部行く?」

 

「はい」

 

アヤメと横並びに歩いて百鬼夜行の現状、ホシノの様子を聞いていると正面から何かが走ってきてそのまま足に抱き着いてきた。

 

「パパ見つけた!」

 

イブキだ。パパという発言から推察するに別の世界線で出会った方だ。この際そこまでは良い。問題はそんなことではない。数メートル先に目を見開いてこちらに視線を向けているホシノと目が合ってしまった事が一番の問題だ。嗚呼、これが昨日睡眠する前に感じていた嫌な予感だったのだろう。




どうでもいい話ですが

私はメインストーリーの百花繚乱2章を見ておりません。多分今後も見ません。なので私の中でのアヤメイメージは
・金髪で少しギャルっぽい常識人で今後も貫きます。
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