例えばこんなゲマトリア   作:スカイブルーホワイトヘアー

441 / 500
夜のアビドス

色々あって夜になりホシノは他生徒達とお泊り会を満喫している。時折楽しそうに鳴く声が聞こえているのでホームシックのような症状は緩和されただろう。

 

「…で、貴方は何故私の部屋に居るのですか?」

 

「致し方ない事情があるのですよ…同じ黒服という個体なのですから許してください」

 

埃と砂が若干混ざった自室を掃除しようとした矢先にノノミの所有物になった黒服…自分で考えてもハテナが浮かぶもののそういう存在が居る。随分と諦めた表情をしており見ていて悲しくなってくる存在になり果てていた。

 

「ややこしいので別名で呼んでもいいですか? 例えば『黒執事』とか」

 

「それは何かに引っ掛かりそうなので『黒犬』でいいです…」

 

「そ、そうですか…」

 

元々許されない事をしでかしたので同情の余地はないものの何者にも干渉されず純粋な悪い大人として過ごしていたであろう彼をここまで更生? させたノノミの凄さと恐ろしさの片鱗を垣間見た気がした。

 

「貴方はお泊り会がある時は毎回私の自室で休息を取っていたのですか?」

 

「いえ、空いている倉庫で横になっておりました」

 

「脱出しようとはしなかったのですか?」

 

「何十回も試みましたよ。別の次元にも過去にも未来にも逃げました。然しノノミさ…お嬢様はどこからともなく現れて私を連れ戻しむごい仕打ちを受けさせられ…そういう事を繰り返していくうちにもう諦めました。従っていればある程度の生活は保障されているので…」

 

…やはりノノミが一番アビドスの中で恐ろしい存在なのかもしれない。戦闘面では中間の実力だとしても他の部類においてはキヴォトスにおける頂点的な部類に属しているのかも…例えるなら捕食者…これ以上考えるのはやめておこう。

 

「とりあえず私は夜の見回りを行うので黒犬は別の部屋に移動して頂いてもいいですか?」

 

「あ、では倉庫に戻ってます…」

 

背中が小さく見える黒犬を見送った後、ホシノ達の談笑が聞こえる廊下を歩き学校から出て夜のアビドスへ。夏は日差しが強く夜は少しばかり冷えるこの感じも少しばかり懐かしさを覚える。

 

今回アビドスへ来たのはホシノのリラックスの他にもう一つ目的があった。少し前にシャーレで行った謎会議にて聞いたアビドス自治区にいる『自警団』のような存在。それの真相を確かめる為にも来ていた。美人社長の時点で殆ど特定は容易いものの接触をしてみない事には学校に対して友好的か敵対しているのかを判断できない。そういう名目のもと街中を歩き現在の治安を確認していると所々に他校の生徒達とすれ違う。他の自治区と比較して砂漠程度しかないこの場所に何があるというのか。…砂狼ランドはもう破壊しつくしたのであるとすれば大将のラーメン屋くらいだろう。そこも夜は流石に営業していない為この時間には何もない筈。そう思い彼女達に着いて行くと小さなバーがあった。絶対に自警団とは関係ないと思いつつも覗くとそこには『大人の気分を味わえる』と書かれている看板が添えられており店の中も賑わっていた。店長の姿は見えないものの自動で飲み物や食事が提供される大人な空間に魅了されている生徒達が通っているのだろう。…こんな夜にコーヒーを飲んでいる子達がいるのはどうかと思うが。

 

店内に入り周囲を見渡すと偶然にも探していた人物を見つけた。肩肘をつきながらバーカウンターの席に座ってこちらを見るや隣に座るよう促された。

 

「久しぶりね、アウトロー代表の先生」

 

「ええ、お久しぶりです」

 

恐らく噂の美人社長の陸八魔アルと話しつつ隣の席へ。座った途端にどこからともなく見たことがあるグラスにアイスコーヒーが注がれた為口をつけると無糖の苦みが口内に広がる。

 

「ふふ、流石ね先生。ブラックコーヒーを嗜むなんて」

 

「そういう貴女もブラックを嗜んで…ああ、無茶をしないほうが良いですよ。角砂糖ならそこに置いてありますので」

 

「だ、大丈夫よ!? こんなもの余裕で飲めなきゃ真のアウトローに……やっぱり1個だけ入れてもらえるかしら」

 

一口飲んであまりの苦さに顔をしかめてたのでそっと角砂糖を差し出した。結局3つくらい入れていたが見て見ぬふりをしておいた。

 

「聞いたわよ、ホシノさんと一緒に百鬼夜行の担当になったんだってね」

 

「ええ。色々と問題はありますが何とかやれていますよ。貴女の方は何故アビドスに?」

 

「アウトローらしく悪い事をしようと思ったんだけど上手くいかなくてね…とりあえず悪い事をする為に今アビドス悪事を働いている奴らをノノミ達に許可を取らず勝手に一掃したら報奨金と連邦生徒会から賞状をもらう良い子になっちゃって…こんな筈じゃなかったのにぃ!!」

 

「ず、随分と苦労されているようで…」

 

とはいえやはり自警団に居る美人社長は彼女で間違いなさそうだ。本人は不本意だろうがアビドスに貢献してくれたのは評価しなければならない。

 

「アビドスの為にありがとうございます」

 

「うぇ!? そうして私に感謝するの!?」

 

「結果的にアビドスの治安を維持する為に行動してくださった貴女とその社員に感謝を伝えるのは当然でしょう? 」

 

「…ま、まあ。私が望む悪い事ではなかったけれど先生に感謝されるなら結果オーライね!!」

 

子供らしく笑う彼女に謝礼金として厚い封筒を差し出して白目を剥かせてからその場を後にした。

 

 

 

 

 

翌日社員達にもみくしゃにされたのかアビドスで匿っていた。『アルハーレム』なるものが社内(3人)で形成されているらしく彼女は愛されているのだなと理解した。

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。