「お待ちしていました」
怪しい笑みを浮かべて丁寧にお辞儀をするナギサと生徒を品定めして誰から教育しようかテンションが上がっているベアトリーチェとハルナを拘束しているヒナの四人が会議室に集まっていた。
「約束のブツは持ってきましたよ」
「そのようですね。私が噴水プールで遊んでいる間にセイアさんが話をつけてくれていたと伺いまして。…ううん、実に活きの良いハルナさんですね。お肌もツヤツヤ美味しそうです。流石はゲヘナですね」
「いえいえ、トリニティも素晴らしいですよ。丁度ツンツンしている子を教育したくなってきた時期なのです。どの子も気が強そうで愉しめそうです」
すっかりとHENTAIに染まってしまったナギサとベアトリーチェを他所にヒナは差し出されたロールケーキを咀嚼していた。
「よくそれを食べられますわね…」
「? 毒とかは入ってないわよ? 貴女も食べる?」
「いえ、この後永遠にそれしか食べられなくなるので結構です」
「そう…大変ね」
「同情して頂けるのであれば助けてください」
「それは無理ね。大人しくマザーの糧になりなさい」
残念ながらヒナは聞く耳を持ってくれずこのまま差し出される事実は揺るがなさそうだ。また毎食ロールケーキになる、というのは美食を志す者に対しては極刑以外の何物でもない。
「時にナギサ、私は綺麗に咲き誇る百合の花は大層美しいと思うのです。お互いの愛を高め合い何物にも勝る輝きを放つ宝石以上に美しいもの。私はそう認識しています」
「百合の花…私は花を愛する方々は尊敬しておりますがそこまで情熱は持ち合わせていなくて…」
「いえいえそちらの花ではなく女の子同士が愛する隠語の方ですよ」
「成程…? つまり私とハルナさんの関係を表す言葉ですね」
「仰る通りです。然しですね、ナギサとハルナ、二人の花は絶妙に噛み合ってないと言いますか…一方的な愛よりもお互いに寄り添って愛を育む方が綺麗に咲き誇れると思いますよ」
「一理ありますね。ではハルナさんと話し合ってみますね」
何かを吹き込まれたナギサは拘束されているハルナを抱きかかえて一礼をし自室に戻っていった。
自室に着いた途端に拘束を解いてベッドに押し倒し「お話、しましょうか♡」と明らかに捕食者として目覚めているナギサを前にハルナは戦慄した。
「おかしいですわ!?」
「あら、何もおかしい事はありませんよ? お互いの愛を伝え合うと言えばこういう事ではありませんか♡」
「私は食べられる趣味はありませんわ!?」
「良いではありませんか~♡」
「やめてください!!」
「んえぶ」
ハルナは遂に堪忍袋の緒が切れてナギサの顔面を全力で殴ってしまった。想定以上にダメージが入ったのか彼女は顔を抑えてゴロゴロと転がっていた。
「あっ…も、申し訳ありません…」
「…いいえ。愛の拳を受けた事で私も冷静になれました。真面目にお話をしようではありませんか」」
発情状態から冷静になったナギサに促されソファーに向かい合う形で座る。ようやくまともな話し合いが出来そうで多少は安心していた。
「正直な話ハルナさんが私を嫌っている事は理解しておりました。常識的に考えて勝手に姓を変えたり毎食ロールケーキなんて愚行をしたり同じベッドで眠るのを強要されたら困りますよね…」
「分かっていたのなら改善してくれても良かったのでは…」
「『ハルナさんを私色に染めたい』という衝動が止められなくて…ですが先程ゲヘナの先生と話してそれが間違っていたと理解出来ました。今後はハルナさんの要望に答えつつ私を好いて貰えるよう尽力していく次第です」
「先程思いきり私の意見を無視して襲おうとしていましたよね?」
「ついムラっとしてしまって…」
「理屈では分かっているけど身体は正直に行動するとか理性のない獣ではありませんか」
「五月蠅い口ですねぇ塞いじゃいますよ?」
「本性を隠す努力をしてくれませんか?」
と殆どナギサが考えてナギサが思っている内容を話し合っている為あまり話が噛み合わなかったものの
・ロールケーキ以外を食べるのを許可してくれる
・一方的な愛は向けない
の二つはどうにか許可を得たので少しは進歩したと言っていいだろう。
「これならハルナさんもここに居ても良いと思って頂けるのでしょうか?」
「嫌ですわ」
「なっ…何故ですか!? 私はこんなにも貴女を愛しているというのに!?」
「私暫く恋愛は遠慮しておきたいと考えておりまして。それに今までの行いも正直許せませんし」
「そ、そんな…」
「ですので私は他の美食研究会の部員と各地を共に巡って美食を追い求めようかと…」
「…駄目です!! ハルナさんは私を見て私を愛して私と一緒に居てくれないといけないんです!! そういう運命なんです!! 他の方にハルナさんを取られるくらいならこの『永遠に離れたくなくなるくらい強力な惚れ薬』を飲ませて差し上げます!!」
「遂にそんな強行手段に出るのですわね!? ならばまた私の拳を食らわせて差し上げますわ!!」
「宜しい、ならば現トリニティトップの実力を見せて差し上げます!!」
この後様子を見に来たセイアは何故か拳で語り合っている二人をソファーに座って机に置いてあった飲み物でのどを潤しながら見ていたのだとか。