例えばこんなゲマトリア   作:スカイブルーホワイトヘアー

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怒りよりも勝つのは呆れ

昨日の名簿を持ってトリニティを訪れる。学園内はいつもと同じ気品漂う空気と表面上は仲良く過ごしている生徒達とすれ違う。特に普段と変わらないトリニティだ。ベンチで座って本を読むハナコは相変わらず水着を着ているし自粛中である筈のセイアとナギサがハルナを引っ張りあって注目を浴びている。…なんだこの状況は?

 

「セイアさん、ぽっと出の貧相な身体付きである貴女はハルナさんの相手には相応しくないと思いますが!?」

「むしろ君のように主張が激しい尻をしていない分私の方が彼女を邪魔しない身体であると自負しているよ。ロールケーキの食べすぎで尻が肥えたんじゃないかい?」

「お尻が大きいのは元からです!! 余計なお世話ですよ!! 極太ロールケーキを下の口にも突っ込んで黙らせてあげましょうか!?」

「比喩表現ならともかく本気でそうするつもりなら食べ物を粗末にする行為はやめた方がいいと忠告するよ」

「それはそうですね。では代わりにこのハルナさんに飲ませる予定だった惚れ薬の瓶を突っ込んであげますよ!!」

「そんなもの入る訳がないだろう!? 糖分の取り過ぎで頭海綿体になっているのかい!?」

「失礼な!! もし頭がそうなっているのであれば今頃ハルナさんと幸せな家庭を築いていますよ!!」

「ただの強姦じゃないか!! ハルナの気も知らず自分の価値観ばかり押し付けるなんて可哀想ではないか!!」

 

…と二人は周りが見ているのも気にせずにギャーギャーと叫んでいた。一応トリニティの最高権力者の筈なのだが威厳を何も感じない行いに溜め息をついてしまう。一先ずハルナを二人から引き剥がしてその辺にある空き教室に入って暴れてる二人を他所に随分と憔悴しきっている彼女から話を聞こうとするも距離を取られ警戒されている。

 

「近寄らないでください…私はナギサ様の欲望を押し付けられたくはないのです…どうか自由にしてください…」

 

「話は理解出来ないがそんな事他校の生徒にさせたりはしないぞ」

 

「ですがセイアさんが言っておりました。「マエストロ先生が問題のある生徒の名簿を用意してその生徒をマザーが自由に手を出せる代わりに私をナギサ様に生贄として」…と」

 

「…もしやこの名簿か?」

 

昨日酔ったババアが置いて帰った名簿を見せると彼女は嫌そうに顔を背けたのでこれが取引時に使用された名簿で間違いない。…あいつ落ちぶれたな…

 

「信用して貰えるかかはともかく私は自分の担当している生徒を取引材料にするような行為はしない。品性の欠片もない醜い行為だからな。こんな名簿も用意した記憶もない」

 

「じゃあ私は…」

 

「セイアに嵌められたな」

 

「…許しません…絶対に許しませんよティーパーティー共!! じわじわと嬲り殺しにして差し上げますわ!!」

 

「待て、ミカは許してやってくれ。それとあまりそういう言葉は使うな」

 

このままだとトリニティアンチになってしまう…既になっているかもしれないハルナを大人しくさせて未だに外で口論している二人を見る。遠くからでもギャーギャー言ってるのを見てナギサ達が感情的になれているのを喜ぶべきかこんなくだらない事で暴走する幼稚さを嘆けばいいのか分からなくなった。

 

「一先ずハルナ、お前はもうゲヘナに帰っていいぞ。後はこちらで処理をしておく」

 

「もうゲヘナにも戻りたくないです。所詮私はマザーの欲を満たすだけの存在ですし…」

 

「そうか…それならミレニアムにでも滞在するか?」

 

「いえ、私は暫く各地を巡って放浪しますわ。もう誰にも振り回されたくありません…」

 

「致し方ないか…それなら連絡先を渡しておくのでもし何か困った事があればいつでも連絡してくれ」

 

「ありがとうございます…」

 

目の色が暗く濁っていたハルナを見送った後、今度はずっと揉めている二人を空き教室に連れ込んだ。

 

「なんですか!? 今セイアさんと拳で語り合っている路上格闘中なんです!?」

「まさか混乱に生じて私達を襲う気かい!? 過去に好意を持っていた相手ではあるものの既婚者が未成年に手を出すのはおかしいと思わないかい?」

 

「もう黙ってくれ」

 

多少目を離して他学園に意識を向けていた私にも落ち度がある。然しこうなるとは想像もしていなかった…

 

「ナギサはいつも冷静沈着で大人しく常にトップとしての意識を保ってくれている、まさにトリニティの顔といえる存在だと認識していた。セイアも言動に不思議な魅力があり小柄な体であるにも関わらず常に先を見据えた行動をとってくれている頼れる存在だと思っていた。…私の考えが甘かったのか? 教えてくれ、私はお前たちの不満を買う行いをしてしまったのか?」

 

「いえ、ハルナさんを抱きたかったので取り合っていたに過ぎませんが」

 

「マエストロ先生に不満は何もないよ。奇しくも同じハルナという存在を好んでしまい野生の動物のように取り合いをしていただけさ」

 

「そうなんです、セイアさんが私の用意していた惚れ薬を飲んで最初にハルナさんを見てしまったから三角関係に発展してしまって…」

 

「………」

 

なんだか馬鹿らしくなったので惚れ薬の効果をなくす錠剤を飲ませて事無きを得た。とはいえナギサは元からハルナに多少の好意を持ち合わせていたようであまり効果はなかったものの暴走する事はなくなりそうだ。

 

それはそれとしてババアは一度制裁すると心に決めたので次に顔を合わせた時にぶん殴ろうと思った。

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