どうしよう、どうしようどうしよう!! もうすぐ黒先が来る!! 全然寝れなかったけど化粧で隈は誤魔化して普段使わない香水も使って制服じゃなくて私服に着替えて…って何を浮かれているの私は!? 相手は既婚者、ただのお出掛けなんだから!! そう、二人きりのお出掛け…
「どう考えてもデートだぁ!?」
ダメだって、これで意識するなは無理があるでしょ!? ホシノさんもホシノさんでどうして許可を出しちゃったの!? あれだけ相思相愛を見せつけられた後に二人きりのデートはなんか気まずい!! …けど心の中では誘ってもらえてうれしいな、なんて…ああもう、乙女になるな私!! ワンチャンスを期待しちゃいけないんだからね!! と一人で悶えている間にスマホの通知音が鳴る。画面に表示されている名前は当然黒先だ。
『おはようございます。今からお迎えに上がりますね』
「…やっばぁ…本当に来てくれるんだ…あっ返信しないと」
テンパりながらも返信出来たので少しだけ冷静になれた。…で、どうしよう。急に心臓バクバクしてきた。え、私黒先の事好きだったっけ…? そりゃあ命の恩人だし多少は気になっていたけど会った時から既婚者だった。それから何度か顔を合わせる事もあったけれどとてもそんな感情を抱くことはなかった。…急に距離感がわからなくなったのは昨日の午後から。もしかして頼れる大人の魅力にやられた? それとも昨日見た変な夢が関係してるのかな…
なんて事を考えていたら玄関の扉を叩く音が聞こえてきた。今行きます、と声を掛けて扉を開けると百鬼夜行でよく見る装束を着た黒先が居た。…え、黒先って私服あるんだ。
「おはようございます。おや、その衣装、美しい着こなしですね」
「あっお、おはよう。黒先もその服似合ってるよ」
「それは良かった。前にホシノから頂きまして。休日はいつも身に着けております」
「…そっか。それじゃあ行こっか」
「ええ」
ほんと黒先はホシノさんに夢中なんだなぁ。…少しくらい私の方を…ううん、そんな欲張っちゃダメ。そういう無粋な邪念は捨てないと。何事もなくこのデー…お出掛けを終わらせるんだ!! …本当にそれでいいのかな?
「? 体調が優れませんか?」
考えこんでいて気づかなかったけれど…ふと顔を上げると黒先が私の顔を覗き込んでいた。すごい近くに。
「!?!?!?!?!?!?」
「おや、貴方もホシノのように顔を赤く染めるのですね」
「そ、そそそれはそうでしょ!!」
「その反応から推察するに耐性がないのはホシノだけではないのでしょうか。特性の生徒に共有する耐性のなさとはどの原理で…」
「もう!! いいから早く行くよ!!」
私との時間なのに黒先はホシノさんのことばかり。私の事を見てくれてもいいのに…あれ、どうしてそんな考えになっちゃうんだろう…
「失礼しました。それでは出かけましょうか」
「…うん」
結構時間がかかったけれど…私と黒先の二人きりのデー…お出掛けが始まった。
黒先に連れていかれた先はミレニアムとトリニティ自治区の丁度中間にある遊園地だった。きれいな場所だけど平日とはいえ人っ子一人いない。最近閉園しちゃったのかな…?
「貸し切りました」
「はぁ?」
「大人の特権です」
この人ぶっ飛びすぎじゃない? それとも大人の人ってこれが普通なのかな?
「本日は二人きりの時間というのを大切にするべきだと判断したので」
「それならカラオケとかの方が安上がりなんじゃ…」
「…嗚呼、その選択肢もありましたね」
「…ふふっ、黒先ってちょっとズレてるよね。ああでも昨日連絡もらった時にどこに行くか話し合っておけばよかったね」
「そうですね。つい先走りすぎてしまったようです」
「まあいっか。とりあえず…私の為に用意してくれてありがとう!! ほらほら、どれから乗るのかエスコートしてよ♪」
「勿論で…あまり引っ張らないでください、圧倒的な力の差がある事をお忘れですか?」
「あ、忘れてた。黒先はキヴォトス人じゃないんだもんね。じゃあ…」
思いきって黒先の手を握って隣に並んで歩いた。こうやって人目を気にせずに歩けるのは良いかも。
「では最初に絶叫系から…」
「えっ」
一番最初にそれ乗る? でも楽しそうだからいっか!!
「うわぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!?!?」
「ほう、これは中々」
このジェットコースター怖すぎ!? 途中空中に投げ出されたよ!?
「お次はあちらのフリーフォールに…」
「う゛ぇ゛!?」
息を整えている間に黒先に手を引かれて座席に固定される。なんか黒先私よりも楽しんで「るぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅ!?!?」
「おや、遠くにアビドス高等学校が見えますね」
心臓がフワッて浮いた…なんなら地面の感覚がなくて隣の黒先の腕に抱き着いちゃった…ちょっとだけ恋人みたい…ってこら!! そういうのはダメなんだって!!
「それならホシノに禁じられていないので構いませんよ」
「えっいいの? 本当に?」
「膝に座らせる事と抱き着く事、あとは卑猥な事以外なら許可を得ています」
「じゃあ腕に抱き着くのはダメなんじゃ」
「まあ、それくらいなら問題ないでしょう。アヤメの好きなようにしてください」
「じゃあキスして?」
「それは無理です」