アヤメデート事件簿から数日が経過した。彼女はあれから劇物の影響がなかったかのように振舞ってくれている。ただ多少好意的な感情は残しているようで今でもスムーズに進められていた。ふとカレンダーを見ると定例会議の日が近づいてきている事に気づいた。どうせならホシノに任せてみようか、と思いつき書類整理がすっかり様になっている彼女の肩に触れて声を掛けた。
「ホシノ、今宜しいですか?」
「うぇ/// ど、どうしたの先生?」
「もう時期定例会議を行うのですが…ホシノが良ければ百鬼夜行の先生として参加しませんか?」
「そういうのあるんだね。参加するのは良いけど何をするの?」
「近況報告ですね。ただ今回は少々特殊と言いますか…他の学園も初参加の方が多く普段よりも小規模な会議になるそうです」
「そうなんだ。現時点で参加する子達のリストはあるの?」
「ありますよ。連邦生徒会ことシャーレ代表は梔子ユメ、マエストロの伴侶の方ですね。それと補佐係として早瀬ユウカ。彼女はミレニアムの生徒ですが何かに固執してシャーレの当番になり続けているようです」
「主催者みたいな立ち位置なのかな」
「我らがアビドスはアヤネとその補佐としてユメが…」
「先生ちょっと待って、早まりすぎじゃない? 同じ空間にユメ先輩とユメ先輩を合わせるのは良くないよ」
「大丈夫です、今回マエストロとマダムは参加しないので」
「ならいっか」
「お次にトリニティですね、桐藤ナギサと桐藤ハルナの二人が参加予定です」
「酷そう」
「あとはミレニアムですが…黒崎コユキと聖園ミカが代表として参加すると」
「どうしてこんなに混沌としてるの?」
「私に聞かれましても…」
「まあいいや…あとはゲヘナとかかな。ヒナが居てくれるなら何とか…」
「ゲヘナは今回マダムが暴れてしまい謹慎中で目が離せないとの事で不参加です」
「ヒナァァ!?」
「今回は以上のメンバーが終結するようですね。保護者もとい大人枠は私が担当します」
「所々酷い事になりそうなメンバーなんだけど大丈夫かな…」
「貴方が居れば問題ありません」
不安そうにしているホシノの頭を撫でつつ返事を待った。数秒も立たない後に「それなら行こうかな。先生も居てくれるしね」と笑顔で良い返事をくれた。流石はホシノだ。
「それでは本日の業務の合間にでも書類の用意をしましょうか」
「えっこういうのってお仕事終わった後にやるんじゃ…」
「そういうのは外の世界で充分なので…」
「あっうん…」
少しだけ気まずい空気になりつつも会議の日に備えてホシノに甘えられつつ書類の作成を行った。
そしてまた数日が経過して準備を終えたホシノと共に車に乗って会場へ向かう。少し緊張している彼女に励ましの言葉をかけつつ近場の駐車場に駐めて会場内に入ってくと見知った顔がちらほら居る。
「ホシノさん、黒服先生、お久しぶりです」
「ええ、久しいですね」
最初にこちらへ気づき挨拶をしてくれたのはナギサだった。この礼儀正しさは流石トリニティと言うべきか。…ただ無理やり腕に抱き着かせている存在に目をつぶれば。
「貴方も元気そうで何よりですよハルナ」
「ありがとうございます(助けてください)」
こっそりと救援信号を出している彼女を見るが管轄外の生徒なので見て見ぬふりをした。もうトリニティにもゲヘナの生徒ともあまり関わりを持ちたくない。軽く世間話をしてから彼女達とは離れた。そうして目を離している間にホシノはアヤネ達と話し込んでいた。和気藹々としているホシノを見ているとやはりアビドスの生徒達と居る方が自然体になれるのだろう。だらんとしてリラックス出来ているようだ。そうやって眺めていると横から手を繋いで歩いてくる生徒の姿が。
「こんにちは!!」
「やっほー☆」
「こんにちは。こうしてお二人と話す機会はありませんでしたね。改めまして私は…」
「マエストロ先生から聞いています!! ユウカ先輩と同じロリコンの黒服先生ですよね!!」
「違うよコユキちゃん、ロリコンじゃなくて幼児体系が好きなんだって先生が言ってたよ」
「そうなんですか!? 失礼しました!!」
その会話自体が失礼なのだが今回は目を瞑ろう。そう見られてもおかしくはない行動をした自分にも少なからず責任が…あるのか? 仮にそうだとしても罵倒される筋合いはないのでは?
「…まあいいでしょう。それよりも一つ気になった事があるのですが、コユキさんは1年生、ミカさんはトリニティの最高権力者ですが…何故お二人が今回ミレニアム代表として参加を?」
「先輩達が全員失踪しちゃったから仕方なくです!!」
「一緒に爆弾を投げ合った時から放っておけなくって…あ、ちゃんとゲヘナとの親善大使としても活動してるからね☆」
「そうですか…」
ドア越しに見える会議室内のユウカの背中が少し固まった。多少の後ろめたさがあるのだろう。
「だから今回の会議でユウカ先輩を連れ戻します!! 正直辛いです!!」
「…頑張ってくださいね」
小規模ではあるものの濃い内容になりそうな会議を前に少しばかり嫌気がさした。