例えばこんなゲマトリア   作:スカイブルーホワイトヘアー

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漆黒襲来

学校に泊まっていたセリカは早朝に轟音と共に目覚めた。校舎の一部が崩れる音と何かが物凄い速度で衝突した音が聞こえた。音の発信源に行くと血を流して意識を失いかけているユメの姿が見える。

 

「えっ…何よこれ、どうしてユメ先輩が…って考えるのは後!」

 

この状況においてセリカが危惧しているのは犯人が誰か、というよりも『ホシノにこの姿のユメを見せてはいけない』という事。もしホシノに見られたら犯人を殺しかねない。流石に先輩を殺人犯にはしたくないので急いで絵画の人の所に運んで治療を手伝ってもらった。

 

「いくらキヴォトス人だとしてもヘイロー、もとい身体の強さは個体ごとに差がある。比較的弱めな彼女は辛うじて致命傷は免れている状態です」

 

「安静にしてれば治るのよね?」

 

「ええ。一週間以上は安静にする必要がありますが」

 

「それを聞いて安心したわ。じゃあ先輩の事任せたわよ」

 

「どちらへ行くおつもりですか?」

 

「何処って…犯人をとっちめに行くに決まってるじゃない!! 仲間を傷つけられて許せる筈がないわよ!!」

 

「そうですか。ただ残念な事に死はもう近づいて来ていますよ」

 

「えっ?」

 

そう言うのと同時に何かが校庭に着陸した音が聞こえた。窓越しにみると黒い人型の塊のような何かがユメが吹き飛ばされた辺りを見回している。

 

「…何よあれ」

 

「恐怖に染まった生徒ですね。確かアビドスですとホシノさんが前似たような姿になっていた筈ですが」

 

「そういえば昔見た事あるような…ってそんな事はどうでもいいの!!」

 

窓から校庭に向かって走り黒い塊に向けて指を向けて叫ぶ。

 

「あんたね!? 私達の先輩を傷つけたのは!!」

 

『…だったら何?』

 

こちらを向いたそれに睨まれると冷や汗が背筋を伝う感覚に支配される。本能的に相手をしてはいけない、そんな領域の存在であると悟っているようだ。それでも怒りに身を任せ銃を発砲する。然しそれは銃弾の雨を浴びせられながらもゆっくりと歩いてくる。

 

『黒見セリカ。貴女もアビドスの一員よね? ねえ、大切な人を奪われた経験はある?』

 

「あるわよ! カイザーに攫われたホシノ先輩、今あんたに殺されかけたユメ先輩も!」

 

『良いじゃない、仮に死体だとしても出会えるなら。本当に出会えなくなった私の気持ちは貴女には分からない。でも大丈夫よ、あの世なら皆仲良く会えるわ!!』

 

それだけ言うと黒い塊は狂ったように笑い出す。その間も攻撃しているが効いている様子はない。

 

『残念、貴女も私を殺してくれないのね。私に生きて苦しみを味わえと、自分達は大切な人に囲まれて幸せだって見せつけてくるのね…許さない…』

 

「さっきから何言ってるのよ!?」

 

話が噛み合わない相手に苛つきつつもリロードを挟んで再度撃とうとする。…視線を1秒離しただけでそれの姿が消えていた。

 

『この絵画…ふぅん、ここのアビドスにはこれが居るのね』

 

「…あんた、その人を離しなさい」

 

『ええ、離してあげるわよ』

 

彼女? は宣言通り絵画から手を離し…地面に叩きつけた。狂乱し笑いながら何度も踏みつけてボロボロにしていく。途中から赤い絵の具が漏れておりまるで血溜まりのようにも見える惨たらしい程に破壊された。

 

『ほら、離したわよ』

 

その一言で何かが切れた。ただ叫び銃を投げ捨てて掴みかかり何度も殴ろうとする。セリカにとってこいつは許してはいけない、存在してはいけないと思うには充分すぎる行いであった。

 

『鬱陶しい』

 

腹を殴られ、顔に回し蹴りを当てられて数メートル吹き飛ぶ。それだけで意識を失いそうにはなるものの怒りで立ち上がりまた殴り掛かる。どれだけ避けられても拳を振るのを止めずただひたすらに。

 

『鬱陶しいって言ったでしょ?』

 

今度は頭を掴まれて地面に何度も叩きつけられた。わざわざアスファルトの上に移動させられた上で。あまりの痛みに意識を手放しかけるがそれでも抵抗しようとそれの脚に手を伸ばすが思いっきり折られた。

 

「ううっ!? あ゛あ゛あ゛あ゛!!!!」

 

腕が折られても噛みつける。歯が折られても脚がある。どんな状況であってもセリカは絶対に抵抗を止めない。…この場合においてはそれが悪手であっただけに。

 

『もういいわ、お疲れ様』

 

強者に踏み潰されてセリカはあっさりと意識を手放した。なにも守れない自分の弱さを心に刻みながら…

 

『まだ生かしておいてあげるわ。色々と釣れる餌に出来そうだもの。…ね、小鳥遊ホシノ』

 

「……」

 

目線の先に居るのはホシノ。目の前に居る物体を見つめて明確に殺意を出している。

 

『待っていたわ。アビドスと言えば貴女だものね。思えば前に貴女は大切な先輩を失ったと言っていたわね。…私があの世で再会させてあげても良いわよ?』

 

「それで私の後輩を瀕死にした事をチャラにしてもらおうって? ちょっと考えが甘いんじゃない?」

 

『大切な人と再会出来るなら安いものじゃないかしら』

 

「そっかぁ、君はそういう考えなんだね。ねえ、何様のつもりなの? 私の大切な後輩を傷つけて偉そうに…ああ、答えなくていいよ」

 

ショットガンに弾を装填していきホシノは真顔でこう言い放った。

 

「どうせ死ぬ人間に興味はない。死人に口なしってやつだよ」

 

『…面白くなりそうね』

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