例えばこんなゲマトリア   作:スカイブルーホワイトヘアー

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私と貴方の過去

下校する生徒達を見送ってホシノに軽く調教された後、夜の砂漠へ赴く。アリスが作った? 黒い砂の道を通り進んでいき砂を踏む音しか聞こえない空間を歩いていると盾が置かれていた。盾を手に取り足跡を追っていくと座っている人影が見えた。

 

「落とし物ですよ」

 

「ありがとう」

 

その人影…ユメ先生の隣に腰を下ろして一息ついた。

 

「ホシノちゃんに聞いたんだ。「初めて出会った時先生は盾を拾ってくれていた」って」

 

「初めはそうでしたね。そこまで美化されているとは思いませんでしたが」

 

「まあ、黒服だしね。どうせ最初は神秘云々で近づいたんでしょ?」

 

「仰る通りです。ただその結果私の期待以上の成果を得られましたが」

 

「愛を与えられて成長したホシノちゃんが応えてくれたんじゃないかな?」

 

「恐らくそうでしょうね。…ホシノ話はこの辺りでいいでしょう」

 

「そんな世間話みたいに…」

 

砂の上で寝転びながら本題に入る。今日は仕事が早く終わって時間に余裕があると連絡が来たので前に彼女と話していたメンタルケアも兼ねての話し合いの機会を設けた。アビドスの砂漠を集合場所にしたのも彼女だ。

 

「そうですね…まずは爆破という単語に過剰反応した件についてお話頂けますでしょうか? 勿論話たくないのであれば構いませんが」

 

「ううん、大丈夫。ちゃんと話すよ。…あれは丁度この時期だったかな。色々な事があった私も少しずつ日常生活を送れるようになってきてたんだ。勿論問題は山積みだったけどね。それでも皆と一緒なら何とかなるかもって前を向きながら一個一個積み重ねていったんだ」

 

「……」

 

「シャーレが爆破した日も普段通り過ごしてたんだ。当番として出かけて行ったノノミちゃんとアヤネちゃんを見送って…あとはいつも通りに…そう思ってたんだ。そもそもキヴォトスで爆破事件が起きるなんて日常茶飯事だから大事になる事はないんだよ。でもね、その日は違った。普通の人間である『先生』が居たんだ。アビドスだけじゃない、他の学園でも大人として生徒達を導いていた殆どの生徒が尊敬する大人が」

 

「…成程。それで先生は…」

 

「当番だったノノミちゃん達が庇ったお陰で辛うじて一命はとりとめている状況だった。だけどその代わりに…」

 

「…もしやヘイローを破壊する爆弾が?」

 

「…うん。普通の爆弾もヘイローを破壊する爆弾も、どっちも仕掛けてあったの。巻き込まれた子達は皆意識不明の重傷を負って…皆目が覚める事はなかった。絶望の底から這いあがってようやく手に入った日常はあっさりと失われて…残ったのは絶望だけ。当時の事はずっとトラウマになって残っているからシャーレの爆破って聞いて犯人が目の前に居ると思ったらつい…ごめんね、こんな暗い話で」

 

「気にしないでください。それよりも貴女は一体どれだけのものを背負っているのか…背負い過ぎて精神的に疲弊しているのかが心配ですね」

 

「正直…荷が重いよ」

 

「…そうでしょう。今まで良く頑張りましたね」

 

彼女はどれだけ過酷な環境の中過ごしてきたのだろうか? 彼女の心の中にある闇はどれだけ大きいのだろうか…心の穴を埋める事は出来るのだろうか…?

 

「…違うよ。頑張ってなかったからこうなったんだよ。だからそんな優しい言葉をかけないでよ…」

 

「厳しい言葉をかけた所で心の傷が深くなるだけでしょう。そういう趣味は持ち合わせていないので」

 

「どうして…貴方黒服なんでしょ!? 悪い大人なんでしょ!? そうやって寄り添うんじゃなくて利用して捨てるような人なんでしょ!? もう…私を楽にしてよ…」

 

情緒が不安定になってまくしたてる彼女に対し落ち着かせるように頭に触れて撫でてみる。これで「触らないっで!!」なんて叫ぶ元気が戻ればいいがと考えてスキンシップを図ったものの予想とは裏腹に落ち着いたものの抵抗せずに受け入れている。多少困惑したものの落ち着いたのであれば都合が良いのでそのまま話を続けた。

 

「何度も申し上げておりますが私は今も昔も悪い大人ですよ。勿論貴女を利用して用済みになったら捨てる事だって可能です。然し残念ながらそうする必要はもうないんですよ。それよりも結果が出て好奇心を満たせる方法を知ってしまったのもそうですが…そもそもホシノ以外に興味がないので」

 

「…慰め方下手くそだね」

 

「…まあ、悪い大人なので」

 

「悪い大人って言い訳用の言葉じゃないよ…?」

 

先程まで情緒不安定だった生徒にされた指摘に対して何も言い返せずつい数秒黙ってしまったがその姿を見てか彼女は少しだけ落ち着いていた。

 

「…ごめんね。最近ちょっとおかしくて…」

 

「そういう時もありますよ。特に色々と抱えている貴女なら尚更です」

 

「…前にね、マエストロ先生に「記憶を引き換えにユメがいた箱庭を復元してやり直すことが出来る」って言われたことがあるんだ。そう言われたんだけど…私は選べなかった。我儘だけど今ある幸せを手放せなかったの。そういう自分の都合ばかり考えちゃって…情けないよね」

 

「…いいえ。それは問題ないでしょう。貴女が幸せになるのであればその選択は間違っていなかったとも言えます。…大丈夫です、責任をとるのは私達大人に任せて幸せになればいい」

 

「本当に…それでいいの? 罪を重ねていった私が…」

 

「良いんです。他の人達が許さなくても悪い大人達が許します」

 

「…ありがとう。でも…やっぱり悪い大人じゃないよね。悪そうなのは見た目だけで中身は…私の先生と同じだね」

 

「それはそれは…過大評価しすぎでは?」

 

自らの命を捨ててまで生徒の幸福を望み他人に託すなんて行為を行う彼に教師として並び立てる筈もない。ただ…こうして彼女が心を開いてくれているのは不思議と悪い気分ではないので一先ずはまあいいかで納得しておいた。

 

「ねえ、今日はアビドスに泊まって良い?」

 

「構いませんが…マエストロには連絡してくださいね」

 

「うん、分かった。それじゃあ行こう、黒服先生」

 

このカウンセリングに意味はあるのか分からないが…少しでも彼女の心が楽になったのであれば幸いだ。




物凄い充実したユメ先輩を見せてから重いユメ先輩を見せつけてやりましょうとか思ったんですけどなんだかんだ救いっぽい何かを与えてしまう。

私にはまだ人の心があったようです
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