長く感じたものの短かった一日も終わりが近づいている。アヤメちゃん達と別れて先生と手を繋ぎ仕事部屋の仮眠室ではなく百花繚乱の部室とは少し離れた場所にある先生用の休憩所として用意された小さな家。リビングにてちゃぶ台という机に先生の料理が並べられた。「頂きます」と手を合わせた後箸を手に取り口に運ぶ。一口入れて咀嚼するだけで先生の愛を感じる優しい味付けが全身に染み渡って喜びを感じている。
「久しぶりの先生が作ってくれた料理…最高だよぉ…」
「それは良かった。お替りも用意してますよ」
「わーい!」
そうして欲望のままに一週間くらいは食べられていなかった先生の手料理を満足するまで食べた。ちょっと食べすぎて苦しくなるくらい。
「ご馳走様でした!」
「お粗末様です」
やっぱり先生の手料理に勝る食べ物はないよねぇ…と身体を伸ばしてリラックスしている中先生がタオルとパジャマを渡してきた。お風呂に入ってきなさいという合図だった。
「ねえ先生、一緒に入って…や、やっぱり何でもない!!」
「? そうですか」
思わず恥ずかしい事を言いかけたけど誤魔化して風呂場に駆け込んだ。制服を洗濯籠に放り込んで何故か用意されている普段使っていたシャンプーを髪に染み込ませて泡立て汚れを落としていく。そして一旦洗い流してから念入りにリンスを塗り髪を整えた。身体も汚れ一つ残さないくらい懇切丁寧にボディータオルで洗い泡を流す。念の為に2回ほど身体を洗ってから湯船に浸かった。
「うへぇ…」
程良い温度のお湯に浸かるとつい声が漏れてしまう。そういえば先生が行方不明になった時からずっとシャワーばかりでお湯に浸かってなかったなぁなんてしみじみと考える。先生と再開できて心に余裕が持てたのと同時に久しぶりにゆっくりとお風呂に浸かれるのは良いなぁ…これで明日からもっと頑張れそうだよ…
「ホシノ、お風呂上がりの牛乳は何味を希望されますか?」
「いちごでお願い〜」
「了解致しました」
風呂場の扉越しに聞こえる先生の声にまた安心感と少しばかりの恥ずかしさに頬を赤く染めて声にならない声をあげて悶える。こういう些細なやりとりですら嬉しくなってしまい気分が良くなった。
暫く経ってお風呂から出るととても冷えたいちご牛乳がパジャマの隣に添えられていた。身体を拭いてパジャマを着てから一気飲みするとこれがまた火照った身体に染み渡って気持ちが良い。やっぱりお風呂上がりの牛乳は最高だよ。その後瓶を回収箱に入れてリビングに行くと椅子に座って本を読んでいる先生の姿が見えたので声をかけた。
「先生、お風呂空いたよ〜」
「分かりました。それでは私も風呂に入るとしましょう」
先生は私の頭をぽんと軽く触れてからお風呂場に向かっていった。その何気ない動作に私の何かが切れて…それ以降の記憶はなかった。朝起きたら一枚の布団で寝てて先生の男らしい身体に顔を埋めていた事だけは分かるけど自分が何をしてしまったのかは理解した瞬間恥ずかしさでどうにかなっちゃいそうだから心の深淵にしまって鍵を掛けておく。さ、今日も仕事しないと! なんて考えていたらスマホに通知が来た。アヤメちゃんからだ。
『おはようホシノさん! 早朝から連絡してごめんね。なんかさっき百花繚乱の子から聞いたんだけど非常に危険な不審者が百鬼夜行に現れたみたいでね…今捜査網を敷いてるから暫くホシノさんは黒先とゆっくりしてて!』
『気持ちは嬉しいけど大丈夫。むしろ来たらややこしくなるって言うか…とにかく片付いたら連絡するからそれまで部屋でゆっくりしてて! 』
半ば強引に部屋にいるよう伝えられた。そんなにヤバい事が起きてるのかな? それなら尚更手伝った方が良いと思うけど…でも先生にくっついていたいって気持ちもあるし…悩むなぁ…
「というか先生、全然起きない…相当疲れてたのかな? それとも…キス待…」
「いえ起きてますよ」
「ぴゃ!?」ゴン!!
先生が起きてるとは思わずびっくりして飛び跳ねて天井に頭をぶつけてしまった。痛い…
「昨日は…いえ、こうなる事は予め予測しておりました。何故あそこまでの行為が出来て普段は耐性がないのでしょうか」
何か先生が言ってるけど痛みで殆ど聞こえなかった。その後寝起きの先生に治療をしてもらってひと段落してから今朝の事を先生に伝えた。
「ふむ、不審者ですか。そして百花繚乱で対処すると…」
「手伝うって言っても自分達でやるって感じでさ。こういう時の為に先生見習いの私が居ると思うんだけど…」
「自分達が対応すると言ったのであれば最初は任せてみましょう。もしダメそうならその時に私達が対処しましょう」
「そっか…なんか手持ち無沙汰になっちゃうからじっとしてるのは性に合わないんだけど…」
そう言って私が不満そうにしていると先生は急に抱きしめてきて耳元で「では私と訓練しましょう」と恥ずかしい事をしてきた。
「うぇ///せ、先生何を…///」
「少しでも恥ずかしがる事に耐性をつけて頂かなくては」
「だ、だとしてもこの姿勢は…うぅ…///」
あまりにも恥ずかしくて顔を隠そうとしたけれど先生はそれすら許してくれない。私の目を魅入るように見つめてきて…更に顔を近づけて…そのまま私は気絶した。やっぱり恥ずかしい事の耐性なんてつけられないよ…
「ほほぉ、此処がイブキが言っていた百鬼夜行ですか。まるで天使の楽園…クックック、テンション上がりますねぇ⤴︎」