例えばこんなゲマトリア   作:スカイブルーホワイトヘアー

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この子はいつも重い

かなり昔の話。変貌する前のベアトリーチェがこんな事を言っていた。『キヴォトスにおける生徒は兵器である』と。彼を肉塊寸前まで殴り続けて放心しているユメを見てそれを思い出した。

 

「…ごめん」

 

彼女にしては珍しく謝罪をしてきた。やり過ぎたと自分で分かっているのだろう。取り返しのつかない事をしてしまったと反省している様子。

 

「少々やり過ぎなのは否めませんが致し方ありません。それに爆破予告をしていた以上貴女の命に関わる大事になっていた可能性もあります。正当防衛と言っていいでしょう」

 

「でも私は取り返しのつかない事を…」

 

「後で治療すれば問題ありません。原型は留めていませんがまあ何とかなるでしょう。ゲマトリアは案外しぶといのです」

 

そう伝えても彼女は下を向いて未だ納得出来ていなさそう。何故他の世界戦で過ごしてきたアビドスの生徒達は一人で抱え込むのか。むしろそうせざるを得なかったというべきか…

 

「私に言われても納得して頂けるかは分かりませんが…責任を取ろうとしなくていいんですよ? 成人しているとはいえ貴女はまだ子供なのですから。何も一人で抱え込もうとしなくても良いかと」

 

「…うん。そう言ってくれるのは嬉しいんだけど私は…」

 

「『昔からそうやって生きてきたから簡単には変えられない』でしょう?」

 

「っ…」

 

「私は貴女の過去を知らない。話そうとしない限りは知ろうともしない。ですがこんなのでも教師なので子供に責任を押し付けるような真似はしたくないのですよ。だからと言ってやり過ぎるのはいけません。そこは反省するべきです。間違った事をしたら学んで、もう繰り返さないようにして成長してください。貴女の先生もそれを望んでいる筈です」

 

「私の先生…」

 

「今は私やマエストロ、ホシノも居ます。もう貴女は一人ではありません。少しずつでいいのです。変わっていきましょう」

 

「…うん。ありがとう」

 

寂しそうに、それでも少しだけ普段の調子を取り戻したかのように微笑むユメを見て多少心が軽くなった気がした。嫌な過去、というのは定期的に呼び起こされて苦痛になる。日常生活を送る中でもふと嫌な記憶がよみがえり苛つき、怒り、悲しみという感情に包まれる事も少なくない。ましてや彼女は多くの闇を抱えているだろう。マエストロも気づかぬうちに負の感情が溜まっていたのかもしれない。今後は誰かに話しにくい事等があればこちらに相談するようにケアを行ったほうが良いだろう。今はそこまでわだかまりがある訳ではないので前よりも素直に話を聞いてくれる筈。

 

…ホシノの先生も良い先生じゃない

なんて言ったって私の先生だからね。キヴォトスで一番の先生だもん

あながち間違っていないかもね。あ、でも一番はマザーの方よ

この前もそんな話をしたような…

 

「お二人とも。もし良ければ先に進んで元凶をとっちめてきてくれませんか? 私はもう少し彼女とお話があるので」

 

「了解先生。…だけどいくら魅力的だからって先輩に手を出したらダメだよ? 既婚者だし」

 

「そうよ。せめて同意の上で手を出しなさい」

 

「ヒナ?」

 

「…心得ております」

 

一先ずヒナに『ベアトリーチェの服が弾け飛ぶボタン』と書かれたものを渡してユメを椅子に座らせてから話を続けた。

 

 

「ねえヒナ」

 

「なに?」

 

「私達二人ってさ、キヴォトスの中でも結構強い部類だと思う?」

 

「どうかしらね。あまり他を知らないから気にした事はなかったけれど。少なくともホシノ以外に負ける事はないわね」

 

「奇遇だね、私もヒナ以外には負けないって思ってたんだ。…もし、もしだけどさ。私達二人が将来先生になったら…どう思う?」

 

「それは…凄く素敵ね」

 

「だよね。…じゃあ、その夢の為にも頑張ろう」

 

「ええ」

 

二人は微笑み合いお互いに武器を構えて元凶が居る扉を開けた。

 

 

そして突然ヒナに抱き着いて何かを擦り付けてくる今までの良い雰囲気をぶち壊した劇物が現れた。

 

「こ、これは!? お日サマーの匂い!! 素晴らしい、素晴らしいですよヒナ!! 別世界のヒナからもお日様の香りがするなんて!! これは世紀の大発見です、至急論文に書き残したいものでございますが今ここにいる実寸大のヒナを触らなければなりませんね!! ニーソの長さは完璧、スカートも絶妙な絶対領域を表現していて素晴らしい。嗚呼、こんなにも可愛いヒナがここにいるなんてまさに楽園!! 前に出会った時からずっと考えていましたが私の下に来ませんか? 同性よりも異性の方が夜も盛り上がるかと思いますが」

 

「気持ち悪い」

 

べしっと平手打ちを食らわせて劇物を壁に叩き付けるヒナ。その近くには牢屋に隔離されて暫く日の目を見れない筈のシャーレの先生が立っている。

 

「"やっぱり黒服じゃだめか…一発も耐えられないとは"」

 

「ようやく見つけた…悪い大人!!」

 

「"言われてるよ黒服"」

 

「いえいえ私では先生の悪どさには追い付けませんよ」

 

「どっちもだよ!!」

 

今、過去一貧弱な悪の大人達との戦いが始まる…?






少なくとも「ゲマトリアと結婚して幸せになってほしい」なんて考えていなかったと先生は言っております。

残念ながら既に故人なので死人に梔子なんですよね
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